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マツダの新しいトライ、マツダMX-30は「マツダブランドの幅を拡げる」新たなファッションリーダーか、イノベーター向けか? 緊急座談会で読み解く


マツダの新しいコンパクトクロスオーバー、MX-30が発表された。「マツダブランドの幅を拡げる」ことを目的に、「いままでなかったクルマ」「新しい価値観のクルマ」としてMX-30は大きな期待を受けている。ただし、サイズはマツダの同じくスタイリッシュなクロスオーバー、CX-30と同じ。MX-30のパワートレーンは、当面はEVではなく2.0ℓ直4ガソリンエンジンと24Vマイルドハイブリッドの組み合わせのみ。これをどう読み解けばいいのか?

MX-30の第一印象は? マツダの新しいトライをどう評価する?

ボディサイズは、全長×全幅×全高:4395mm×1795mm×1550mm ホイールベース:2655mmでCX-30と同じといっていい(全高はMX-30のほうが10mm低い)。どちらもスタイリッシュ。ゆえに少し混乱が……混乱しているのは編集長だけかもしれないが。

マツダMX-30の「MX」はマツダが新しいチャレンジをするときに用いるモデル名だという。


それまでFRのライトウェイトオープンスポーツを作ったことがないマツダがチャレンジしたスポーツカーが「ロードスター」(海外でのモデル名「MX-5」)であり、1989年に彗星のごとく現れたMX-5は大成功を収めた。


それは世界的に見ても姿を消していたカテゴリーの現代流復活でもあった。




では、2020年に登場したMX-30は、どんなクルマなのか? プレス向けの公道試乗会が終わった直後の10月19日、オンラインで「MX-30を読み解く」ミーティングを開いた。参加者はジャーナリストの瀬在仁志さん、世良耕太さん、そしてモーターファン.jp編集部の鈴木慎一編集長と生江凪子の4名。生江以外は試乗会に参加し、MX-30の取材・試乗を行なっている。

座談会はオンライン会議システムを使って行なわれた。参加者はジャーナリスト・世良耕太さん(下段左)と瀬在仁志さん(同右)、そしてモーターファン.jp編集長・鈴木(左)、編集部員・生江だ



鈴木:今日、お集まりいただいたのは、MX-30をどう読み解くか、というテーマについて少し議論したかったからです。東京モーターショーでワールドプレミアされたMX-30。正式発表されて、今回試乗会がありました。実車を眺め、触れて、テストドライブしてどう感じたか、どのように読み解けばいいのか。お話していただけますか?



世良:チーフエンジニアやデザイナーからいろいろお話を聞いてしまったので、洗脳されてる部分もあるんだけど、マツダが新しいトライをしてきた、と素直に受け止めています。数字が一桁のMAZDA2、3、6があって、SUV系のCX系がある。それがマツダのメインストリームじゃないですか。それらはちょっと技術寄りでもあるし、魂動デザインで「これでどうだ!」みたいな感じでちょっとハードコアな感じがして、なんかこう、「マツダ教」じゃないけど、マツダを信奉している人にとっては、それがいいのかもしれない。だけど、そうじゃない人に向けた新しいトライを「こういうのいかがですか?」って出してきたのがMX-30かな、と受け止めています。それが刺さる人にはとってもいいんだろうけど、まぁその反応を見るためのクルマと受け止めました。



瀬在:私はですね、マツダ自身の閉塞感のなかから生まれた打開策みたいな感じがしました。というのは、魂動デザインは一律みんないいデザインだし、走りもそこそこまとまっていると思うのですが、どれを見ても相似形で意外や個性が失われつつあったのかな。そこで、どこかで新しい道を切り開きたいという閉塞感のなかから生まれたひとつの答えなのかなと思いました。



鈴木:うーん、なるほどね。



瀬在:たとえば、BMWとかだと、相似形でしっかりと走りの本質みたいなものがあって、大中小でヒエラルキーというよりもニーズに合ったクルマ作りができていると思うですが、残念なことにマツダの場合はそこまでまだ走りの本質に迫れてなくて、結局、一律魂動デザインですべてがまとまっている。言ってみたらラインアップがすごく少なく感じてしまっている今日この頃だったので、そこから新しいモデルが出てきたのはとても有意義なことだな、と感じました。



