モータージャーナリストの諸星陽一さんが選んだ「2020年の推しカー」は、スバル・レヴォーグ、ホンダe、プジョーe208の3台。第1位のレヴォーグは、走りとユーティリティを両立できるステーションワゴンだからこそ使いやすいのだと諸星さんは力説する。
TEXT●諸星陽一(MOROHOSHI Yoichi)
「推しカーです。他人にはすすめられなくても、自分がいいと思ったクルマを選んで下さい」って、ワガママな私にとっては文句なしにいいお題なのように思えますが、他人にはすすめるけど自分ではちょっとなあ?なクルマが多くて困っている今日このごろです。
さて、そんななかでも推しちゃう最初の1台は「スバル・レヴォーグ」です。
レヴォーグは2014年にレガシィの後継モデル的な存在として登場。2020年にフルモデルチェンジを受けて2代目となりました。このクルマを「推す」理由はステーションワゴンだからです。
今、世界的にはステーションワゴンは絶滅の危機にあります。日本の市場を見てもステーションワゴンが激減しています。世界的には荷物が積めるクルマならSUVがいい、日本的には荷物が積めるクルマならミニバンがいい...という流れのなかでステーションワゴンは瀕死の状態です。しかし、セダン並みのハンドリングのよさと荷物搭載能力の高さを両立するステーションワゴンはじつに使いやすいクルマなのです。
欧州車にステーションワゴンが生き残っているのは、アウトバーンがあり、ワインディングが多く、ハンドリングのいいクルマが求められているからだといいます。日本の道路事情や駐車場事情を考えれば、ステーションワゴンはもっと求められてもいいはずのクルマだと思うのです。
レヴォーグ...5ナンバーならもっといいのになあ。
2台目の推しはホンダeです。ホンダeを推すのは電気自動車だからではありません。モーターが後ろにあり、後輪を駆動する後輪駆動車だからです。
ホンダeの駆動方式をRRと表現することがあります。たしかにモーターが後ろにあり、後輪を駆動するのだからRRなのですが、RRという言葉はエンジン時代の言葉です。重いエンジンを後ろに積み、後輪を駆動したからRRなのです。
今や重いのはバッテリー。バッテリーは前後車軸間に積まれるので、ホンダeはミッドシップと呼んでもいいクルマです。操舵を前輪、駆動を後輪とする方式は長い間クルマの基本レイアウトとして親しまれてきました。速く走ったり、安全に走るなら4WDという選択肢はありますが、楽しく走るというなら後輪駆動が一番です。今は珍しいコンパクトな後輪駆動のクルマということで推します。
ホンダe...5ナンバーならもっといいのになあ。
さて最後の1台はプジョーe208です。
もはや自動車の動力が電気に移り変わっていくのは避けられないことでしょう。そうしたなか、スポーツモデルはどうなってしまうのでしょう? 電気自動車といえば効率を追求したクルマとなりがちですが、そうしたなかでスポーツ性をプラスしてきたプジョーe208にはなかなか感心させられました。
テスラは早々にEVの動力性能に注目し、速いEVを作って世間をアッと言わせました。ホンダは初代インサイトでハイブリッドスポーツを作り、その後CR-ZにそのDNAを引き継ぎました。e208にはそうした先輩達がいる存在ですが、“EVだって運転が楽しいぞ”の風を強くし、ライバルが次々にこのジャンルに参入してきたら、クルマはもっと楽しくなると思うのです。
e208...5ナンバーならもっといいのになあ。
『2020年の推しカー』は毎日更新です!
いよいよ2020年もラストスパート! ということで、今年(2019年12月〜2020年11月)に発表・発売されたクルマ(マイナーチェンジ・一部改良・追加モデルなどすべて含みます)の中から、「他人はどうか分からないが、個人的に大好きだ!」という"推しカー”を3台、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに!