渡辺陽一郎さんが選ぶおすすめSUVは、予算300万円までならスバル・フォレスターXブレイク、予算600万円までならトヨタ・ハリアー ハイブリッドG"レザーパッケージ"、そして予選無制限ならBMW X7 xドライブ35d デザインピュアエクセレンス。特にハリアーは、買うならレザーパッケージがおすすめだという。
TEXT●渡辺陽一郎(WATANABE Yoichiro)
最近はSUVの人気が高い。もともと悪路を走破するクルマとして生まれたカテゴリーだから、大径タイヤの装着など外観が野性的だ。ボディの上側は少し背の高いワゴンスタイルだから、居住性や積載性も優れている。つまりSUVは、カッコ良さと実用性を両立させて人気を得た。
子育てを終えたユーザーが、ミニバンからSUVに乗り替えることも多い。3列シートを備えた広い車内はもはや不要だが、ミニバンの高い天井に慣れると、背の低いセダンやクーペには戻りにくい。背の高い軽自動車やコンパクトカーも選べるが、もう少し快適で走りの良いクルマを楽しみたい。そうなるとSUVに目が向く。実用性を含めて、クルマのさまざまな魅力をバランス良く高めているからだ。
そこで価格帯別のSUV選びを考えたい。各価格帯に最も多いニーズを想定して、そこからベストな選択を導き出す。
予算300万円までなら「スバル・フォレスターXブレイク」
300万円以下の価格帯から選んだのは、スバル・フォレスターXブレイクだ。地味なSUVだが、機能のバランスが優れている。SUVというカテゴリーの特徴を明確に表現した車種ともいえるだろう。
全幅は1815mmと少しワイドだが、視界が比較的優れているから運転しやすい。最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は220mmと余裕があって悪路のデコボコを乗り越えやすく、なおかつ床はあまり高くないから乗降性も良い。
車内に入ると、後席を含めて床と座面の間隔が適度に確保され、着座姿勢も良好だ。頭上と足元の空間も広く、大人4名が快適に乗車できる。リヤゲートの角度を立てたから、荷室容量も大きい。
水平対向4気筒2.5Lのノーマルエンジンは、実用回転域の駆動力に余裕がある。しかもWLTCモード燃費の郊外モードと高速道路モードは、e-BOXER(ハイブリッド)のアドバンスよりも優れている。床が低く低重心だから走行安定性も良く、総合評価の高いSUVに仕上げた。
予算600万円までなら「トヨタ・ハリアー ハイブリッドG"レザーパッケージ"」
価格帯が300万円を超えると、SUVを選ぶ目的も違ってくる。300万円以下なら、カッコ良さと実用性の両立だが、価格が高まると前者の比率が増える。外観のカッコ良さ、内装の上質感、スムーズな走り、快適な乗り心地などが重視される。
昔はクラウンやセルシオがこのニーズに応えたが、今はセダンの車内は窮屈といわれ、SUVの上級車種が注目される。アルファードのような上級ミニバンもあるが、走行安定性、左右に振られにくい乗り心地などを考慮するとSUVが有利だ。
そこで選んだ車種がトヨタ・ハリアー ハイブリッド G"レザーパッケージ"になる。内外装は上質で、後席を含めて居住性も快適だ。ハイブリッドなら環境性能と併せて、滑らかな運転感覚も満喫できる。2Lのノーマルエンジンに比べると、ノイズも大幅に小さく、ハリアーらしい上質感が濃厚だ。
レザーパッケージを選んだ理由は、この仕様でないと助手席に電動調節機能が備わらないからだ。助手席を調節する機会は運転席に比べて圧倒的に少ないが、そういう話ではない。妻が助手席に座った時、「私の座るシートは手動調節なのね...」と受け取ってしまう。
ハリアーのような上級SUVを買う夫の意図に、「妻を大切に思っている」気持ちを言外に伝える意味が含まれることもある。クルマは居住空間の一部で、一緒に周囲の風景を眺めたりする場所でもあるから、夫婦の関係にも少なからず影響を与える。車両のコンセプトに基づいて、助手席の電動調節機能は幅広いグレードに設定すべきだ。
予算が無制限なら「BMW X7 xドライブ35d デザインピュアエクセレンス」
価格帯が無制限なら、一般的にはレンジローバーなどを推奨するだろう。確かに良いクルマだが、私の場合、個人的には気後れする。本当の贅沢を知らないと、理解できないクルマのような気がするからだ。私は60年近く生きてきたが、住居はすべて集合住宅で、一戸建てには縁がない。いつものジーンズでレンジローバーに乗るのも、何となく違う気がする。
そこでBMW X7を選んだ。フロントマスクは率直にいって悪趣味。最初は嫌な感じだと思ったが、運転すると印象が変わった。全高は1835mmと高く、車両重量も2400kgに達するが、操舵角に応じて自然に良く曲がる。BMWの正確性を失っていない。
乗り心地は重厚で快適だが、路面が荒れているか否かは、ドライバーにしっかりと伝える。これも安心感を重視したBMWらしさだ。3Lのクリーンディーゼルターボは実用回転域の駆動力がきわめて高く、しかも5000回転近くまで滑らかに吹き上がる。ここまで外観の印象と、運転感覚が異なるクルマも珍しいだろう。
SUVの魅力は、冒頭で述べたカッコ良さと実用性の両立だ。いい換えれば、異なる要素を巧みに融合させた妙味や意外性にある。その意味ではBMW X7も、SUVの本質を突いた商品なのだろう。
『予算別ベストSUV・3選』は毎日更新です!
ますます人気が盛り上がっているカテゴリー、SUV。自動車メーカーも開発に力を入れており、ラインアップが充実しているのはうれしいのだが、どれを選べばいいのか迷ってしまいがち。
そんな迷えるSUVオーナー予備軍のために、「予算300万円まで」「予算600万円まで」「予算無制限」といった具合に予算別のベストSUVを紹介。毎日、自動車評論家・業界関係者に3台選んでいただくので、明日の更新もお楽しみに。
※今回の企画では、最も安いグレードの価格が300万円以下のSUVは「予算300万円まで」、同じく最廉価グレードが600万円以下なら「予算600万円まで」に分類しています。