鈴木:マツダの丸本社長も竹内チーフエンジニアも「マツダブランドの幅を拡げる」みたいな言い方をしているじゃないですか。いま、おふたりが言ったみたいに、いままでの路線からちょっと外れたところを狙ってきたのは、まぁまぁわからなくもない。MX-30って、いまおふたりがおっしゃったみたいに、あんまり論理的に考えてほしくないみたいな言い方をされるじゃないですか。ロジカルに考えてロジカルに選ぶクルマじゃないんです、と。僕も試乗会でいろんな質問をして説明を求めたのですが、エンジニアは「それは鈴木さんがロジカルな答えがほしいということですよね」っておっしゃるんです。「ロジカルに考えて選ぶクルマじゃない」と。”これ、カッコいい!”と思ってファッションで選んでくれる人がターゲットです」という言い方をしてたんですね。で、ファッションと言えば生江さん、MX-30を見て、グッとくるところはある? あ、実物をまだ見てないんだよね?



生江:そうなんです。このなかでひとりだけ、実物を見てないんです。皆さん「写真で見るよりも、カッコいい」「よかった!」っておっしゃっているじゃないですか。全員が全員、誰に訊いても「実物見たらものすごくかっこよかったよ」っておっしゃっているから、私も早く実物を見てみたいですね。「クルマはファッションだ!」と言い続けている私ですが、じつは今回のMX-30、写真だけではヒットしていないんですよ。ファッショナブル! って感じるまでいっていなくて……。そこが実物を見てどう変わるかはすごく楽しみですね。これだけ皆さんが良かったって言うんだから、私も手のひらを返したように変わるかもしれません。すごく楽しみ。



鈴木:「これカッコいい!」って一目惚れして買ってもらうんだったら、写真も生江さんを惹きつけるくらいきれいじゃないといけないね。



生江:いや、私の感覚がもはや古すぎるのかもしれません……。

フリースタイルドア、どうですか?



生江:たぶん、ドアを閉めちゃって、普通にガワだけを撮っていたら、デザイン的なものは魂動だから単にCX-30とかCX-5とかと一緒じゃないですか。だから、たぶんドアを開いて見せるしかなくて、ドアを全開にして横っ面から見ると、今度はなんだか不思議なデザインなんだけど上品すぎる気がして「これ……なんすかね」と。ちょっと、どう反応していいのかわからなくなってしまうのよ。




と言ったところで、世良さんが写真を見せる。



フリースタイルドアを開いたイメージカット。これはマツダのオフィシャル写真だ。



生江:そうそう、コレコレ。なんか、妙に上品にまとまりすぎていて、これクルマなの? みたいな感じになっちゃう。なんでだろう。反対にアウディの映像を見たんだけど、電気自動車かな、観音開きのクルマがFBに上がってたのよ(編集部註:アウディのコンセプトカー「AI:ME」のこと)。バッカーーーンってドアが開いて、「お、これも観音開き」と思いながら見ていたんだけど、ハンドルがニョーンって出てきたりカッコいいなと思ったのよ。見せかたもうまいのかな。だから、観音開きにアレルギーを起こして、MX-30に惹かれていないわけじゃないんだな、と。なにかが違うんだよね、写真? ちょっと上手く言えない。



鈴木:「フリースタイルドア」ね。



生江:「観音開き」違うのね。



世良:うん、それ、昭和だね(笑)。



生江:失礼しました。そんな感じです。

2020年1月のCESで発表されたアウディのコンセプトカー「AI:ME」(アイミー)。全長×全幅×全高:4300mm×1900mm×1520mm/ホイールベース2770mm

編集部員の生江女史によると「このくらいが ”あっ”と驚くデザイン」なのだという。こちらはコンセプトなんだから当然だろう、とも思うのだが……
自動運転のコンセプトだから、ハンドルは「ニョーンって出てきたり」するのだ

鈴木:要するにマツダブランドの幅を拡げるっていうのは、いい狙いだと思うんだけど、たとえば、生江さんみたいなタイプだと、ファッションでももっと未来感がほしいってこと?



