これまでの人生において、所有したり試乗したりした輸入車のなかからベスト3を業界人に選んでいただく本企画。清水草一さんはすべて所有経験のあるクルマからチョイスしてくれたが、第1位は、清水さんが大乗フェラーリ教の教祖への道を歩むきっかけとなったフェラーリ348tbである。
TEXT●清水草一(SHIMIZU Soichi)
人生最高のクルマ・輸入車編は、フェラーリに人生を賭けて来た関係上、すべて自家用車から選ばせていただきます。ただ、フェラーリばっかりになると退屈でしょうから、多少配慮しました。
第3位:シトロエン・エクザンティア ブレーク
初めて買ったハイドロシトロエンは癒しの極致。生涯最長の7年半乗りました。これまで49台クルマを買っている私としては、7年半も長~く愛したのはこのクルマだけです。
最大の美点は、言うまでもなく乗り心地です。ただ、本当に乗り心地がいいのは高速巡行時のみ。大きなうねりを乗り越えた時、車体が水平を保ったままフワンと上下する、魔法のじゅうたんみたいなあの感覚に集約されていて、その他の場面では大して乗り心地がよくないのがまたよかった。ツンデレっていうんですかね。「あの瞬間をまた味わいたい!」と思い続けた7年半でした。
第2位:フェラーリ458イタリア(2009年-)
価格も2580万円(中古)と、これまで買ったクルマのなかでダントツでしたが、性能はクルマの領域を超えてUFOレベルにあり、異次元を見ることができました。
特にコーナリングは、完全に物理法則を超えているように感じました。Eデフの左右駆動力配分によって、曲がりたいほうに後輪が押し出してくれるので、そこらの四つ角を曲がるだけで「ウヒョ~!」と叫んでしまうほどの快感があったのです。
ただそれは、フェラーリらしい危険と隣り合わせの快楽で、詳しくは割愛しますが、とにかく曲がりすぎる。ワインディングではコーナー内側のガードレールに突っ込まないよう注意し続けた、5年間のUFO生活でした。
第1位:フェラーリ348tb(1989年-)
私が最初に買ったフェラーリ、90年式348tbこそ、私の人生あるいは人間性そのものを形成したとでも言いますか、細胞レベルでの大変異を発生させたクルマです。
詳しく書くスペースはないのですが、初期型348は真っすぐ走らない欠陥車でありながら、V8エンジンがあまりにも気持ちよく、常に死と隣り合わせの快楽を味わったのです。真の快楽は危険と背中合わせでなくてはならない。安全地帯の快楽なんて快楽じゃない! ヤバいから気持ちいいんだろうがうおおおおお!ってことですね。人生で最も濃い5年半でした。