フェアレディZ(北米では370Z)は、日産のDNAのアイコンである。初代DATSUN240Zは、1969年の販売開始から78年までの10年間で世界で約55万台も売れた。とくに北米での人気は非常に高かった。今回は21世紀に入ってからの北米でのフェアレディZの販売数の推移を振り返りながら、次期型の予想をしてみたい。
まず、言えるのは、先代Z33型フェアレディZ(350Z)の人気の高さだ。カルロス・ゴーン前会長が日産を率いるようになったときに「日産リバイバルプラン」の象徴のひとつとしてZが2年ぶりに復活したのが、2002年だった。
2002年:1万3250台
2003年:3万6728台
2004年:3万690台
2005年:2万7278台
というように、北米で好調なセールスを記録していた。
モデル最末期の2008年でも1万337台を売り上げていた。
その後継モデルである現行型(Z34型)は2008年12月発表。不幸だったのは、リーマン・ショックのまっただ中でのデビューになってしまったことだ。もっとも新車効果が期待できるデビュー直後の2009年でも1万3117台でZ33型のときのようなブームを作れなかった。
2011年には7328台、12年が7338台、以降徐々にセールスは下がり、19年はわずか2384台にまで下降してしまった。
この原因はなんだろう? それは明らかで、モデルライフが長すぎたのだ。現行Z34型はデビューから12年が過ぎている。いかにも長い。Z33型を復活させたのはゴーン前会長の大きな功績だが、Z34型をモデルチェンジさせなかったのは、同じく大きな失策だったのではないか?
このグラフは、北米における日産Zとポルシェ911の販売台数の推移だ。911とZは同じ価格帯ではないが、北米で人気のスポーツカーという点では同じだ。ポルシェ911が安定して売れ続けているのに対してZの販売台数の変動が激しい(というよりも減少の一途だ)。
ポルシェ911は
997型:2004年
991型:2011年
992型:2018年
とモデルチェンジを受けている。これが販売台数と人気を維持できている大きな要因だろう。
そこで登場を予告されたのが、次期フェアレディZ
日産が再び復活の狼煙として登場を予告したのが、今回発表された新型フェアレディZのプロトタイプだ。
発表されたのは、
エンジン:V6ツインターボ
トランスミッション:6速MT
全長:4382mm
全幅:1850mm
全高:1310mm
タイヤ&ホイール:F255/40R19 R285/35R19
というもの。しかも「上記仕様はフェアレディZプロトタイプのものであり、詳細は生産モデルと異なります」の但し書きがついている。
2021年中には正式デビューを飾ると予想される。
では、プロトライプから何がわかるだろうか?
まずはボディサイズから。
現行(Z34型)
全長×全幅×全高:4260mm×1845mm×1315mm
ホイールベース:2550mm
車重:1500kg
に対して
フェアレディZ プロトタイプ
全長×全幅×全高:4382mm×1850mm×1310mm
と全長で122mm、全幅で5mm拡大している。ホイールベースは発表されていない。
サイドビューを比べてみる。
これを重ね合わせてみる。
(予想通りだが)ほぼ一致する。少し詳しく見てみよう。
ボディ前半を見ると、Aピラーの角度、ルーフラインはほぼ一致する。新型プロトタイプの方がデザイン処理の関係でノーズが長くなっているのがわかる。ノーズ先端の高さは現行・新型プロトでほぼ変わらない。
ドアのオープニングライン、ドアノブの位置もほぼ同じだ。
ボディ後半は、新型プロトの方がテール部分が下がっていて、これもデザイン処理の関係で少し長くなっている。
ということで、もっとも注目すべき点は、ホイールベースが完全に一致するということ。発表会後のQ&Aセッションでも、田村CEが「ホイールベースは同じ」と述べていた。全長、トレッドなどを考えたときのベストな数値が2550mmだと説明していた。
つまり、次期型でもプラットフォームはZ33型から使っているFR専用のFMプラットフォームを使うということだ。熟成されたプラットフォームを継続して使うことのメリットもあるはずだ。日産とインフィニティブランドしか使わない(アライアンスを組むルノーと三菱にFRモデルはないので)エンジン縦置きFRのプラットフォームを、この時期に完全新開発するというのは、想像しにくいのも事実だ。
ただし、発表されたのは、あくまでも「プロトタイプ」だから、もしかしたら、新型フェアレディZが次期型新開発FR用プラットフォームで登場する可能性もゼロではない。
エンジンは? やはり3.0ℓV6ツインターボのVR30DDTT型か
エンジンは「V6ツインターボ」としか発表されていない。
日産が現在持っているV6ツインターボは、GT-Rの3.8ℓV6ツインターボのVR38DETTとスカイライン400Rが搭載する3.0ℓV型6気筒DOHCツインターボVR30DDTT型だが、おそらくVR30DDTT型を搭載すると予想する。
パワースペックは
最高出力:405ps
最大トルク:475Nm
で、現行Z34型の3.7ℓV6DOHC(VQ37HR)
最高出力:336ps
最大トルク:365Nm
から大きくパワーアップすることになる。
組み合わせるトランスミッションはどうなるか?現行Z34型フェアレディZとスカイライン400Rはジヤトコ製7速ATを使っているが、次期Zでは、ジヤトコの新開発9速AT(JR913E)を載せてほしい。現行7速ATと全長は変わらず、トランスミッションケースにマグネシウムを採用するなどして軽量化もした新ATだ。レシオカバレッジも9.09と世界最高水準。当然燃費性能も大きくアップするはずだ。
VR30型はVQ型とボアピッチが同じ(108mm)だから、ボアを少し広げる余裕はあるだろう。たとえば、ボアを2.8mm拡大して88.8mmにすれば
ボア88.8mm×ストローク86.0mmで3196ccになる。
北米で「320Z」あるいは「320ZX」という名前になるという可能性もゼロではない。
と思って、「UNITED STATES PATENT AND TRADEMARK OFFICE」でアメリカでの商標登録を調べてみると、
「NISSAN Z」
の登録はある。次期型は、北米ではシンプルに「NISSAN Z」と名乗るのかもしれない。
シャシーが現行型の改良版だとしてもVR30DETT型+新開発9速ATというパワートレーンで登場するなら、次期Zはボディデザインとも相まってかなり新鮮なイメージでデビューできるだろう。
次期Zには、6速MTがラインアップされるとすでに発表されている。
現行フェアレディZの6速MTは、愛知機械製(R31A型)でトルク容量は450Nm。つまり、VR30DDTT型の475Nmは現状では受け止められない。強化型のMTを使うか、MTモデルは最大トルクを450Nmに抑えて(その代わり、最高出力をその分上積みして420ps程度にアップするか)使うか、ということになるのかもしれない。
果たして、いつ、どんなスペック、どんな価格で次期フェアレディZが登場するか? 今後もさまざまな情報が日産から発信されてくるだろう。
それを分析して「次期Zの姿」を予測するのは、やはり興味深い。
次期フェアレディZ、期待して待ちたい。