生江:そうね、なんだろう。どの方向に幅を拡げているのかが私にはちょっとわかっていないんです。たとえばフリースタイルドアだったら、すでにRX-8でやっているじゃないですか。そういうことを考えると、もっと違うことをしてくれるじゃないかと思っていたの。その新しいことっていうと、それこそほんとに座席が違うとか座りかたが、とか3座で運転席が真ん中とか。それくらいの突拍子のないくらい、すごく「えっ! マツダ、こんなことしてきたんだ」みたいな感じのことをしてくるかと思ったら、ある意味、あのフリースタイルドアだけにすごく縛られているような感じがしちゃったかな、私は。



世良:RX-8のときのフリースタイルドアは、「理詰めのフリースタイルドア」だったじゃない? 大人4人をあの小さな車体の中にパッケージするために採用したんだけど、MX-30の場合は、普通のドアじゃ普通に見えちゃうから、なにか奇を衒ったところがほしいんで、フリースタイルドアを採用しましたってことなので、出自が違うんだよ。だから刺さらないとかもしれない。



2003年登場のRX-8。もちろん、フリースタイルドアである。

2020年登場のMX-30。フリースタイルドアを実現するには技術的なハードルを越えなければならなかった。



生江:そうかもしれない。なにか別にいいじゃん、だったら普通のドアでって思っちゃうわけじゃない? 必然性がないんで。



鈴木:でも新奇性を出すためにフリースタイルドアにしたわけです。ロジカルにしたわけじゃないっていう。今回のMX-30は論理的であることより、要するに直感的だったり、感性的なクルマなんだと思うんだけど……瀬在さん、どうですかね?



瀬在:いまの話でいうと、フリースタイルドアの採用でデザインの自由度が上がったって説明していましたよね。でも生江さんの話を聞くにつけ、まぁデザインは後からついてきたというか。ちょっと無理してるなっていうのは、言うとおりかもしれないですね。もしこのスタイリングを優先するんだったら、もっと突飛というかもうちょっといいスタイルもあるだろし、ドアをこのスタイルにするんだったら、RX-8のほうがまだ乗り降りしやすかったかな、とちょっと感じた。あれなら大きな2ドアのほうがかっこよかったかな、という気もします。



鈴木:ああいうカタチで2ドアっていうと、ルノーのアヴァンタイムだったっけ? ありましたよね。



やっぱりEVかロータリーのレンジエクステンダーが欲しかった?

エンジンは、2.0ℓ直4ガソリンエンジン(SKYACTIV-G2.0)と24Vのマイルドハイブリッド(M-HYBRID)を組み合わせた「e-SKYACTIV」を搭載する。ちなみに、「e-SKYACTIV」は、ピュアEV、(将来登場する)ロータリーのレンジエクステンダーも、M-HYBRIDも含めたマツダの電動パワートレーンのことを指すようだ。



鈴木:キーワードとしては「感性」だとか「非論理性」とかみたいな話だと思います。今回、僕がなかなか腑に落ちなかったのは、もともとEVだって言われていたものにエンジンが積まれていたから。さっきのフィーリングで選んでほしいとか、マツダがいままであまりにも理系寄りなPRをしてきたじゃない? SKYACTIV-Xだとか、ディゼールの圧縮比が14.0だとか、ね。それをずっとやり続けたから、そうじゃない方に走ってるんだと思う。そうすると、エンジンが普通の2.0ℓのガソリンにちょこっとアシストするM-HYBRIDが付いているっているのが、しばらくして腑に落ちた。MX-30にSKYACTIV-Xを載せちゃうと、またロジカルな世界に引っぱられちゃう。またXの説明をしなくてはいけなくなっちゃう。Xの説明をし始めちゃうと、それがあまりにも難しくて長いから、結局そのフィーリングの話に至らないまま、ほぼXの説明で終わっちゃう。だから2.0ℓのガソリンなんだ。もちろん価格のこともあるんだろうけど。



瀬在:うーん。まぁ最初に言いましたが、やはり手詰まり感があって、そのなかでデザインからパッケージング、そこにあるひとつの新しい指針を作ったのはすごくよかったと思います。エンジニアと話をしたのですが、マツダが言うほど際立ったところがないですね。全体としてとてもよくできています。でも、とくにマツダの場合、いまXの話がありましたが、エンジンがね、私には物足りないんですよ。だから、このMX-30は、未来形のクルマであるんだったら、EVからドンと出てくるものだと思ってたし、せめて同じタイミングで「EV、こんなのあります」って見せてほしかった。エンジンに引っぱられてなおかつエンジンはマイルドハイブリッドの範囲でちょっと、ハードウェア的には物足りないのが一番の問題で、MX=電気であってほしかったな。乗った印象ですが、そのエンジンの部分を充分に補足、がさついた感じとか加速発進初期のノイズ振動、パワー感っていうのはすべてほぼ粗さを削ったという程度なんですが、進化していると思います。マイルドハイブリッドの要素はそれなりには実感できました。でも、このデザイン、使い勝手、いろんなことを主張するほどのパワートレーンではないから、やや物足りないというのがいまのところの私の結論。



