ターボラグ解消のための手段としてホンダは独自のターボチャージャーを考案、製品に搭載した。その名はバリアブルフローターボ。なんでも自分たちで解決するという彼ららしいシステムだ。
TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)
アキュラRDXは、北米ではエントリーSUVに分類されるモデル。市場ではBMW X3、日産ムラーノあたりと競合することになる。
これだけのサイズと1780kgもの重量を持つクルマ、特に北米で販売されるモデルに必要十分なトルクを確保するには、3ℓ超級の6気筒エンジンを搭載するのがセオリー。しかしホンダは重量増を嫌い、軽自動車を除けば久々となる過給エンジンを採用。その意味では、ダウンサイジング目的の過給エンジンと判断していい。
アルミブロックを持つK23A型エンジンに組み合わされたのは、「バリアブルフロー」と銘打つ新たな方式の可変容量式ターボチャージャーだ。
構造的には、やはりスクロール室を2分割している。ただしツインスクロールターボとは違い、分割は周方向だ。2つのスクロール室は完全に仕切られてはおらず、周の2/5程度がベーンによって構成されている。VGターボと違い、ベーンは固定式だ。また、インテーク部にはスクロール室に対する「フロー制御バルブ」が設けられている。
エンジン回転数が低い状態では、フロー制御バルブが閉じていて、排ガスは内側のスクロール室にだけ流れ込む。少ない排気流量に応じて小さなスクロール室を使うことで、排ガスの運動エネルギーを有効にタービンホイールへ導くことができる。
エンジン回転数が高まってくるとフロー制御バルブが開き、外側のスクロール室にも排ガスが流れ、本来持っている容量をフルに使う。このような仕組みによって、低速時から全負荷までタービンを効率良く作動させるわけだ。
【左:排気流量大の状態】
フロー制御バルブが開いて外側のスクロール室へも排ガスが流れ込み、容量をフルに使う。RDXの場合、バルブは通常2000rpmで開き始め、2500rpmで全開に。それ以上はウェイストゲートを使う。最大過給圧は13.5psi(0.93bar)だ。
【右:排気流量少の状態】
フロー制御バルブが閉じ、排ガスはスクロール室の内周側にのみ流れ込む。内周側は径が小さいだけではなく、軸方向にも狭くなっており、少ない排気流量、イコール小さな運動エネルギーでも、効率良くタービンを作動させられる。
設計上のポイントは、ベーンの形状と配置に尽きるという。排ガスの流量が少ない時には外周方向へ漏れ出さず、大流量時にはスムーズに流れ込む構成は、CFD(Computational Fluid Dynamics)による3次元流体解析技術の進歩によって実現した新機軸なのである。