「なんでこんないいクルマが日本で普通に買えないんだ!?」
そのブランドのファンや関係者ならずとも、そう憤慨したくなるような日本未導入モデルは、グローバル化がこれだけ進んだ今なお、数え切れないほど存在する。
そんな、日本市場でも売れるorクルマ好きに喜ばれそうなのになぜか日本では正規販売されていないクルマの魅力を紹介し、メーカーに日本導入のラブコールを送る当企画。今回は、欧州におけるミニバンの元祖、ルノー・エスパスを紹介したい。
TEXT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●ルノー
1994年のパリサロンで初公開されたコンセプトカー「エスパスF1」は、1991年デビューの二代目エスパスをベースとしながら当時のウィリアムズ・ルノーF1のV10ユニットをミッドに搭載し、3列シートの代わりに4脚のフルバケットシートを装着したことで、日本でも話題になったと記憶している。
そんな現行五代目エスパスは、かつて日本でも販売されていたCセグメントSUV・カジャーと同様にルノー日産アライアンス(当時)のCMF-Cプラットフォームをベースとしているが、その性格はカジャーとも過去のエスパスとも大きく異なる。
端的に言えば、買い物や家族の送迎、アウトドアに役立つ日常の足というよりもむしろ、富裕層が長距離長時間を快適に移動するための高級車と言っていいだろう。とりわけ、五代目エスパスを示唆したコンセプトカーからその名を受け継いだ、最上級にして最量販グレード「イニシャルパリ」には、そうしたキャラクターが色濃く反映されている。
しかも、2019年11月のマイナーチェンジで、内外装をより一層洗練させるとともに、後輪操舵システム「4コントロール」と電子制御ダンパーを新たに設定。アダプティブハイビーム「LEDマトリクスビジョン」に全車速追従アダプティブクルーズコントロール「ハイウェイ&トラフィックジャムコンパニオン」といった最新のADAS(先進運転支援システム)や、コネクテッドシステム「ルノーイージーリンク」も用意された。
なお、現在のパワートレインは、225ps&300Nmの1.8L直4ガソリンターボ+7速DCTのほか、160ps&360Nmまたは200ps&400Nmの2.0L直4ディーゼルターボ+6速DCTの3種類となっている。
■ルノー・エスパス イニシャルパリ TCe 225 EDC FAP(FF)*フランス仕様
全長×全幅×全高:4857×1888×1677mm
ホイールベース:2884mm
車両重量:1679kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCガソリンターボ
総排気量:1798cc
最高出力:165kW(225ps)/5600rpm
最大トルク:300Nm/2000rpm
トランスミッション:7速DCT
サスペンション形式 前/後:ストラット/トーションビーム
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ 前後:235/55R19 101W
乗車定員:7名
車両価格:5万3300ユーロ(約665万円)