自動車業界は今、100年に一度の大変革時代を迎えていると言われているが、クルマを所有しメンテナンスする私たちユーザーが直に接するアフターマーケットも決して例外ではない。当企画では、そうしたアフターマーケットの現状を、近年生まれた新しいキーワードを切り口として解説する。
今回は、自動車アフターマーケットの領域では鈑金塗装工場を皮切りとして、徐々に裾野が広がっている「テュフ認証」について紹介したい。
TEXT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、ビー・エム・ダブリュー、テュフラインランドジャパン
「TUV」(テュフ。Uはウムラウト(上に点2つ)付き)の3文字をどこかで見たことがあるという人は少なくないと思われるが、こと自動車のアフターマーケットでそれを目にした人はまだまだ少数派だろう。
テュフ自体の歴史は長く、1800年代後半にドイツ各地で発足した蒸気ボイラー検査協会がそのルーツとなる。その後自動車の運転免許や車検、さらには他の産業の装置・製品・サービスの検査、プロジェクト管理や企業のプロセス構築、技術者のトレーニングにまで裾野を広げるようになった。
なお、「テュフ」の名を冠する検査機関グループは、現在ではドイツのハノーヴァーを本拠とするテュフノルド、ミュンヘンを本拠とするテュフズード、ケルンを本拠とするテュフラインランド、ダルムシュタットを本拠とするテュフヘッセン、スルツバッハを本拠とするテュフザールランド、エルフルトを本拠とするテュフチューリンゲン、オーストリアのウィーンを本拠とするテュフオーストリアの7つ。それぞれが世界各国に拠点を設け、様々な検査および第三者認証を実施している。
その中で自動車アフターマーケット向けの検査および第三者認証を、日本でも積極的に展開しているのは、テュフラインランドだろう。
日本法人のテュフラインランドジャパンは、2013年度よりビー・エム・ダブリュー(BMWジャパン)からの委託を受けて、BMW/MINI認定鈑金工場制度の監査および第三者認証を実施。その後ヤナセオートシステムズやBSサミット事業協同組合などにも同様の監査および第三者認証を行っている。
さらに2017年からは、SBI損害保険がテュフラインランドジャパンと提携して、事故車両の入庫先として同社の認証を取得した鈑金塗装工場を優先的に選ぶ取り組みを開始。またソニー損害保険は、同社が提携する鈑金塗装工場「スマイル工房」の認証取得を推進する方針を固めた。