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新型タント、ロッキーに続いて投入されたDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)採用の新プラットフォームやパワートレーン。さらには、先進安全機能やコネクティッド機能も進化を果たし、安全で楽しいクルマを目指したメカニズムが満載された!
REPORT●安藤 眞(ANDO Makoto)/編集部
※本稿は2020年7月発売の「ダイハツ タフトのすべて」に掲載されたものを転載したものです。
小さいながらSUVとしての機能も良好
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全長及び全幅は、軽企画いっぱい。全高は1630mmと、長身車なら踏み台なしにルーフキャリアを利用できそう。運転席の高さはたんとより低く、よりロングドライブ向け。後席はスライド市内が、前後に身長180cm級が座れる空間は確保されている。最低地上高は190mmと、荒れた林道程度なら安心して走れる。
上方視界も良好で停車時に信号も確認できる
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一般的なサンルーフの場合、運転していると開口部が視界に入らないものが多いが、タフトのスカイフィールトップは運転姿勢のままでも「上が抜けてる感」が味わえる。小さな交差点で最前列に停止した際、ここから信号が見えるという実用性もある。限られたスペースを最大限に使いやすく
後席はタフト専用設計。背もたれを折り畳んだ際、ラゲッジボードまで完全にフラットになるよう、他モデルよりビンジの位置を高く設定している。スライドやダイブダウンはしないが、シンプルな空間をバックパック的に使って欲しいとの狙いだ。操作性が考え抜かれたスイッチ
フロアコンソール最後部には、ダイハツ初の電動パーキングブレーキを操作するスイッチを配置。将来的に他車型にも拡大することも考慮し、スイッチの取り付け構造を最小化すると同時に、縦面に着ける場合にも操作しやすい形状と動きを作り込んだ。広大なガラスエリアでも暑さも日焼けも心配なし!
「G」及び「Gターボ」には、前席周囲のガラスは、スカイフィールトップを含めて「スーパーUV&IR カットガラス」を採用。UV(紫外線)の約99%と、IR(赤外線)の80%以上をカットする。真夏にシェードを開けて走る時も安心だ。二次的効果で役立つ形状
後席腰付近にある平面は、背もたれを倒した時に隅まで使えるようにするためのものだが、降車時にここに手のひらを着くと、シートに残った体重をスムーズに車外に移すことができ、足元の悪い場所でも安心して降車できる。フラットな床面に加え床下収納も充実
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ラゲッジ開口部の下面は710mmと高めだが、後席背もたれを倒した状態でも荷室床面は完全なフラットで、使い勝手とスペース効率に優れる。さらに、床下にも収納スペースを持つ他、仕切り版にも工夫があり、利便性を高めている。ダイハツの新基軸DNGAプラットフォーム
プラットフォームには、お馴染みとなったDNGA骨格を採用。前後に貫くサイドメンバーの断点をなくして衝突荷重を効率良く受け止めると同時に、前輪で発生させた横力を素早く後輪へと伝達。安全性と操縦性能を同時に向上させた。スイングドアへの対応とさらなる強度の向上
主要部分はタントと共用しながら、必要な箇所はタフト専用設計。サイドドアがヒンジ式になったため、サイドシルが真っ直ぐ通せている。低床化のため、床上の骨格も高さ方向が抑えられており、座屈強度は高ハイテン化によって補っている。適材適所でより軽く高強度に
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絞りが深くなるサイドアウターパネルは、一般的に成形性の良い通常鋼板の薄板を使用することが多いが、タフトはここに440MPa級の厚板を採用。これにより外板でも強度と剛性を負担させることで、骨格内部の補強を削減している。スポット溶接を効果的な箇所に集中採用
スポット溶接の打点位置は、寄与率に応じた再配置を実施。剛性向上に効果がある開口部コーナーや骨格のつなぎ目は、ピッチを詰めて打点数を増やす一方、感度の低い部分は打点を省略。コストの上昇を抑えつつ、より剛性の高いボディに仕上げている。基本的な強度はDNGAで確保
上:従来型、下:DNGADNGAプラットフォームの単体捩り剛性は、従来型プラットフォームに対して約30%向上。タフトの場合、「旧型」がないので比較はできないが、キャストアクティバあたりと較べても、確実に質の高さを感じることができる。
最新トレンド技術で力強いエンジン
パワーユニットはタントがフルモデルチェンジした際に刷新された「KF型ver.7」を搭載する。自然吸気仕様はシリンダーヘッドを刷新し、燃焼室をコンパクト化して圧縮比を向上。ターボ仕様は過給圧を高めて最大トルクを8Nm向上させ、より力強い走りを実現する。
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エンジン型式:KF(ターボ)
排気量(㏄):658
種類・気筒数:直列3気筒
弁機構:DOHC12バルブ
ボア×ストローク(㎜):63.0×70.4
圧縮比:9.0
最高出力(kW[㎰]/rpm):47[64]/6400
最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):100[10.2]/3600
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量(ℓ):30
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エンジン型式:KF(自然吸気)
排気量(㏄):658
種類・気筒数:直列3気筒
弁機構:DOHC12バルブ
ボア×ストローク(㎜):63.0×70.4
圧縮比:11.5
最高出力(kW[㎰]/rpm):38[52]/6900
