12月22日、トヨタ自動車は未来のモビリティサービスを実現するAutono-MaaS(※)専用EV「e-Palette(eパレット)」の実用化に向け、そのサービス提供を支える運行管理システムを公開した。様々なパートナーとともに、2020年代前半の複数エリア・地域での商用化を目指すとともに、あらゆるモノやサービスがつながる実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」での運行も計画している。
※Autonomous Vehicle(自動運転車)とMaaS(Mobility-as-a-Serviceモビリティサービス)を融合させた、トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語
まずはトヨタが2021年初頭より着工する東富士(静岡県裾野市)のコネクテッド実証都市「Woven City」で運行する計画
eパレットは、2018年1月に米国で開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)にて豊田社長がモビリティカンパニーへの変革を宣言した際に、クルマの概念を越えて、顧客へのサービスを含めた新たな価値を提供できるモビリティの象徴として発表。昨年の東京モーターショーでは、自動運転の機能を備えた車両を披露し、2021年7月に延期となった東京2020オリンピック・パラリンピック大会では選手村内で巡回するバスとして、選手や大会関係者の移動をサポートする予定となっている。
昨今の新型コロナウイルスの感染拡大により人々の生活様式が変化し、「人と接触せずに移動する」、「人が移動するのではなく、モノやサービスが来る」など、モビリティへのニーズは多様化している。また、少子高齢化に伴う様々な移動の課題に対して、eパレットをはじめとするAutono-MaaSなどの新しいモビリティサービスが社会に必要とされる機会が増えてくると、同社は考えている。
このような期待に応えるため、トヨタは「必要な時に、必要な場所へ、時間通りにいける」、また「必要な時に、必要なサービスやモノが、時間通りに提供される」というジャスト・イン・タイムなモビィリティサービスの実現を目指し、トヨタ生産方式(TPS)の思想に基づいたeパレットの運行管理システムを開発した。この運行管理システムは、「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」(※)の新たな機能として、クルマとつながる“Autonomous Mobility Management System(AMMS)”とヒトとつながる“e-Palette Task Assignment Platform(e-TAP)”で構成されている。これにより、利用者の待ち時間短縮や混雑緩和が可能となり、安全・安心で快適な移動をサポートする。
※モビリティサービスに必要な様々な機能を、APIを介してモビリティサービス事業者に提供するオープンなプラットフォーム
AMMSは、TPSによる究極の“ジャスト・イン・タイムモビリティ”を目指し、「必要な時に、必要な場所へ、必要な台数だけ」eパレットを配車する。リアルタイムの移動ニーズに基づき運行計画をフレキシブルに変更し、自動で車両を投入・回送。追加投入によって生じる運行間隔のバラツキを防ぎ、等間隔ピッチでの運行を実現する。また、車両の異常を自動で検知した場合、自動で車庫へ回送し、代替車を即座に運行ルート上に投入することで安定した運行を支える。さらに、緊急時には遠隔での車両停止/復帰が可能であり、二重で安全管理ができ、より安心して利用することが可能となる。
e-TAPは、TPSにおける“自働化”の考え方に基づき、「目で見る管理」を導入。車両やスタッフの「異常の見える化」により、車両をひとり一台常時監視するのではなく、ひとりで複数台管理をすることができるため、限られたスタッフでの運行を可能にする。搭乗員、保守員など、運行に必要なスタッフに対し、自動的に作業指示を行い、遅れ/進みなどのタスク管理を実現することで、メンテナンスのリードタイムを短くでき、限られたスタッフでも高品質なサービスを提供することが可能だ。
トヨタ・コネクティッドカンパニーの山本圭司プレジデントは、次のように述べている。
「先日の決算発表で社長の豊田がトヨタフィロソフィーとしてご紹介した通り、我々のビジョンは『可動性を社会の可能性に変える』であり、『幸せを量産するために、トヨタに働く一人ひとりが、人類の幸せにつながる行動を起こすこと』だと考えています。これを実行する基盤の一つがeパレットです。運行管理システムにより進化したeパレットは、未完成で常に成長し続ける街『Woven City』で鍛えられ、共に成長し続けます」
「Woven City」は人を中心に据え、自動運転、MaaS、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術、人工知能(AI)技術などを導入・検証する実証都市で、e-パレットはそこでの運行を計画。人々が生活を送るリアルな環境のもとで走らせることで様々な学びを得ながら、利用者により安全・安心・快適なサービスを提供できるよう、進化を続けていく。また今後、パートナーの支援を受けながら、2020年代前半の複数のエリア・地域での商用化を目指していく見通しだ。