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【べスパレストア計画】激サビ鉄ボディの補修に金属パテ? いいえ、「ガラス繊維」と「ノックスドール」と「POR15」です!


5万円で手に入れた1978年式ベスパP125Xだが、フロアのゴムマットをめくればサビ穴だらけだった。前回はフロアの裏表にケミカルを塗ってサビを落としてみた。今回はいよいよ板金風(?)のお手軽技でサビ穴を埋めてみようと思う。

 筆者の都合で途中時間が空いてしまったベスパP125Xのレストア計画だが、前回はフロアの裏表にサビ取りケミカルを試してみた。確かに効果は認められたが、完全にサビを除去できたとは言い難い。というか、これだけ進行したサビを完全に取り去るならサンドブラストなどで鉄板を処理しなければ無理だろう。


 サンドブラスト機は持っているが、さすがにこれだけ大きなモノはキャビネットに入らない。だとしたら、もっとお手軽に補修できないものだろうか。そう考えて今回はサビが残ったままでも塗装でき、なおかつサビの進行を抑制してしまう便利ケミカルを紹介しよう。

便利ケミカルを使う前に下処理くらいはしておこう。

 と言っても、前回のまま塗料を塗ってしまうなんてことはご法度。サビをサビ取りケミカルで取ったといっても、まだ表面にはサビの塊が残っているし、ケミカルにより脆くなったままのサビも残っている。そこで地道にワイヤーブラシでゴシゴシとサビを落としていこう。

今回のお手軽補修に使った便利ケミカル2種。

 ワイヤーブラシで落としたサビ粉をフロアから取り除いたら、いよいよ便利ケミカルの登場だ。今回は写真にある2種類を使っている。まず左は昔からあるノックスドールという商品。フロアなどパネル同士が溶接された袋小路部分にスプレーしてサビを抑制するもの。4輪に使っても効果が高いケミカルだが、ベスパのように全身スチールでできているスクーターにも最適というわけだ。


 そしてもう1つが右の小さな容器であるPOR15という商品。こちらはアマチュアレストアラーには定番商品で、サビの上から塗ることができるサビ抑制+下地処理塗料。硬化すると非常に強い表面を形成する。

ノックスドールをフロア内部にスプレーする。

 まずはフロアの内部にサビ抑制剤であるノックスドールをスプレーしていこう。今回は都合が良い(?)ことにベスパのフロアには何カ所もサビ穴が空いている。その穴へスプレーノズルを差し込み、スプレーすればOKなのだ。写真ではフロア下のサビ穴からスプレーしているが、そこだけでなく以前に剥がしたフロア表側のゴムマットを固定するビス穴からもスプレーしている。できるだけフロア内部全体に浸透させようという作戦だ。

ノックスドールで内部処理をしたら、いよいよPOR15を塗る。

穴だらけの個所にはまだ塗らない。

 内部をノックスドールで処理したら、いよいよフロア裏にPOR15を塗ってみよう。このPOR15という商品は手につくと簡単には落とせない。作業をする間はゴム手袋などを必ず着用しよう。また、POR15の容器はフタの作りや強度が甘いため、何度もフタをして使い続けるのが難しい。今回はフロア裏全体に塗るので使い切るつもりだが、もし余ってしまったら別の容器に移し替えるといいだろう。

サビ処理したらサビ穴の大きさに愕然としたものだ。

 フロア裏全体にPOR15を筆塗りしていくが、サビ穴の大きな場所は塗らずに済ませる。この後、穴を塞ぐ板金風補修を行うためだ。それにしても、写真を見ていただきたい。この部分の穴は非常に大きく、フロア表側にあるフロアレールが裏からでも見えてしまうほどに成長している。本来なら鉄板を溶接するか、イタリアで作られているフロア材を買ってボディに継ぎ接ぎしなければならない。だが、素人に作業できるものではないし、プロに頼めば程度の良い中古車が買えるくらい費用がかかる。だからお手軽に済ます方法を模索するのだ。

お手軽補修に欠かせないのがガラス繊維マットだ。

ガラス繊維マットを切ってフロア裏に合わせる。

 サビ穴を塞ぐために今回試したのは、FRPの素材でもあるガラス繊維マットだ。軽量スポーツカーのロータスなどはボディ全体をFRPで作っているほど、固まれば強度が出る。今回のようなサビ穴補修にも強い味方になってくれるのだ。


 先ほどPOR15を塗らなかった部分にガラス繊維マットを適度な大きさに切り載せていく。その上からPOR15を垂らしてガラス繊維マットに広げていくのだ。POR15は硬化すると非常に高い強度を持つようになると前述した。そこでガラス繊維マットごとPOR15で固めてしまうことで、サビ穴を塞いでしまおうというのが今回の作戦なのだ。

フロア裏側だけでなくリヤフェンダー内側にもサビがある。
こちらもサビ取りケミカル+ワイヤーブラシした後、POR15を塗布。
ガラス繊維マットによる穴の補修が済んだらフロア裏全体を処理する。

 ガラス繊維マットを細切れにしてサビ穴を塞いだら、もう一度フロア裏全体にPOR15を塗っていこう。これでフロア裏側のサビ取りと穴埋め補修が処理できたことになる。


 ちなみにベスパのフロア裏には強度を保つためにリブがある。出っ張った部分やバツ印のように凹んだ部分のことだ。サビ穴がこうした場所に差し掛かっていることもある。その場合、ガラス繊維マットにPOR15を浸透させ、ゴム手袋で上から押さえつけてリブの形状に沿わせてあげるといいだろう。

フロアレールが裏から見えていた部分。
リブにより凹んだ部分はゴム手袋をした手で押さえて形を整えた。

 いかがだろう。素人による板金風の補修でもサビ穴を塞ぐことは可能だし、その費用は数千円で済む。とはいえ下処理が足りないとか、サビをもっと落とさないと内部からサビが再発する、などの可能性はある。けれど、何もしないで乗るより数倍マシだし、プロに高い費用を払って頼むことを考えたら、誰にでもできる方法なのだから試さない手はない。


 厚塗りした部分もあったが、POR15は翌日になると完全に硬化していた。これなら運転中、岩石オープンさながらフロアに載せていた足が地面に届いた!なんてことにはならないはずだ。

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