2021年1月23日(土)に発売予定のイギリス製NEWモデル、トライアンフ トライデント660。ミドルクラスのネイキッドスタイルで新登場したこのモデルは、数々の電子制御システムが導入された豪華なインポートモデルながら、革新的ともいえる97万9000円という戦略的な価格がポイント。これは同じ650ccクラス&ネイキッドスタイルの人気モデル「ホンダCB650R」とまったく同じ価格設定。トライデント660は、ライバル車がひしめく国内650ccクラスの牙城を崩せるか!? 両モデルの諸元を比較してみた。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
熾烈を極めるミドル級ネイキッドモデル抗争!新型のライデント660と人気のCB650Rを比較
外観とサイズを比較
【トライアンフ トライデント660】
全長:2020mm
全幅:795mm
車高:1089mm
シート高:805mm
ホイールベース:1401mm
最小回転半径:-
キャスター角:24.6 °
トレール幅:107.3mm
重量:189kg
【ホンダ CB650R】
全長:2130mm
全幅:780mm
全高:1075mm
シート高:810mm
ホイールベース:1450mm
最小回転半径:2.8m
キャスター角:25°30´
トレール幅:101mm
重量:202kg
両車ともスパルタンな同ジャンルのネイキッドスタイルが特徴。とはいえ、4気筒のCB650Rは、エキゾーストパイプが4本。エンジン周りの存在感は、やはり3気筒のトライデント660よりも高い。
CB650Rは全長が110mm長く、ホイールベースも49mmロングで、トライデント660よりも大柄な外観。3気筒エンジン搭載のトライデント660は、4気筒エンジンのCB650Rよりも13kg軽いのがポイント。CB650Rに比べ、トライデント660は軽量でコンパクトな車体が特徴。街中での取り回しのしやすさは、CB650Rを一歩リードすると感じる。
両車ともシート高は800mm強に設計され、ハンドルはアップタイプをセレクト。どちらも街乗りしやすい、余裕のあるポジションに設定されている。
新設計のトライデント660の3気筒エンジン VS CB650Rの4気筒エンジン
【トライアンフ トライデント660】
エンジン:水冷4ストローク並列3気筒DOHC 12バルブ
排気量:660cc
ボア径×ストーク長:74.0mm×51.1mm
圧縮比:11.95:1
最高出力:81PS(60kW)/10,250rpm
最大トルク:64Nm/6,250rpm
燃料供給方式:マルチポイントシーケンシャル電子燃料噴射SAI付、電子制御スロットル
エキゾーストシステム:ステンレス製3into1ヘッダーシステム、ステンレス製サイレンサー付き
クラッチ:湿式多板、スリップアシストクラッチ
トランスミッション:6速
【ホンダ CB650R】
エンジン:水冷 4ストローク直列4気筒DOHC 16バルブ
排気量:648cc
ボア径×ストーク長:67.0mm×46.0mm
圧縮比:11.6:1
最高出力:95PS(70kW)/12,500rpm
最大トルク:64Nm/8,500rpm
燃料供給方式:電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)
エキゾーストシステム:4into1
クラッチ:湿式多板、アシストスリッパークラッチ
トランスミッション:6速
水冷4スト4気筒エンジンのCB650Rは、3気筒のトライデント660よりも12cc少ないが、最高出力は1万2500rpmの高回転域で95馬力を発揮。どちらもストローク長よりボア径の大きな、回転を上げてパワーを稼ぐレーシーなショートストローク型。ショートストローク率(ボア径÷ストローク長)は、トライデント660が1.448、CB650Rが1.456(数値が高いほどショートストローク率が高く、一般的にレーシーなタイプといえる)。
フレーム&足周りを比較
【トライアンフ トライデント660】
フレーム:チューブラースチール製ペリメーターフレーム
スイングアーム:両持ちファブリックスチール
フロントサスペンション:Showa製41mm倒立型セパレートファンクションフォーク
リアサスペンション:Showa製モノショック型
フロントブレーキ:Nissin製2ピストンキャリパー(アキシャルマウント型)+310mm径ダブルディスク+ABS
リヤブレーキ:Nissin製シングルピストンキャリパー+255mm径シングルディスク+ABS
