2020年上半期でもっとも売れた輸入SUV、それがフォルクスワーゲンのTクロスだ。先日、そのTクロスを用いたエコラン大会が開催された。集まったのは、日本の自動車メディアを代表する3チーム。ベストカー、カートップ、そしてモーターファン.jpという選ばれし精鋭たちだ。
使い勝手よし、走りよし、燃費よし！人気の高さも納得の「小さな巨人」
フォルクスワーゲンTクロスによるエコラン大会は、フォルクスワーゲンの日本総本山である東京・品川のフォルクスワーゲングループジャパンが出発地点となった。目的地点は信州一の大きさを誇る湖、長野県の諏訪湖だ。約200kmを走破し、燃費が一番良かったチームが栄冠を勝ち取ることとなる。
まずは、Tクロスがどんなクルマであるかを紹介しよう。TクロスはポロをベースとしたコンパクトSUVで、全長4115mm×全幅1760mm×全高1580mmという扱いやすいボディサイズが特徴だ。
うれしいのは、ポロに対して全幅が10mmしか広くなっていないこと。車両感覚が人一倍劣っている自分（かなり寄せたつもりで路肩に駐車しても、左側にはまだすごくスペースが余っていることが多い）でも、混雑した都会の道路から住宅街の狭い裏道まで、余計な気を使うことなく走ることができた。
また、Tクロスの全高はポロよりも130mm高い。この全高のおかげだろうか、Tクロスの実車を前にすると、サイズ以上の存在感があることに驚かされる。ティグアンやTロックなど兄貴分たちにも共通するイメージのワイドグリルも精悍な印象だ。
シート高もポロと比べて約100mm高くなっており、乗り降りも実にスムーズ。腰を自然に下ろした位置に座面があるといったイメージである。
運転席に座ってみると、見晴らしの良さが好印象だ。いいこと尽くしのようだが、1580mmという全高は一部の立体駐車場には非対応。使用環境によっては、ここが気になる人がいるかもしれない。
エンジンは、直列3気筒直噴ターボ。1リットルという排気量ながら、最高出力は116ps（85kW）／5000-5500rpm、最大トルクは200Nm／2000～3000rpmというスペックを発揮する。トランスミッションは、デュアルクラッチトランスミッションの7速DSGである。
Tクロスのカタログ燃費は、以下の通り。
JC08モード燃費：19.3km/L
WTLCモード燃費：16.9km/L
・市街地モード：13.2km/L
・郊外モード：17.1km/L
・高速道路モード：19.1km/L
東京から長野まで約200kmの行程のうち、9割が高速道路だ。ということは、最低でもWLTCモード燃費の高速道路モードは超えなければ、格好はつかないだろう。そんな思いを胸に、Tクロスのステアリングを握る。いよいよ出発だ！
最寄りの五反田インターチェンジから首都高速中央環状線に乗り、4号新宿線を経由して中央自動車道を西に向かってひた走る。
どのくらいのペースで走ればいいか、瞬間燃費計と睨めっこしつつ、最も燃費が伸びそうな速度を探ってみる。どうやら、80km/h前後がもっとも燃費が良さそうだ。瞬間燃費計は25km/L前後の数字を指し示す。
エコランの秘訣は、とにかく無駄なアクセル操作を避けること。できるだけ不要な加減速を行わないよう、全集中！で80km/h（最高速度が70km/h制限の区間は70km/h）をキープする。
平日の午前中、下り車線の交通量は多くない。これなら渋滞による燃費悪化の心配はなさそうだが、周りのクルマのペースが速く、我がTクロスはどんどん抜かれていく。しかし、今日の任務は速くゴールに着くことではない。粘り強く、自分の走り（＝エコラン）をするだけである。中嶋悟の納豆走法、令和の時代に復活だ〜！
好燃費を狙うならば、ノンストップまでゴールまでいきたいところ。しかし加齢のせいか、最近頻尿気味でトイレが近い。まだ50kmほどしか走っていないが、やむを得ず中央道の藤野パーキングエリアに緊急ピットインする。Tクロスは絶好調なのに....（結局この後も2回ほどSA／PAに立ち寄った。年は取りたくないものだ）。
Tクロスには、「Think Blue.トレーナー」という機能が搭載されている。ドライバーの運転の仕方を分析して、バーグラフの大きさで効率的な運転かどうかを表示してくれるほか、0〜100のスコア（Blue Scoreと呼ぶ）でリアルタイムに採点してくれる。今回のエコラン大会では、この「Think Blue.トレーナー」に表示される平均燃費の数字で勝敗が決定される。
