これまでの人生において、所有したり試乗したりした輸入車のなかからベスト3を業界人に選んでいただく本企画。クルマのデザインにも造詣が深い森口将之さんがチョイスした3台は、どれも個性的なスタイリングも持ち主だ。特に1位のシトロエンDSは、「宇宙船」と称された前衛的な佇まいが目を引く。
TEXT●森口将之(MORIGUCHI Masayuki)
第3位:アルファ ロメオSZ(1989年-)
今回も古いクルマに触れる機会が多い経験を生かし、ヒストリック系から選ばせていただくと、3位はアルファ・ロメオのSZだ。
若い頃ジュリアクーペの2000GTヴェローチェに乗っていたので、その頃のアルファにも思い入れがあるけれど、走りの気持ち良さではSZも負けていない。なにしろアルフェッタとともにデビューしたトランスアクスル後輪駆動シャシーに、快感成分100%のシングルカム3ℓV6を組み合わせているのだから。走りのレベルは高いし、なによりもドライバーを歓ばせる術を知り尽くしている。
デビュー当時は違和感ありまくりだったスタイリングが、今見るとフラットなサイドパネル、バンパーを一体化したフロントマスクなど、実は最新のクルマに近い造形であることもわかる。ザガートの先進性を教えてくれる1台でもある。
第2位:リンクス・イベンター(1983年-)
初めて見る人が多いと思うので簡単に説明すると、ジャガーCタイプやDタイプのレプリカで名を成したリンクスが、XJSをベースに作ったスポーツワゴン。ジャガーらしいエレガンスはそのままにルーフをリアまで伸ばし、ワゴンに姿を変えたスタイリングは見事というしかない。
しかも走りはジャガーそのもの。ふだんはジェントルな5.3ℓV12は、踏めば大排気量らしい底力と12気筒ならではのきめ細かさで魅了させてくれる。加えてサルーンのXJより大幅に短いホイールベースがもたらすハンドリングは、スポーツカーそのものだ。
車名はイベント屋さんのクルマという意味ではなく、馬術競技にそういう種目があったから。そんなバックグラウンド込みで惹かれてしまうが、生産台数67台といわれるクルマに取材とはいえ乗れたことだけで満足すべきかもしれない。
第1位:シトロエンDS(1955年-)
自分でも5台所有してきたシトロエンは、取材で戦後生まれの量産車はひととおり乗ることができた。どれも独自の魅力を携えたクルマたちだが、その中でDSの存在感はやっぱり別格だと思っている。
昔は優雅かつ流麗なスタイリングや、ハイドロニューマティックのふんわりした乗り心地、負けずにふっかりしたシート、この時代としては異例のオールパワーの操作系など、モノとしての先進性に感動したものだが、その後何度も取材で乗らせてもらううちに気持ちが変わっていった。
日本では初代クラウンがデビューした1955年にこれが生まれているのだ。あの時代にこんなに先進的なデザインや独創的なエンジニアリングを生み出しただけでなく、それを20年かけて約140万台も売ってしまう。それを思うとやはりこれは戦後の自動車界の金字塔だと確信するのである。