自動車業界は今、100年に一度の大変革時代を迎えていると言われているが、クルマを所有しメンテナンスする私たちユーザーが直に接するアフターマーケットも決して例外ではない。当企画では、そうしたアフターマーケットの現状を、近年生まれた新しいキーワードを切り口として解説する。
今回は、2023年1月の導入を目指して政府や関係団体などで進められている「車検証の電子化」について紹介したい。
TEXT&PHOTO●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) FIGURE●国土交通省
こうしたことから、2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」の「デジタル・ガバメントの実現」において、車検証の電子化の推進に取り組むことが明記され、検討会の発足に至ったというわけだ。なおその後、2019年5月の道路運送車両法改正により、車検証の電子化などが正式決定されている。
また検討会では、オンライン上でのみ車検証情報を可能とするものも含め、様々な電子化の方法が検討されたが、券面に車検証情報を記載でき、インターネット接続環境がなくとも必要最低限の情報は目視可能なうえ、低コストで持ち運びしやすく活用の幅も必要充分程度に広い、非接触型ICカード方式を採用することが決定されている。また車検の際、車検証情報の更新とステッカーの印刷を、OSS手続を代行する指定整備工場などに委託する方針が固められている。
このように、車検証の電子化が行われるきっかけ自体は、OSSの推進および業務工数削減という、政府と自動車アフターマーケットの都合が出発点となっているが、我々自動車ユーザーにとっても無関係の話ではない。
では、車検証がA4サイズの紙からクレジットカードなどと同様のICカードになることで、我々自動車ユーザーのカーライフはどんな風に変わるのか。
検討会が応募した際に寄せられた主なアイデアは、報告書に例示されている上図の通り。現状でバラバラになっているサービスを一元化できること、車両の売却または中古車購入の際に正確な車両・整備情報を把握しやすくなり適正な価格設定が期待できること、が特に、我々自動車ユーザーのメリットとしては大きいだろう。
だが、自動車ユーザーの誰もが等しくメリットを得られるのは、1番の「車両情報を格納した利活用」だと筆者は思う。なぜなら、取扱説明書のデータが車検証ICカードに格納されるようになれば、あの辞書のように分厚い冊子をグローブボックスに常時保管し、貴重な収納スペースを丸々食い潰す必要がなくなるのだから。
このICカード方式の車検証は、軽自動車や二輪車も含めて2023年1月の導入を目指しているというが、ICチップ空き領域の利活用も含めて、一日も早い実用化を心から期待している!