フロントホイール:17インチx3.5J 鋳造アルミ製
リヤホイール:17インチx5.5J 鋳造アルミ製
フロントタイヤ:120/70R17 ミシュラン製ロード5
リアタイヤ:180/55R17 ミシュラン製ロード5
【ホンダ CB650R】
フレーム:スチール製ツインチューブ形式ダイヤモンドフレーム
スイングアーム:両持ち式
フロントサスペンション:倒立型フォーク
リヤサスペンション:モノショック型
フロントブレーキ:Nissin製4ピストンキャリパー(ラジアルマウント型)+310mm 径ダブルディスク+ABS
リヤブレーキ:Nissin製シングルピストンスライディングキャリパー+240mm径シングルディスク+ABS
フロントホイール:17インチ 5本Y字型スポークアルミ
リヤホイール:17インチ 5本Y字型スポークアルミ
フロントタイヤ:120/70ZR17M/C(58W)
リアタイヤ:180/55ZR17M/C(73W)
フレームはどちらもスチール製。両車ともABS、17インチアルミホイール、両持ち式スイングアーム、倒立型フロントフォーク、モノショック型リヤショックを採用。
トライデント660のフロントキャリパーは、スタンダードな4ピストン+アキシャルマウント型だが、CB650Rのフロントキャリパーは、4ピストン+ラジアルマウント型を導入するなど、豪華さでは一歩リード。
前後ホイールは両車とも、スポーティかつ軽量なアルミ製を採用し、薄肉化された軽快なデザイン。タイヤは両車とも、フロント120/70-17、リヤ180/55-17サイズを選択。なお、トライデント660には、ミシュランのラジアルタイヤ「ロード5」を選択している。
最新の電子制御システムは?
【トライアンフ トライデント660】
・電子制御式スロットルを採用し、きめ細やかな制御を実現
・エンジンの出力特性が変化するライディングモードには、「ロード」と「レイン」の2パターンあり
・上記のライディングモードには、ON/OFF切換が可能なトラクションコントロールを採用
・クイックシフター(シフトアップ/シフトダウン)※オプション設定
【ホンダ CB650R】
・リヤタイヤの駆動力を制御することで、安心感のある走りを提供する「Honda セレクタブル トルク コントロール」を採用。前後輪の速度差から算出された値に基づき、燃料噴射量調整によるエンジントルクの最適化でリアタイヤの駆動力を制御し後輪スリップを緩和。ライダーが任意に左ハンドルのトルクコントロール(TC)スイッチにより、ON/OFF設定の選択が可能
・クイックシフター(シフトアップのみ)※オプション設定
以上のように、トラクションコントロール(Honda セレクタブル トルク コントロール)のみのCB650Rに比べ、トライデント660には豪華な最新の電子制御システムを多々導入済み。贅沢な機能を盛り込みつつ、97万9000円という価格を実現したトライデント660は、非常にお買い得なモデルだといえよう。
メーターを比較
【トライアンフ トライデント660】
・カラーTFTディスプレイを採用。また「My Triumphコネクティビティシステム」を使いスマートフォンと連携させれば、通話、音楽の再生、ナビゲーション、GoProなどの操作が可能
【ホンダ CB650R】
・液晶サイズを最大化したフルフラットデザインを採用。ギアポジションインジケーター、水温計、エンジン回転数のピークホールド表示や、エンジン回転とリンクして変速タイミングを知らせるシフトアップインジケーターなどを導入
同価格帯の国内モデル、今後の動向にも注目
NEWモデルのトライデント660には、4気筒エンジン搭載のCB650Rの他、2気筒エンジン搭載の「ヤマハMT-07(73馬力/79万2000円)」「カワサキZ650(68馬力/84万7000円)」「スズキSV650/X ABS(76.1馬力/75万2400円)」など、国内のライバル車が存在。なお、2気筒エンジン搭載の3台の国内ライバル車には、電子制御は盛り込まれていない(詳細は下記をクリック)。
豪華な電子制御システムの導入はもちろん、オプションとしてグリップヒーターやクイックシフター、ドレスアップパーツも豊富に備え、97万9000円というバーゲンプライスを実現したトライデント660は、650ccクラス市場に旋風を巻き起こすか?
なお、2019年に発売された上記のホンダ CB650Rは、間もなくマイナーチェンジして2021年モデルが発売されるという噂。トライデント660と同等以上のスペックを備えて誕生することも予想される。今後の650ccクラスの動向に注目だ。