JA71型ジムニーで出かけよう。今回のテーマはジムニーの荷台にカフェを作り上げる。手本にしたのは、スバル・ブラット。ちょっとサイズは小さいけれど、気持ちはアメリカンで。今日のランチは「串揚げ」だ。
TEXT &PHOTO◎伊倉道男(IKURA Michio)/SUBARU
「スバル ブラット」というピックアップトラックが、1977年後半頃に輸出専用車として存在していた。レオーネをベースとしたモノコックボディの「ライトトラック」だ。後ろの荷台には固定されたシートが2座、後方を向いて設置されていた。この不思議な設計は、高い関税から逃れるために「4座の乗用車」として登録するためだったのではないかと推察される。
二人乗り(今はダブルキャビンかな)のピックアップトラックが、アメリカでは人気が高い。一人暮らしが定着したアメリカでは、二人乗りのトラックに人気があった。愛犬を助手席に乗せ、後ろの荷台には大好きな遊び道具を載せっぱなしにしている事も多い。趣味のフィールドで乗るバイクだったら、汚れたらトラックごと高圧洗浄機で洗えば手間いらすで、次の休みにはそのままでフィールドに出掛けて行ける。二人乗り車にはスポーツカーもあるのだが、スポーツカーは保険が高額なため「ライトトラック」の人気がやはり高いの。
「スバル ブラット」は、輸出専用車両だったので、日本では見る機会はないはずだった。それが、横田ベースの近くにあるサブディーラーの駐車場に放置されていた。米兵が本国から持ち込み、修理を依頼したものの部品が手に入らず修理不能だったのか、あるいは下取り車として出したクルマだったのか。いずれにしろ、すでにナンバーはなかった。
僕は、横田ベースで見たアメリカを元として、アメリカでの暮らし(生活)を想像する。日本が背伸びをしても届かない豊かな生活。大騒ぎのカーニバル、芝生のスプリンクラー、そしてエアコン。レジャーに関しても、ピックアップトラックにバイクを積み込み荒野へ出る。バイクをブラットから降ろし気の済むまで走り周る。疲れたらブラットへ戻りティータイムだ。
沈む夕日を浴びながら、荷台の後方へ向いたシートへ座り、パーコレーターで珈琲を湧かす。湖へ行き、ブラットを後ろ向きに湖へ入れ込む。そして、ブラットからストレートにカヤックを湖に降ろす。浮いたカヤックをブラットの横に繋いでおけば、そこはプライベートなハーバーだ。湖を渡る風が気持ち良い。
大好きなホームセンターに行ってみると、白いプラの椅子が山のように積んであった。値段は税込み550円。この椅子を見た瞬間に、僕は「スバル ブラット」の荷台のシートを思い出したのだ。1997年当時、放置されていた荷台のシートに座わってみなかったのを、今でも残念に思っていたからだろう。
そこで、白いプラの椅子を二脚購入し、我が「スズキ・ジムニー」の荷台でアメリカンスタイルを思い描く。テーブルは丸にこだわりたい。そこでスノーピークの丸テーブルを引っ張り出してきた。テーブルクロスにもこだわりたい。雰囲気作りに必要不可欠だからだ。たった一枚の布で驚くほど雰囲気は変わる。赤のチェックのクロスなら、小さな子供がきっといる。白を使えばホテルの朝食さながらになる。
今回はウエッジウッドのマグカップに合わせて、パネルで印刷されたクロスで丸テーブルを覆う。
我が「スズキ・ジムニ」の荷台のカフェも良いものだ。ロスの水上レストランにはほど遠い。フィレンチェの広場のオープンカフェにもほど遠い。モルディブの水上コテージには似ても似つかない。それでも、あの「スバル ブラット」の椅子がここに存在している。