2017年に登場した三菱のクロスオーバーSUV、エクリプス クロスがこのたびデザインを一新し、新たにPHEVモデルを追加する。10月15日から予約注文の受付を開始し、発売は12月を予定。価格はPHEVモデルが約385万円〜450万円、ガソリンモデルが約255万円〜約335万円となる見込みだ。
TEXT●安藤眞(ANDO Makoto) PHOTO●三菱自動車工業/MotorFan.jp
エクリプス クロスPHEVはツインモーター4WD&S-AWCによる走りの楽しさも自慢
かねてからティザーサイトでその存在が明かされていた新型エクリプス クロスPHEVが、10月15日に正式発表。12月の発売に向けて予約受注を開始すると同時に、既存モデルのマイナーチェンジも発表された。
主な変更点は、パワートレーンのラインナップとデザイン。パワートレーンにはPHEV(外部からの充電もできるハイブリッド仕様)が加わる代わりに、2.3Lターボディーゼルがディスコンとなった。一部では「三菱はディーゼルエンジンの開発を中止」という記事も流れているが、これは誤報。三菱によれば「デリカD:5や新興国向けモデルもあるので、中止する予定はない」とのこと。今回の措置は、単に「ラインナップ数を増やさないため」というのが真相だ。
フロントマスクは三菱のアイデンティティである“ダイナミックシールド”を押し進め、近未来的なイメージとなった。ランプの配置はデリカD:5と同様、最上段がシグネチャー&ターンシグナル、その下がプロジェクター式ヘッドランプで、最下段がフォグランプという構成だ。
バックスタイルはバックドアガラスのダブルウインドウをやめ、オーソドックスなシングルウインドウとなった。ワイパーもスポイラー内蔵からガラスの下部に移されている。従来型のデザインも、バックドアを横切るテールランプがウイング風に見えて個性的だったが、コスト面で厳しかったのかも知れない。
デザイン変更に合わせて全長も140mm延長。内訳は、フロントオーバーハングが35mm、リヤオーバーハングが105mmで、ラゲッジスペースも少し拡大しているようだ。
今回、試乗させてもらったのは、新たに加わったPHEV仕様。ハードウェアはアウトランダーと共用しており、前後輪それぞれを独立したモーターで駆動するツインモーター4WDをベースに、左右輪の駆動力を制御するAYC(Active Yaw Control)と、姿勢が大きく乱れたときにブレーキ制御で修正するASCを統合制御するS-AWC(Super All Wheel Control)を採用するのが特徴だ。
大きな違いは選択できる制御モード。アウトランダーPHEVが、NORMAL/SNOW/LOCK/SPORTの4モードであるのに対し、エクリプス クロスPHEVはLOCKとSPORTが無くなり、代わりに未舗装路に適した駆動力配分制御となるGRAVELモードと、舗装されたドライ路面で最大のパフォーマンスを発揮するTARMACモードを採用。アウトランダーより小さく軽いボディを生かし、「走りを愉しめるPHEV」を狙っている。
試乗会の目的は、TARMACモードによるオンロードでの俊敏な走りを体感すること。だから会場は富士スピードウェイのショートコースを用意してくれていたのだが、僕たちが参加した日は台風接近による大雨。ヘビーウェットでの試乗となったのだが、むしろGRAVELとSNOWモードの威力を確認するには絶好のコンディションとなった。
まずはノーマルモードで走り出す。スピードの乗る第5コーナーで「この辺から踏んで行けたよな」と思ってアクセルを開けたら、想像以上に路面のμが低く、コース幅いっぱいに振られて冷や汗をかいた。裏の短い直線には、スラローム用にコーンが並べられていたが、ここも進入スピードが速いとアンダーが出るし、つぎのパイロンに向けてアクセルを踏んでもアンダーが出るため、積極的に何かをしようという気にはなれない。
後で聞いたら、NORMALモードは燃費優先で前輪駆動主体の制御になっているとのこと。もちろんアンダーステアが出れば後輪の駆動力配分は大きくなるが、フィードバック制御となるので即応はできず、ちょっとリバースステアっぽい動きになったようだ。もっともドライバーの習性として、アンダーステアが出ればアクセルは戻すはずだから、サーキットという特殊なシチュエーションでのみ発現する特性だと思う。
ともあれNORMALモードはこの環境では適当ではなさそうだったので、GRAVELモードに切り替える。するとコーナーからの立ち上がりでも後から押される感じが出てきて、安心してアクセルを踏み込める。特に第3コーナーは、Rがきつく上り勾配になっており、峠道のタイトターンと良く似たシチュエーション。エンジン車なら、進入時に低めのギヤに固定しておかないとモタつくようなシーンでも、電気モーターならではの素早いトルク応答で俊敏に加速できる。何より自分でコントロールできている安心感が好ましい。モードの名称はGRAVELだけれど、峠の登りで雨に遭ったら使う価値のあるモードだと思う。
続いてSNOWモードを選択してみると、GRAVELモードから加速応答を緩くしたイメージとなった。3コーナーでアクセルをワイドオープンにしても、前後輪ともなかなかトルクが立ち上がらない。でも雪道ならば、これくらいでちょうどいいはずだし、雪道でもアグレッシブに走りたいなら、GRAVELモードを選択するという方法もある。
路面が滑りやすかったので、TARMACモードは試さなかったが、その他のモードも適宜、選び分ければ、安全に楽しく走れることは、十分、実感できた。