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カワサキ・VERSYS 1000 SEが大進化した理由。SHOWAの最新鋭サス「スカイフック」が良い仕事をしています!


カワサキは高いスポーツ性と快適性を兼ね備える「VERSYS 1000 SE」2021年モデルを9月29日に発表した。ショーワの「スカイフックテクノロジー」が同車に初搭載されたのである。その発表当日、世界に先駆けて海外仕様に試乗した。




REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)


取材協力●株式会社ショーワ/川崎重工業株式会社

エメラルドブレイズドグリーン/メタリックディアブロブラック
パールストームグレー/メタリックディアブロブラック
アクセサリー装着車

カワサキ・VERSYS 1000 SE(欧州仕様)

 2020年9月29日のプレス発表当日にショーワのテストコースでの試乗を含めて、VERSYS 1000 SEの2021年モデルが世界初公開された。国内仕様に関する情報は未公表のままだが、10月中旬からヨーロッパを始め、順次日米他で新発売される。


 VERSYS 1000 SEは、カワサキのラインナップの中でも先行して新機軸の導入にトライする上級モデルとして位置付けられており、これまでにも最先端技術の電子制御アイテムを積極採用してきている。




 ご覧の通り、現行モデルとはカラーリングが少し異なるマイナーチェンジモデルに見えるが、実はカワサキ車初のショーワ製「スカイフックテクノロジー」が組み込まれた進化系電子制御サスペンションが新採用されている。


 ライダーも含めてバネ上にあるものが、まるで空から吊るされているような安定走行を実現する技術と言われているもの。サスペンションの理想を追求する姿勢がその考え方に表現されている。


 前後サスペンションの減衰力が自動制御されることで、路面からタイヤが受ける衝撃を巧みに吸収し、バネ上の揺動を最小限に抑えてくれるのである。


 つまりロードホールディング性が向上し、安定した軽快な操舵特性に貢献。特にタンデム走行時のピッチング(縦方向の揺れ)が抑制されると言う。ウェット路面での接地感向上等、ライダーにとってより安心感の高い乗り味が期待できそうだ。

サスペンションの動きやバイクの挙動から路面状況を瞬時に判断してダンピング特性をより的確に調節し、姿勢安定を図る。

ライバルをリードする最先端技術投入に対する満足感も大きい。

 全体にゆったりと、挙動に落ち着きのある乗り味は相変わらず気持ち良い。シルキーなエンジンフィールに加えて、決してシャープではないが、素直な操舵レスポンスで、アップダウンのあるコーナリング路を思いのままに駆け抜ける事ができる。その操縦性は、ロングツーリングにも快適である。


 1Lエンジンから発揮されるトルクは十分に太く、ポテンシャルは豪快。それでいて優しくスムーズに走りやすい、穏やかなスロットルレスポンスが好印象なのである。


 直線もコーナリングも、市街地から高速まで、適度に重さが伴う落ち着いた挙動に終始するグッドハンドリングも秀逸。パニア等のオプションをフル装備してタンデムで長旅に出かけるのにも相応しい。


 


 肝心の新型サスペンションは、路面のギャップを通過した時、その後の収まりが良い感じである。少しオーバーな表現を使えば、1発でショックが吸収される感じ。特にボトム領域でのダンパーの効き具合が絶妙で、衝撃はすんなりといなされてしまった。


 正直それがスカイフック技術によるものなのか、サスペンション・セッティング(チューニング)が絶妙に上手くいっているのか感覚的に区別はつかない。ただ、スカイフック制御をOFFするとそれなりに大きな衝撃を食らうので、新技術の投入でバネ上の挙動は小さく安定方向に進化することは間違いないのである。


 またスポーツモードを選択すれば、サスペンションが上下する実行ストロークが抑えられる感じで、硬くしっかりした乗り味になると共に、バンク角が深くなる。これはスカイフックとは別の話で、電子制御サスペンションならではのメリットだが、乗り心地重視でツーリングしている最中でも、峠道ではスポーティな走りを楽しみたい時には好みのセッティングがチョイスできて嬉しいことは間違いないだろう。


 いずれにしても、新たなスカイフックテクノロジーの投入はサスペンションを賢く活用できる性能の上乗せに貢献できることは確かで、セッティング上の重要なツールとなるだろう。バイクのキャラクター的に言うと、特にツアラーには相応しく、価値あるアイテムになると思えた。


 搭載バイクの商品力アップも侮れないだろう。余談ながらスカイフックで良くなる部分をメカニカルなシステムで凌駕してみたいと思う気持ちも湧いてくる。エンジニア魂に火を付ける、チャレンジングな刺激にもなると思えたのである。


 国内仕様が登場した時には、改めて一般公道で乗り味の違いをチェックしてみたい。


 

ディテール解説

KECS(カワサキ電子制御サスペンション)を進化させて、同社初の「スカイフックテクノロジー」を採用したφ43mmの倒立式フロントフォーク。ブレーキはNISSIN製対向4ピストンのモノブロックキャリパーをラジアルマウント。

4気筒の水冷DOHC、1,043ccエンジンは、基本的に変わりなさそうである。エキゾーストパイプはとなりと全てが連結されていて、クランクケース真下で集合している。

大きく前傾して車体中心部にレイアウト。ボトム側にリンク機構を持つホリゾンタルバックリンク式電子制御サスペンションを装備。

アナログ式タコメーターの右側に四角いフルカラーTFT液晶ディスプレーを搭載。白黒反転表示もできる。

SHOWA製EERAコンセプトで熟成された進化系電子制御サスペンションのKECS(KAWASAKI・ELECTRONIC・CONTROL・SUSPENSION)が採用された。

◼️主要諸元◼️(海外仕様のデータ)

型式:KLZ1000DMFNN


全長×全幅×全高:2,270mm×950mm×1,490mm(1,530mm・スクリーン最高位置)


軸間距離:1,520mm


最低地上高:150mm


シート高:840mm


キャスター/トレール:27.0°/106mm


エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列4気筒/DOHC 4バルブ


総排気量:1,043cm³


内径×行程:77.0mm×56.0mm


圧縮比:10.3:1




始動方式:セルフスターター


点火方式:バッテリ&コイル(トランジスタ点火)


潤滑方式:ウェットサンプ


エンジンオイル容量:4.0L


燃料供給方式:フューエルインジェクション


トランスミッション形式:常噛6段リターン


クラッチ形式:湿式多板


ギヤ・レシオ:


 1速…2.692(35/13)


 2速…1.950(39/20)


 3速…1.529(26/17)


 4速…1.304(30/23)


 5速…1.136(25/22)


 6速…0.958(23/24)


一次減速比/二次減速比:1.627(83/51)/ 2.866(43/15)


フレーム形式:ダイヤモンド


懸架方式(前/後):テレスコピック(倒立・インナーチュブφ43mm)/スイングアーム(ホリゾンタルバックリンク)  




タイヤサイズ(前/後):120/70ZR-17M/C (58W)/ 180/55ZR-17M/C (73W)


ホイールサイズ(前/後):17M/C×MT3.50/ 17M/C×MT5.50


ブレーキ形式(前/後):デュアルディスクφ310mm(外径) /シングルディスクφ250mm(外径)


ステアリングアングル(左/右):34°/ 34°


車両重量:257kg


使用燃料無鉛:無鉛プレミアムガソリン


燃料タンク容量:21L


乗車定員:2名

⚫️試乗後の一言!

進化系電子制御サスペンションを装備。上級モデルの電制サス装備は当たり前の時代になりつつあるようだ。(右のバイクはNinja ZX-25Rのオプションキット装着車)

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