最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):60[6.1]/3600
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量(ℓ):30
究極のポート噴射を実現する秘術
KF型 ver.7の自然吸気仕様は、燃料噴射ノズルを新設計。従来は吸気弁を狙った「ターゲット噴霧」だったが、新型は渦を巻きながらポート全体に拡散させる「スワール噴霧」を採用する。インジェクターは各気筒2本ずつのツインジェクター方式だ。画期的な独自技術による新方式のCVT
21世紀に発明された自動車技術の中でも「白眉」と言えるのが、D-CVT(ターボ仕様に採用)。前後進切り替え用の遊星歯車を増速&駆動力伝達機構にも転用し、レシオカバレッジの拡大と伝達効率向上を同時に実現したシステムだ。地味な存在ながら効果絶大なパーツ
外観デザインの変更に伴い、インタークーラーに冷却風を導くエアガイドを専用設計。タフトはタントより低い位置に開口部を持つため、横方向に広く取って断面積を稼ぎ、逆流防止板を設けるなどの工夫で、最大風量を約30%向上させている。視線のブレを抑えて疲れにくい乗り心地を
特定のピッチング周波数が視線ブレを増大させ、それが疲労につながることから、これを抑制するチューニングを実施。プラットフォーム開発時からこのコンセプトを織り込むことで、フラット感が高く疲れにくい乗り心地を実現している。悪路走破性を高めるグリップサポート制御
悪路用トラクションコントロール制御の「グリップサポート」は、2WD車にも展開。2WDでも発進不能になるケースの多くは一輪スリップによる駆動力抜けであるため、ブレーキLSD効果を強めに使えば、そこそこの悪路でも走れるようになる。タントで初投入された新サスペンション
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サスペンションは基本的な板金部品をタントと共用し、空車アーム角を変えることで、最低地上高アップに対応している。フロントロワリンクの揺動軸を逆ハの字配置とし、ノーズダイブが進むにつれてアンチダイブ力が強まるジオメトリーも、タントと同じだ。性能を落とさずにデザイン性を獲得
フロントバンパーの切り欠きは、タフトのエクステリアデザインを特徴付ける一方、走行風をフェンダー内に導いてしまうため、空力性能に大きな影響を与える。その背反を両立させるため、切り欠き形状やコーナーRのチューニングを繰り返した。ダイハツ車初採用の電動パーキングブレーキは効率的に開発された
ダンパーの右奥に見える縦長の部品が、電動パーキングブレーキのアクチュエータ。モーターの回転をギヤで減速し、ウォームを回転させることでパーキングブレーキケーブルを引く。ブレーキ本体は要所を強化している以外、従来品と変わらない。降雪地帯への対策も抜かりなし
ホイール内に付着した氷雪から電動パーキングブレーキのアクチュエーターを保護するため、バックプレートの前側に板金製のプロテクターが溶接されている。硬く凍結した氷が当たっても曲がらず、確実に氷を落とせる位置と形状を決定するまで、数度の試作を繰り返したという。融雪剤や海水で腐食しないよう、防錆鋼板の上から耐腐食性の高い塗装を行なっている。交通標識の見落とし予防をサポート
前方ステレオカメラで交通標識を認識して、ディスプレイに表示して見逃しの予防をサポートする機能も性能向上。従来は進入禁止のみの対応だったが、一時停止と最高速度も認識するようになり、安全運転を支援する。夜間の歩行者との衝突も回避
夜間走行中に前方の車両だけでなく歩行者も認識し、衝突の危険があると判断した際にはドライバーに警報で注意を喚起する。その後衝突の危険が高まった場合には、弱いブレーキを掛け、さらに危険が高まると強いブレーキで衝突を回避する。白線のない路側も認識して逸脱を抑制
約60㎞/h以上で走行中にクルマが路外へはみ出しそうになった場合には、ブザーうになった場合には、ブザーてドライバーに逸脱の注意を喚起する。タフトでは新機能として、白線のない路側も認識して対応してくれる。渋滞時の停車保持にも対応するACC
全車速追従のアダプティブクルーズコントロール(ACC)も機能向上。電動パーキングブレーキの恩恵により、高速道路の渋滞時などでの停車保持時間が従来の約2秒から約3分に延長された。ロングドライブの疲労を軽減する。対向車や先行車を幻惑せず夜間走行の視認性を向上
「G」及び「Gターボ」には、アダプティブドライビングビームを標準装備。光源を独立制御することで、ハイビーム用に設置された片側7個のLED対向車や先行車の部分だけ照射光をカット。幻惑防止と遠方視界の確保を両立する。細かな配慮が尽くされたスイッチ
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ステアリングホイールのスポークに配置されたスイッチはタントの開発時に新設計されたものだが、「ブラインド操作しにくい」との声に応え、見直しを実施。従来型は円形スイッチが平板だったため、奥を押そうとすると、横にあるスイッチを同時に押しがちだった。そこで、押すべきところを盛り上げ、狙った位置を確実に押せるようにした。文字のサイズも約30%拡大し、視認性も向上させている。
クルマとスマホをつないで安全&便利に
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スマートフォン連携ディスプレイオーディオは、全グレードにオプション設定。ディスプレイのサイズは6.8インチと9インチの2種類があり、どちらもダイハツコネクト&ダイハツWi-Fiがパッケージされている。
多彩な機能をスマホで利用できる
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ユーザーの所有するスマホの通信機能を利用することで、大幅なコストダウンに成功したダイハツコネクト。自車のコンディションや位置情報がスマホで確認できるほか、専用アプリを共有する人の移動を確認できる見守り機能なども用意。緊急時の自動発信機能がない以外は、DCM(専用の車載通信機)を使用するコネクティングサービスにも遜色はない。