トイレを済ませた後、「Think Blue.トレーナー」を確認すると、平均燃費は20km/Lを超えていた。この調子なら、楽勝だ。私は勝利を確信した。
というのも、ベストカー・チームとカートップ・チームはライター／編集者／カメラマンの3人乗車なのに対して、私（モーターファン.jpチーム）は1名での参加。他2チームよりも100kgは軽いわけで、その重量差は燃費にも大きく影響するはずだ。
エコラン大会の鉄則は、最少人数で参加すること。勝敗は、スタートする前からすでに決まっていたのである！
ならば、少し楽をしても大丈夫だろう。私はそう判断し、ここからはACC（アダプティブクルーズコントロール）にお任せすることにした。TクロスのACCは前走車への追走もスムーズなのが好印象。中央道の下りは基本的に登り勾配なのだが、急な坂道に差し掛かってもストレスなく速度をキープしてくれる。
また、頼りになったのがレーンキープアシスト機能だ。車線の逸脱を検知すると警告とともにステアリングの補正を行なう。頻繁に介入し過ぎるのが鬱陶しくて解除してしまう車もあるが、Tクロスのそれは実に自然で、ロングドライブ時の疲労軽減・安全性向上にも大いに貢献してくれそうだ。
走り続けるにつれて、Tクロスの平均燃費はグイグイ伸びていく。諏訪インターチェンジを降りてから一般道で少し渋滞にはまってしまったため、最後に少しだけ燃費が悪化してしまったのが悔やまれるが、ゴールに到着した時、「Think Blue.トレーナー」の画面には22.8km/Lという平均燃費が記録されていた。カタログ燃費を軽く上回る好成績。勝ったぜ！
しかし、結果発表で私はひっくり返ってしまった。なんと、カートップ・チームに1.2km/Lも引き離されてしまっていたのだ。ガーン！
1位：カートップ 24.0km/L
2位：モーターファン.jp 22.8km/L
3位：ベストカー 22.2km/L
カートップ・チームにどう走ったのか聞いてみると、「基本的に70km/h走行」「とにかく早めにシフトアップ」「瞬間燃費計と常ににらめっこ」、そして「ACCは使わない」ことを徹底していたそうだ。
やっぱりACCに頼らず、自分で運転した方がよかったのかも!? というのも、ACC作動時に登り勾配に差し掛かると、設定速度をキープするために即座に加速しようとする。普段はそれでいいのだけど、ことエコランに限っては、それが無駄な燃料消費につながってしまったというわけだ。
ただ、私が出した22.8km/Lという平均燃費は、特別な運転をしたわけではない。ACCを使えば、誰でも同じような燃費で走れるということだ。つまり、私は試合に負けることで、Tクロスの燃費性能の優秀さを証明したのである！（負け惜しみ）
で、燃費以外もTクロスは本当に優等生だ。エンジンは1Lという小排気量が信じられないほどの力持ちだし、後席＆荷室もゆとりがあってファミリーユースにもピッタリ。
山道で調子に乗って走っているとちょっと足周りがドタバタする場面があったり、パーキングブレーキが電動式ではなかったり、FFのみで4WDがなかったりと気になるところもないわけではなかった。しかし、約300万円からという価格を考えると、「これなら売れるのも納得」の出来。人気の高さも納得の「小さな巨人」である。
フォルクスワーゲンTクロス 1st Plus デザインパッケージ
■ボディサイズ
全長×全幅×全高：4115×1760×1580mm
ホイールベース：2550mm
車両重量：1270kg
乗車定員：5名
最小回転半径：5.1m
燃料タンク容量：40L（無鉛プレミアム）
■エンジン
形式：水冷直列3気筒DOHC16バルブターボ
排気量：999cc
圧縮比：10.5
ボアxストローク：745x76.4
最高出力：116ps（85kW）/5000-5500rpm
最大トルク：200Nm/2000-3000rpm
■駆動系
トランスミッション：7速DSG
駆動方式：フロントエンジン＋フロントドライブ
■シャシー系
サスペンション形式：Fマクファーソンストラット・Rトレーリングアーム
ブレーキ：Fベンチレーテッドディスク・Rディスク
タイヤサイズ：215/45R18
■燃費
JC08モード：19.3km/L
WLTCモード：16.9km/L
市街地モード：13.2km/L
郊外モード：17.1km/L
高速道路モード：19.1km/L
■価格
337万9000円
