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【低中回転トルクに違いあり!】国内仕様より5ps大きい。カワサキ Ninja ZX-25Rフルパワー仕様試乗


カワサキが誇るスーパークォーター「Ninja ZX-25R」の登場により終止符が打たれたように見えた250ccスポーツ戦線。だが本当のライバルは海外にいた。インドネシア本国仕様の実力をチェックしてみた。




REPORT●佐川 健太郎(SAGAWA Kentaro)


PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

カワサキ・Ninja ZX-25R(インドネシア仕様)

こちらが本当の姿なのか!?

 二輪業界で今年一番の話題をさらったカワサキ・Ninja ZX-25R。およそ30年ぶりの復活となった新開発の水冷直4エンジンは、国内仕様で最高出力45ps/15,500rpm(ラム圧過給時46ps)でもちろんクラス最強。だが、今回試乗したインドネシア本国仕様は50ps/15,500(同51ps)というバケモノ。同門のニンジャ400の48psを遥かに上回ると言えば、その凄さがわかると思う。


 思えば、2019年の東京モーターサイクルショーで初お披露目されたとき、カワサキの開発責任者に予想スペックを聞いたところ、「出せるだけ出します!」という言葉が口を突いたことを思い出す。それは本当だったのだ。つまり、うがった見方をするならば、インドネシア仕様がフルパワーで、国内仕様はそのディチューン版とも言えるのだ。


 エンジン以外の車体に関してはほぼ同じで、スチール製トレリスフレームにSFF-BP倒立フォークとカワサキ十八番のホリゾンタルバックリンク式リアショック、ラジアルモノブロックキャリパー&シングルディスクを組み合わせる足まわりも同じ。


 異なるのが電子制御で、3段階調整のトラクションコントロール(KTRC)に2段階のパワーモードなどは組み込まれているが、国内仕様には標準装備のABSが付いていない。また、クイックシフターも未装備だった。調べてみると、インドネシア仕様にはスタンダード仕様と「ABS SE」仕様があるようなので、この試乗車はきっと前者なのだと理解した。

中速トルクの力強さが違う

 ZX-25Rには既に何回も試乗しているが、相変わらずガタイは大きい感じがする。フロントまわりに直4ならではのボリューム感があり、乗った感じも実際にどっしりしている。だが、走り出すと軽い。というところまでは慣れ親しんだ国内仕様と同じだが、40~50km/hで左右にロールしたときに、より軽快感がある。データ的に国内仕様より3kg車重が軽いこともあるだろうか。直接乗り比べたわけではないので何とも言えないが、確かにそういう感じがするのだ。


 もうひとつ考えられるのは単純にエンジン出力の差だ。それはピークにおける5psプラスの差ではなく、きっと中速トルクの差だろう。最大トルクでたった0.2kg-mの差ではあるが、6000rpm辺りからスロットルを開けていったときのレスポンスが良く、トルクの出方が鮮明な感じなのだ。


 パワー感に関してはそこまではっきりとした違いは感じられなかったが、そもそも街乗りでピークまで回せるはずもなく……。ただ、高速道路で瞬間的に加速してみたとき、8000から1万rpm辺りでの車体を前に押し出す力強さ、つまり瞬発力とトルクの盛り上がりは感じられた気がする。


 本来ならば、メディア試乗会が行われたオートポリスのようなロングストレートにて同一条件で比べてみたかったが、ピーク46psの国内仕様がメーター読みで180km/hを上回ったことを考えると、フルパワー仕様がどこまで伸ばすか興味深い。ショップから聞いた情報では、シャーシダイナモではカタログ値には到達しなかったようだが、駆動ロス分を差し引いたとしても国内仕様の45ps馬力は遥かに超えていたようだ。そう考えると、ストリートレベルでも僅かながら+αの力量感を感じたのは正しかったかもしれない。


 いずれにしても、どこまでもクリアに伸び切る直4サウンドは最高だし車体も良い。ただし、ABSとクイックシフターが付いてないのはやはり残念だ。これだけ高性能なモデルだけに、自分ならやはり豪華フル装備でいきたいところだ。

■ライディングポジション

ZX-6Rと見まがう存在感で、他の250ccスーパースポーツと比べてもライポジは大柄だ。タンクやフロントカウルまわりにボリューム感があるが、シートまわりはスリムに絞られていて足着きも良好なところがニーゴーという感じ。ライダー身長179cm。