世良:うーん、やっぱり新技術を入れちゃうと技術に引きずられちゃうんで、今回のMX-30は、まぁそれはそれでよかったのかな。ただやっぱり、とくに日本に向けてだけなのかな、EVを先にモーターショーで出したので、EVっていう記号性も含めてファッションなのかなと思っていたので、それはちょっと残念。やっぱりガソリン2.0ℓだと、EVと比べると価格は安いんだけど走りも少し安っぽいじゃないですか。そこは気にしないで買う商品なのかもしれないけど。でもクルマの心臓部なので、そこはひとつあってもよかったかなと思います。



ホンダのEV、Honda eは一充電走行距離がWLTCで259kmという街乗りに特化したシティEVだ。



鈴木:MX-30って、多分、当面欧州ではEVだけなんだよね。ガソリン仕様は売らないんじゃないかな。HONDA eと同じで、ピュアEVのMX-30を欧州である台数売るとCO2排出量95g/km規制をクリアできる。もともと95g/km規制に関してはマツダはトヨタのマニュファクチャラープールに入るから別に問題なくクリアできちゃう。だけど、マツダはマツダだけでクリアしておきたい。プールに入っているから規制クリアできた、っていうのじゃ困るんだと思う。Honda eが年間6000-7000台で95g/km規制を通るっていうんだったら、欧州ではマツダの方がホンダよりたくさん台数を売っている(2019年、欧州での販売台数はマツダ約24.7万台、ホンダ11.7万台)から、マツダはたぶんMX-30EVを1万台+α売らなきゃいけない。だから欧州ではEV、日本ではガソリンっていうわかりにくさが出ちゃうかなぁと。僕らはわりとロジカルに考えるタイプなので、余計そう感じる。



世良:HONDA eはEVじゃなくてもHONDA eってほしいじゃない? マツダとしては、そういうのがMX-30にも持たせたかったんだと思うんだけど、そこまではいってないかな。「これ、いいな!」「クルマに乗っていて動いてなくても楽しい」とかっていう雰囲気ではないじゃない? ちょっとかっこよく作り過ぎちゃってるのかもしれない……。

セリカやシルビアに「ベビーカーが乗ります」とは言わない



鈴木:ターゲットユーザーが「カップルで、いまはいないけど、将来子どもを持つかも」みたいな人っていうと相当狭いじゃない?



世良:フリースタイルドアって、これ、後席に乗せないで、こうやって開けて自分のパソコンを入れたバッグをぽんと置くとか、そういう使い方をするのにいいでしょっていうならいいんだけど、「ベビーカーがアクセスしやすいんですよ!」って言われた途端に醒めちゃう。マツダがそういう説明するからさ。「いや、そういう使い方じゃないんじゃない」って思ったんだけど。なんかズレてるかな。



鈴木:ベビーカーを入れるだったら、普通の4ドアでいいじゃんって話になっちゃうもんね。MX-30である必要がない。これからそのあたりをすごく考えてPRをしていくんだと思う。



世良:間口を拡げ過ぎ。ターゲットをあれもこれもみたいな。そこはもう捨ててしまっていいと思うんだけど……。



鈴木:MX-30って昔のシルビア、セリカ、プレリュード乗っていたようなタイプの人でしょ。FFでもFRでもいいし、カッコいいから買うっていう人。そこでセリカ乗る人に「セリカにベビーカー乗りますから」って誰も言わない。



世良:言わないし、ベビーカーを乗せたい人は別に買ってからあとで苦労すればいいだけの話だと思うんだ。



鈴木:だからマツダは、すごくロジカルなところから脱しようと思ってMX-30を作ってみたんだけど、やっぱりロジカルに考えちゃう(笑)。



世良:まぁまぁ癖は抜けないだろうね。

MX-30の走り、ハードウェア的評価は瀬在さん、世良さん、ともに高かった

鈴木:さっきのパワートレーンの話をすると、僕はロータリーエンジンを使ったレンジエクステンダーが出てくると思っていたし、期待していた。あれが出てくるのは22年の前半でしょ。先日丸本社長がそう言っていたから。22年前半っていうのは、今回のコロナ禍の影響とか遅れてそうなってしまうのかと思ったら、そうじゃない、それがもともとも予定どおりだって言うんだ。それで僕は余計混乱してしまったわけ。ロータリーのレンジエクステンダーはMX-30のデビューに合わせるんじゃなかったのか、と。EVは日本では売れないからいいけど、MX-30にロータリーのレンジエクステンダーが載っていれば、すごくしっくりした気がするんだよね。生江さんはちょっと違うけれどどこまでいっても、我々の3人はきっとすごくロジカルに考えてクルマを買っちゃうタイプ。でも、クルマってきっとそういうふうには買わないじゃないかな。ほしいクルマがあったら3ヵ月4ヵ月悩んで買うというよりは、「これが欲しい!」ってディーラー行って値段交渉して、ポンとはんこ捺しちゃうみたいな。だけど、我々はクルマを買わないでロジカルに考え続けるから、またズレちゃうのかもしれない。



