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「撤退」「休止」そして「終了」ホンダF1参戦終了で問われる“ホンダのDNA”「F1で培った技術が将来のホンダの製品に活かされ、『さすが、ホンダ』と感嘆させてほしい」


ホンダの八郷社長が「2021年シーズン限りでF1活動を終了する」と発表した。ホンダは、F1に参戦して「撤退」「休止」を繰り返してきた。そのたびに「復帰」したわけだが、今回は「終了」だという。第4期ホンダF1活動のテクノロジー面についてもっとも取材を重ねてきたジャーナリストの世良耕太氏が、今回の「終了宣言」について寄稿してくれた。




TEXT◎世良耕太(SERA Kota)PHOTO◎Honda

内容が内容なので当然だが、前回(2008年12月5日)のときと同様に、その発表は突然だった。2020年10月2日、ホンダはオンラインで記者会見を開き、「2021年シーズンをもって、F1へのパワーユニットサプライヤーとしての参戦を終了することを決定」したと発表した。




ホンダは2000年に始めたF1レース活動を、2008年シーズン限りで終了した。その際は「撤退」の表現を用いた。

■ホンダのF1参戦活動


第1期 1964〜1968年


参戦時:本田宗一郎社長


撤退時:本田宗一郎社長


 撤退理由:大気汚染対策の市販車用低公害型エンジンの開発




第2期 1983〜1992年


参戦時:河島喜好社長


撤退時:川本信彦社長


 撤退理由:「初期の目標を達成した」から




第3期 2000〜2008年


参戦発表時:川本信彦社長


撤退発表時:福井威夫社長


 撤退理由:リーマン・ショックによる業績の悪化のため、経営資源を再分配する必要があったため。






第4期 2015-2021年


参戦発表時:伊藤孝紳社長


終了発表時:八郷隆弘社長


 終了理由:カーボンフリー技術の投入をさらに加速させるため、F1参戦活動に投じていたリソースを振り向ける。

1968年のRA301とジョン・サーティース(ドライバー)と中村良夫(監督)。

「サブプライム問題に端を発した金融危機と、それらにともなう信用危機、各国に広がった実体経済の急速な後退により、ホンダ(原文はHonda、以下同)を取り巻くビジネス環境は急速に悪化してきています。当面の世界経済は不透明さを増すばかりであり、回復にはしばらく時間がかかることが予想されます」




発表されたリリースにはそう記されていた。




「ホンダはこの急激かつ大幅な市場環境の悪化に対し、迅速かつフレキシブルに対応をしてきましたが、将来への投資も含め、さらに経営資源の効率的な再配分が必要との認識から、F1活動からの撤退を決定しました」




要するに、経営状況が厳しくなったので、F1に参戦している場合ではなくなったと説明したのだ。この発表から4年5ヵ月後の2013年5月16日、ホンダはパワーユニットサプライヤーとして2015年からF1に参戦することを発表した。その理由について、次のように説明した。




「F1では2014年より、1.6リッターV型6気筒直噴過給エンジンに加え、エネルギー回生システムが採用されるなど、エンジンのダウンサイジング化をはじめとした環境技術が導入されます。これらの技術への挑戦は、内燃機関のさらなる効率化や、ハイブリッドシステムなど、先進のエネルギーマネジメント技術を常に追求してきたホンダにとって、将来技術の開発や技術者の育成などにおいて大きな意義があると捉え、参戦を決意しました」

RA271Eエンジン。1964年の初参戦から56年年間でホンダがF1に参戦していたのは31シーズンだったということになる。

マクラーレンとのジョイントプロジェクトとしてF1に復帰したホンダは、2018年にパートナーをトロロッソ(現アルファタウリ)に切り替えた。2019年からはレッドブルを加えて2チーム体制とし、その年の第9戦オーストリアGPでレッドブルのマックス・フェルスタッペンが優勝。ホンダにとっては2006年のハンガリーGP以来、13年ぶりのグランプリ制覇となった。




フェルスタッペンは第11戦ドイツGPと第20戦ブラジルGPを制し、ホンダは2019年に3勝を挙げた。2020年は第5戦70周年記念GP(イギリス・シルバーストン)でフェルスタッペンが優勝すると、第8戦イタリアGPではホンダのパワーユニットを搭載するアルファタウリのピエール・ガスリーが自身初優勝を遂げた。レッドブルはチャンピオンを狙って2020年シーズンに臨んだが、その可能性はすでに事実上断たれ、シリーズ7連覇に向けて快進撃を続けるメルセデスを楽に勝たせないようにする戦いに集中している。




ホンダが参戦6年目にしてようやくチャンピオンを狙えるだけの実力を備えるようになったのは事実で、2021年に向けた期待は大きい。そんな状況での「参戦終了」の発表だった。1964年の初参戦以来、ホンダは参戦と撤退を繰り返してきたが、「再参戦はない」と八郷社長は言い切った。「終了」である。




参戦終了の理由については、「カーボンフリー技術の投入をさらに加速させるため」と説明した。ホンダは「2050年にカーボンニュートラルの実現」を目指し、そのための手段のひとつとして「2030年に四輪車販売の3分の2を電動化する」という目標を掲げている。電動化の比率を高めても走行中の二酸化炭素排出量が減るだけであり、それだけでカーボンニュートラルが実現するわけではない。再生可能エネルギーの使用が欠かせないが、エネルギー技術の研究も大幅に強化することに言及が及んだ。




環境への取り組みと電動化の推進はホンダにとって喫緊の課題で、これまでF1参戦活動に投じていたリソース(予算だけでなく人材=技術者も含む)を振り替えなければ、企業活動の存続が危ぶまれるほど追い詰められた状態だということだ。ただし、急に決まった話ではないし、新型コロナウイルスの影響でもなく、参戦終了については昨年から検討。パートナーを組むレッドブル(と姉妹チームのアルファタウリ)とは8月から協議を開始し、今回の決定に至ったという。




フェラーリがF1に欠かせないように、ホンダもF1に欠かせない存在になってほしかった。というのが、個人的な思いだ。八郷社長はF1参戦終了を発表しておきながら、「レース活動はホンダのDNA」だと強調したが、「そのDNAを断ち切ろうとしているのでは?」と、発言に矛盾を感じた。




いまさら蒸し返しても始まらない。ホンダにとって最後のF1シーズンになる「2021年には新しいパワーユニットを投入し、チャンピオンを目指す」という。最後まで応援したい。2008年までの第3期参戦活動ではエンジンだけでなくシャシー開発も行ない、撤退後はF1時代の空力技術が量産車の開発に生かされた(現在でも生きている)。同様に、2021年までのF1参戦活動で培った燃焼技術やエネルギーマネジメントの技術が、将来のホンダの製品に活かされ、「さすが、ホンダ」と人々を感嘆させてほしい。

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