2020年12月3日、マツダは中核モデルのCX-5、CX-8の商品改良を行ない、発売を開始した。中期経営計画に基づく商品改良で足場固めの一環だ。
TEXT:高橋 明(Akira TAKAHASHI) PHOTO:MFi
マツダは、2020年11月9日に行なった中間決算発表のときに、中期経営計画の見直しを発表している。その概要は、2025〜26年3月期までを期限とした中期経営計画において、この先2年間を足場固めと位置づけ、その後、本格成長につなげていく計画するというものだ。
足場固めとは、ブランド価値向上を指す。具体的には、制御技術によるハードウェアの価値の進化、CASE技術の進化、ハードウエアのアップデート、6気筒ディーゼルやロータリーエンジンを使ったマルチ電動化技術、さらにラージプラットフォームなどの項目が挙げられている。
今回のCX-5、CX-8の商品改良は、この中期経営計画が背景にある商品改良で、その中で、制御技術によるハードウエア(車両)の価値向上と、CASE技術の進化に該当する。CASEとはコネクテッド、自動運転、シェア&サービス、電動化の4つの新しい領域における技術革新を表すキーワードで、今回はコネクテッドの分野で進化している。
制御技術によるハードウエア価値の進化では、SKYACTIV-D2.2Lの出力を190psから200psにアップし、ペダル踏力の適正化が行なわれている。また、SKYACTIV-Gの2.5L、2.0LはエンジンとATの制御改善をし、ドライバーの意図に応じた軽快な走り、快適なクルージングなど「走り感」を大切にした改良を行なったとのことだ。今回試乗の機会はなく撮影だけだったため、こうした改良点が実際、どのように変化したのかは試乗の機会を得た時にレポートしよう。
20数年前までは、エンジニアが仕様書を言葉と数式で書き、その仕様書をプログラマーがC言語に置き換えていた。そこには誤解釈や入力エラーなどが存在していたが、MBDによってそうしたミスがなくなっている。
制御ロジックを作るエンジニアは、自身が作る数式をモデルと呼ばれるブロック線図に置き換え、それが自動でコンパイル(変換)され、コンピューターに取り込まれる。そのため、誤解釈や入力エラーが存在しない。そして修正もエンジニア自身ができるため、MDBは開発コストと時間の短縮という、企業にとってとても大きなメリットを生む開発ツールというわけだ。
そしてブロック線図化されるデータは物理の基本に立ち返り、走行性能で言えば、距離と時間を微分していく。それをエンジンのレスポンスが可能な時間で数値化をし、緩加速や急加速を作る世界があるのだ。そしてその微分されたデータが細ければ細かいほど、人間のフィーリングに近くなると言われ、そうした改良によって価値変化が起こり、魅力は向上するというのが制御技術の世界ということになる。こうした考えはメーカーの特徴でもあるわけだ。
マツダが他社と違った印象となるのは、これをさらにICE(内燃機関)で行なっているからだろう。通常こうした考え方は、ミリ秒で制御できる電気モーターの領域で行なうものだが、それより反応の鈍いICEで制御している点に特徴がある。それはSKYACTIVと名がつくエンジンからは、そうしたレスポンスが可能になっているからだ。
これらの制御技術を持つマツダだからこそ、新しいデータができた時点でアップデートするということになる。さらに2020年9月に行なったMAZDA3の改良ではSKYACTIV-Xのアップデートがあり、出力データが変更されている。許認可が降りれば無償でアップデートすることも伝えられており、ユーザーメリットは大きい。
今回もディーゼルには出力変更があり、従来であればカタログデータと異なる仕様変更は型式認定の再取得が必要であるが、こうしたマツダの取り組みに対し関係省庁が認める方向でルール変更が行なわれるようだ。これはユーザーにとって大きなアドバンテージになるのは間違いないだろう。
もうひとつのCASEへの対応は、コネクテッドの進化でマツダコネクト2への進化だ。これはアプリを使って、ユーザーコミュケーションを深めていく進化であり、より安心、安全への対応と便利さの向上といったメリットをもった商品改良になっている。
これからの時代は、制御でハードを動かす時代へとシフトする。これまでの、優秀なハードをソフトで制御する発想が逆転し、理想の制御で動かせるのに必要なハードは何か?という開発にシフトし、マツダはその転換期をいち早く取り組んでいるということだ。