鈴木:そもそもこのクルマを読み解こうみたいなことを言っている時点でロジカルな行為なので(笑)、ここに女性誌編集部の女性編集部員に来てもらって、「MX-30、カッコいい、かっこ悪い?」って話をするのが正しい姿なのかもしれないけどね。

マツダブランドを「拡げる」ではなく「掘り下げる」?



瀬在:コンセプトはいいと思うんですよ。ただそこまでホントに目を惹くデザインかな。既存のシャシーを使ったり既存のユニットを使ってるっていうところで、マツダが言うほど、魅力的なものには仕上がっていないかな。むしろロジカルに、私なりの評価でハンドリングがどうとかという走りで斬ったほうが私はこのクルマはわかりやすかったです。簡単に言うと、コンセプト云々以前にマツダのクルマが日に日に良くなっている。やっぱりMAZDA3では硬い、CX-30ではちょっと緩い、そのなかから進化してMX-30の脚ができた。私はハードウェアとして斬ったときにはMX-30の価値はあると思う。使う側のこちらの評価軸ですけど、マツダがいうほどいろんな使い勝手がいいわけじゃない。いろんな意味で、中途半場なんで、ここはあえてマツダの主張とは違うけれどマツダの良さを「掘り下げる」という方が大事なんじゃないかな。



鈴木:「拡げる」ではなくて「掘り下げる」ですか。



瀬在:本当は別の方向へ向きたいんでしょうけど、私は掘り下げていく方向なのかな、と。で、そのときにそのあと、EV化とか、レンジエクステンダーが出てきたときに足場をしっかりと確保したうえで、新しい試み、そのときようやく真価が問われるというか。というふうに思います。



鈴木:マツダはプレミアム路線にいっているじゃないですか。普通の自動車メーカーではなくて、数は追わないけれど、ちょっといいクルマでありたい。アウディみたいになりたんだろうな、というふうに僕は思っています。アウディも1980年代は全然プレミアムでもなんでもなくて、メルセデスとアウディって並び立つものじゃなかった。アウディは90年代にモータースポーツも含めてすごくがんばった。そのときにアウディのブランドの幅を拡げたのは「TT」かなって思う。TTって登場したときみんなびっくりしたじゃない。スタイルも。でもハードウェアはVWゴルフとそんなに違うわけじゃないんだけど。あれもアウディブランドの幅を拡げたんだと思う。マツダがMX-30でやりたかったのはああいうことなのかな、って思った。まだ、ああはなっていない気がするよね。



瀬在:アウディTTほど大胆さがないね。もうちょっと大胆な試みが必要かも。まぁいっぽうでロードスターとか海外でロードスターがMXってカタチで別の個性をしっかりした基軸を作っているわけですから、それにならってMXシリーズを評価する方がいいんですかね、そうなると。ロードスター(MX-5)とセットという言い方は変ですけど。ただ、ロードスターほど斬新がないのと、言葉遊びになってしまっているところがやや気がかり。



世良:まぁだから、話を聞いたら開発はCX-30よりもMX-30の方が先に始まってたというのだけど、当然CX-30のことは意識しているはず。で、いまのマツダのメインストリームをちょっと否定しなければいけないという方向に意識が振り向けられていて、そこで終わってしまっていて、新しい価値があまり乗っていない。新しいTTみたいな、ちょっと遊び心もまだ足りていないような気がするし、だから、ただのいまのメインストリーム否定で終わっている気がする。

鈴木:前に世良さんが教えてくれたMXシリーズのヒストリーを見ると、マツダのMXシリーズってかなりぶっ飛んだことをずっとやっているんだよね。商品になっていないものはね。なったものはMX-5ミアータ以外成功していない。ほかのは結構新しいデザインだったり、トライをしている。これが市販車になるとMX-6だっけ、V6を積んだクルマ。MXシリーズって成功してないんだよ、ミアータ以外は。



世良:だからマツダは遊ぶのが下手なんじゃないの(笑)。



鈴木:遊び方を知らないのかな。



世良:もうちょっと遊ばないといけないんじゃない? だからこうやってMX-30を出すことはいいじゃない? 遊び続けているとその次はよくなっていくんじゃないかな。



鈴木:そうだね。これ一台で、成功失敗というよりは……。



世良:いままで遊んだことがない人が、ちょっと弾けてみましたって。初めて弾けた人ってちょっとちぐはぐなところがあるじゃない。



で、MX-30は売れる?

