瀨在仁志さんは、予算300万円までならスバル・フォレスター、予算600万円までならジープ・ラングアー、そして予選無制限ならメルセデスAMG G63をおすすめSUVとしてセレクト。特にフォレスターはオンでもオフでも安心感抜群の走りが高評価だ。
TEXT●瀨在仁志(SEZAI Hitoshi)
価格的おすすめSUVかぁ。SUVの定義も幅が広く、最近人気のカテゴリーだから、あれもこれもアタマに浮かんできてしまい迷ってしまう。広々していて、使い勝手が良くて、みんなでロングドライブも楽しめる、何でもアリのクルマですよねぇ。個人的には背の高くて、機動力に優れたあたりから、SUVジャンルが構築されてきたと思っているので、まずは、しっかりとしたシャシーと、ヨンク機能が決め手。そのうえ、ロードクリアランスもたっぷり欲しい。
そう、私のなかではパジェロや、ランクル、ハイラックス、といった体育会系のクルマがSUVの走りだとすり込まれているので、カギは本物の走りを持つSUV。ひと言で言うとヘビークロカン寄り、となってしまうんですね。
予算300万円までなら「スバル・フォレスター」
そうなると話は早い。価格内でしっかりとした走りを持つ、信頼が置けるクルマとなれば、300万円までならスバル・フォレスターが頭一歩リード。ライバルがひしめくなかで、スバルは水平対向ユニットとヨンク技術をしっかり熟成性しつつ、年々進化。縦置きエンジンならではの持ち味で、真っ直ぐ、左右バランス良く振り分けられる駆動レイアウトはオンでもオフでも安心感抜群。
駆動力はご多分に漏れず、基本はフロント中心に流れているものの、軸重に比例するようにトルクを頻繁に流しているから、タイヤの滑りも最小限。フロントが滑ってからリヤにトルクを伝達するという、一般的なオンデマンド4WDモデルよりも明らかに駆動力が高い。滑ってからのヨンクではなく、滑らないためのオンデマンドヨンクとしてのアプローチが心強い。
そのうえ、現行モデルから新世代シャシーである『SGP』やHVモデルの『e-BOXER』をラインアップすることによって、パワーも接地性も粗さが無くなり、どんな環境になっても路面をしっかりとつかんで離さない。直近モデルでは2.5リットルNAユニットに代わり、レヴォーグ同様に1.8リットルエンジンを搭載するなど進化はいまでも続いている。
エントリーモデルの「Touring(ツーリング)」なら291万5000円と300万円内だし、新パワーユニットの「SPORT(スポーツ)」を除けば一番高くても315万7000円と価格幅がないことも基本性能にまったく妥協がない証拠。どれを選んでもライバル以上の駆動力を得られるから、クロカン世代にとっても一番にお勧めしたい。
一度その走破力を味わってしまうと、忘れられない
600万円内だったらジープ・ラングラーだ。見るからに厳つい伝統的な顔つきやフォルム同様に、シャシーは高張力スチールとアルミを組み合わせることによって90kgの軽量化と高剛性を両立して、近代化を進めるいっぽう、駆動システムには伝統的なトランスファー採用に変わりは無く強靱さを継承し続ける。
通常はFRとして走行できるうえに、トランスファーを操作すればセンターデフの採用によってフルタイムヨンクとしての機能はもちろん、レバー操作によってさらに高い駆動力を選べる。直結ヨンク状態から、デフロックや、LOギアセレクトすることによって4輪同時に強い蹴り出し効果を得られて、道なき道を一歩一歩進むことができる。
オフでの機動力に関しては右に出る物は居ないほどの強靱さを持ち、都会ではほとんど不要ながらも、一度その走破力を味わってしまうと、忘れられない。もちろん現行モデルでは安全性能や先進技術が組み合わされたほか、軽量化の効果もあって街中での乗り味も洗練度を増している。ラフに乗りこなせる気楽さと、万が一のタフネスさを考えると何でもアリのお買い得商品、といった感じ。
ショートボディなら490万円だし、主力のロングボディでさえ511万円~。V6・3.6リットルユニットの余力も考えるとお値打ちモデルと断言できる。
予算が無制限なら「メルセデスAMG G63」
トップモデルは正に機動力、ブランド、質感のすべてをかなえてくれるうえにオンもオフも幅広く感動できる一台、メルセデスAMG G63がお勧めだ。
先代モデルまではどちらかといえば泥臭さがまだまだ残っていたけれども、現行モデルでは見かけは大きく代わらぬものの、フットワークが一段と向上。オフでの強靱さはそのままで、オンでの正確なハンドリングを生み出し、AMGのパフォーマンスを一層引き立たせてくれるようになった。
3つのデフを電子制御ロックさせることで従来どおりの走破力をキープしていながら、ストレスなく上下する足元はオンロードでのロードホールディング性を進化させて、585ps/850Nmの大パワーをしっかりと受け止める。クローズドの試乗コース内での全開試乗では、この大柄のボディを一瞬にして前に蹴り出し、そのまま3桁の速度まで加速は止まらない。失礼ながら古めかしいスタイルのクルマがはじけるような加速する様には驚いた。いかにトラクションとシャシーが優れているかを表していると同時に、そのパワーにも恐れ入る。
SUVがクロカンだとすり込まれている世代には、まさに目から鱗が落ちる衝撃。お金があってSUVを選ぶならこのモデルに限る。ガソリン代の心配をしなくて良いほどに稼げれば、の話だから、やっぱり有名芸能人御用達で違いありませんね。...残念。
【近況報告】
家の給湯器が壊れて近所で風呂屋を探したら、どこもマンションやコンビニに代わっていて、たどり着いたのは『テルマエロマエ』のロケ場所。45度の高温風呂や、ご年配はもちろん、おもちゃで遊ぶ子どもがいるなど、賑やかな入浴シーンは下町の昭和そのまんま。タイムスリップを味わったら、SUVはクロカンが起源...と仕事のアタマもすっかりと昭和に戻ってしまいました。