■ディテール解説

電子制御スロットルバルブを採用するなど最先端の水冷直4エンジンは吸排気系とECUのセッティングの違いにより国内仕様を5ps上回るピーク50ps(ラム圧加給で51ps)を実現。

センターラムエアダクトの見た目は変わらないが、エアボックスの吸気口の形状などは異なるかもしれない。かつてのモデルでも国内仕様は吸気を絞っている場合があった。

見た目ではわからないが、エキゾーストも内部構造が若干異なる模様。国内のユーロ4に対しインドネシアはユーロ3対応なので排ガスや騒音への規制に違いがあるからだ。

ドリブンスプロケットの歯数は国内仕様より2つ少ない48T。パワーが増した分、より高速寄りの設定になっている。つまりトップスピードはより高くなるはずだ。

スタンダード仕様なのでチェンジまわりはシンプルだ。SEに装備されるシフトアップ&ダウン対応のKQS(カワサキクイックシフター)は付いていない。

φ310mmシングルディスクにニッシン製ラジアルモノブロックキャリパーを装備。ABSセンサーは見えるがインドネシアのスタンダード仕様にはABS機能は搭載されていない。

φ220mmディスクにニッシン製シングルピストン、マフラーを回避するため湾曲したデザインのスチール製スイングアームを含め足まわりは国内仕様と共通だ。

水平近く寝かせた配置が特徴的なカワサキ独自のホリゾンタルバックリンク式リアサスペンション。リンク形状やプリロード調整なども共通のようだ。

開発者が特にこだわったというシートも見た目は同じ。薄くレーシーな見た目だが実はウレタンの材質や内部形状が工夫されていて長時間乗っても疲れないという優れモノ。

メインキーでリヤシートを取り外すことが可能。何も入らないように見えるが、実は前側の奥のほうにETC車載器などを収納できる程度のスペースがある。

「SEL」+上下矢印キーで示されたスイッチによってメーター表示やパワーモード、KTRCの切り変えが可能。ハザードを装備している点も国内仕様と共通だ。

アナログ式タコメーターの17,000rpmからのレッドゾーン設定や、5,000rpm~17,000rpm範囲で任意に設定できるシフトタイミングインジケーターなども国内仕様と共通だ。

主要諸元

型式:2BK-ZX250E


全長×全幅×全高:1,980mm×750mm×1,110mm


軸間距離:1,380mm


最低地上高:125mm


シート高:785mm


キャスター/トレール:24.2°/99mm


エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列4気筒/DOHC 4バルブ


総排気量:249.8cm³


内径×行程:50.0mm×31.8mm


圧縮比:11.5:1


最高出力:36.8kW(50PS)/15,500rpm(ラムエア加圧時37.5kW(51PS)/15.500rpm)


最大トルク:22.9N・m(2.3kgf・m)/14,500rpm


始動方式:セルフスターター


点火方式:バッテリ&コイル(トランジスタ点火)


潤滑方式:圧送式ウェットサンプ


エンジンオイル容量:2.9L


燃料供給方式:フューエルインジェクション(φ30mm×4)


トランスミッション形式:常噛6段リターン


クラッチ形式:湿式多板


ギヤ・レシオ:


 1速…2.928(41/14)


 2速…2.055(37/18)


 3速…1.619(34/21)


 4速…1.333(32/24)


 5速…1.153(30/26)


 6速…1.037(28/27)


一次減速比/二次減速比:2.900(87/30)/ 3.429(48/14)


フレーム形式:トレリス


懸架方式(前/後):テレスコピック(倒立・インナーチューブ径φ37mm)/スイングアーム(ホリゾンタルバックリンク)  


ホイールトラベル(前/後):120mm/116mm


タイヤサイズ(前/後):110/70R-17M/C (54H)/ 150/60R-17M/C (66H)


ホイールサイズ(前/後):17M/C×MT3.50/ 17M/C×MT4.50


ブレーキ形式(前/後):シングルディスクφ310mm /シングルディスクφ220mm


ステアリングアングル(左/右):35°/ 35°


車両重量:180kg


使用燃料無鉛:プレミアムガソリン


燃料タンク容量:15L


乗車定員:2名


最小回転半径:2.6m
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