室内は上質。同じ上質でもCX-30とはテイストが違う上質だ。

フローティングコンソールもコルク材を使ったインテリアもMX-30の世界観の演出に一役買っている。



鈴木:さて、最後に質問します。MX-30、売れると思いますか? 月販1000台、年1万2000台、売れそうかな。なにがポイントだと思いますか。



瀬在:CXからの差別化ってことでね、デザインにしろなににしろ、マツダカラーがいままで強すぎたところから一歩外れたところで、新し価値観を作ったっていう意味では1000台、いくと思います。もしかしたら消去法になってしまうのかもしれません。もしくは乗り換えユーザーっていうものあるかもしれない。子どもが大きくなったらこれからふたりで乗るっていう逆のパターンもあり得ると思います。年配の人が広いドアで乗り降りしやすいねって感じるかもしれないです。子どもがいなくなって、ロードスターだとちょっとタイトすぎますよね、ロードスターの延長でロードスターかMX-30かみたいなね、選択肢でいくとMXシリーズも、なにか盤石になっていくのかな、と。



世良:コンパクトSUVのカテゴリーを国内のマーケットで見渡すと、MX-30とかぶるクルマがないので、そういう意味では間口を拡げるって言っていたけれど、その拡げる層はある一定数いると思う。ただ、クルマのコンセプトとして、日本のマーケットは向いていなくて、北米なのかなっていう気はしました。北米の感度の高い人たちに選んでもらいたいんだな、きっと。で、そこの層にたとえばiPhoneみたいなものがでたときにiPhoneに最初に飛びつくような人がMX-30に飛びついて、「ああ、このクルマ売れているんだな」「なんかおしゃれなんだね」っていってどんどん拡がっていく、みたいなことを期待して作ったんじゃないかなと思った。



鈴木:新しモノ好きってことね。アーリーアダプターってやつですね。



世良:そうそう。



生江:編集長! すぐに買わないと! 新しモノ好きなんだから!



世良:でもMX-30は新技術じゃないからね。また話がぐるっと戻っちゃうけど……。だって、遊んでいるだけど、ステアリングホイールの奥にあるメーターは真面目なんだ、相変わらず。せっかくデジタルメーターなのに。

生江:要するにね、遊び慣れていないからお酒の飲みかたもわからないし、女の子への声のかけかたもわかんない……みたいな感じ? いままで優等生だったから。優等生を踏襲しつつ遊んでみたらあんな感じになっちゃいました、みたいな。



世良:多分ファッション誌とか一所懸命勉強して自分なりにおしゃれしたんだと思うんだけど。



生江:そう。研究はしているの。でも紺ブレ着て、襟のボタン一番上までしめちゃうの。でもね、そう言っているけどね、コレは売れるかなと思うの。っていうのは、CXと同じサイズですよね。2台並べたときに、「オレ(ワタシ)って違うから、コッチを選ぶよ」って考える人が多くいるような気がするの。まったく同じものを並べられて「一番の違いはドアがこうなんですよ」って言われた時に、基本的な操作は一緒のはずだから「自分は普通の人とは……」っていう自己顕示欲みたいなやつが出て。「ワタシ、インフルエンサーだから、やっぱこういうの乗ってないと」みたいな感じでチョイスする気がする。



鈴木:インフルエンサー向き?



生江:なんていうかな。インフルエンサーって、「自分はいいものをわかってるよ!」って表現できる人じゃない? でも、世の中にはそう思っていてもそれを表現する場がないって人も多くいると思うの。みんながみんな何万っていうフォロワーがいるわけではないからね。でも、そういう人たちでも、クルマだったら乗ってたら見られるでしょ。クルマって、そういう意味ではすごく個性やセンスが表現できるアイテムだからね。とくにこのクルマは、後席ドアを開けた時の注目度は満点なわけだから!




そんなわけでMX-30、売れると思います。



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