工藤貴宏さんが選んだ「美しすぎるクルマ」、その第1位はS13型の日産シルビアだ。デートカー(死語)として若者から絶大な人気を誇っていたホンダ・プレリュードを打ち負かし、歴代でもっとも売れたシルビアとなった。その人気の大きな要因がデザインだったことは間違いない。
TEXT●工藤貴宏(KUDO Takahiro)
某AKBは「クラスで3番目くらいにかわいい娘を集める」というコンセプトらしい。そのほうが親しみを覚えてもらえるからだそうだ(プロデューサーの秋元康氏は「それは都市伝説」と否定しているが)。
「美しいクルマ」も同じではないだろうか。フェラーリとかアストンマーティンとかマセラティとか、世界を見渡すと名家には絶世の美女もいる。しかし、今回はそんな「夢でしか見られない遠い世界の話」ではなく、ちょっと頑張れば手が届くかもしれない現実世界の話をしよう。
ところで、デザインにもトレンドがあるし、飽きもあるから、クレオパトラとか楊貴妃級の美女(どちらも写真すら見たことないけど超美形だという噂)を除けば、美しさのインパクトは新鮮さのある新しいクルマのほうが有利だ。それだけは先に伝えておこう。
第3位:ホンダ・インサイト(3代目・現行型)
残念なことだが、ひとむかし前までの、ガンダムチックなホンダデザインには美しさを感じることができない。
しかし、2018年末に日本仕様が公開された現行インサイトにはビビビッときた。なんと伸びやかで美しいフォルムなのだろうか。滑らかな曲線で構成されたフロントデザイン、そしてシンプルながら力強いボディ側面の陰陽。ボディ骨格を共用するシビックセダンが子供っぽいデザインなのに対して、こちらは素の美しさで魅せている。日本で売っている日本車セダンの中ではナンバーワンの美しさだ。このクルマは、もっとデザインで評価されてもいいのではないだろうか。
第2位:マツダ・MAZDA3(ファストバック)
学校で一番の美人。ちょっと個性的だけど、佇まいはかなりの美形である。
無駄な装飾を徹底排除する引き算の美学で作りこまれたデザインは、言うなればナチュラルメイクで決めた正統派。はじめて会った時よりもむしろ、ある程度時間がたった今のほうがキュンと来る気がする。
街を走っているMAZDA3を見かけると、ときどき、そのオーラにハッとすることがあるのはここだけの内緒だ。
第1位:日産シルビア(5代目・S13型)
1988年5月にデビューした5世代目シルビア。型式名から通称「S13」と呼ばれるタイプだ。
ボクは当時中学生だったけど、見た瞬間にひと目惚れ。滑らかな曲線で描いたデザインはそれまでの常識を覆すもので、美しさに満ち溢れていた。シンプルな面の使い方(日産でフェンダーフレアのないデザインははじめてだった!)は当時としては画期的で、30年以上たったいま見ても美しさは色あせていないと思う。
デビューから7年後には初の愛車として自分自身で手に入れたクルマだけに個人的な思い入れが強いのも事実だけど、今回はそんな惚れまくった「かつての彼女」を最高の美人...じゃなくて最高に美しいクルマとしたい。
ちなみに「シルビア」とはラテン語で「森」を示すそうだが、ギリシャ神話に登場する美しい乙女の名前でもあるらしい。
『美しすぎるクルマ・ベスト3』は毎日更新です!
どんなに走りが楽しくても、どんなに乗り心地が良くても、ブサイクなクルマには乗りたくない。そう、デザインはクルマの命。ということで、これまで出会ったクルマの中からもっとも美しいと思ったベスト3を毎日、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに。