これまでの人生において、所有したり試乗したりした国産車の中からベスト3を業界人に選んでいただく本企画。島下泰久さんのベスト国産車は、トヨタ・カローラレビン/スプリンタートレノ(ハチロク)。このクルマに出会ったことが、島下さんを自動車評論家の道へ歩ませる大きなきっかけになったという。
TEXT●島下泰久(SHIMASHITA Yasuhisa)
第3位:トヨタ・ランドクルーザー(2007年-/200系)
3位はトヨタ ランドクルーザー。以前、コレに乗って取材に出掛けた時、「今日は疲れてるから、ちょっと乗ったら運転を替わってもらおう」と思っていたのに、あまりに気持ちよく快適で、気づけば目的地まで4〜5時間そのまま走り続けてしまったということがありました。
悪路走破性を究めれば、ボディ剛性は高まり、サスペンションストロークは長く動きは穏やかになり、エンジンもトルキーに躾けられるのが必然。実はこれって普遍的な「良いクルマの条件」なわけです。
そうして出来上がった、まさにその名の通り極上のクルーザー。なんてことない普段の道をのんびり走らせていても、本物とは何かということを濃密に伝えてくる1台です。
第2位:ホンダNSX(2016年-/NC1型)
2位のNSXは昔のではなく今のです。高回転域まで鋭くパワフルに回る一方、レスポンスを電気モーターで補ったV6ターボエンジンと9速DCTの組み合わせは、完璧と言っていいほどの制御のおかげもあって快感しかないし、前輪のモーターベクタリングでグイグイ曲がるフットワークも爽快。雨の鈴鹿を全開で走りながら、新しい時代の走りを満喫した記憶は今も鮮烈です。
そのフットワークについては違和感を声高に主張する人も少なくなく、特に初期型では荒削りな面があったことも否定はできませんが、一方でそれは新しい時代の運転に適応できるか否かの話だとも、私は考えています。F1などを見ていても、マシンの進化で運転も変わってきてますよね? それと一緒の話です。
その意味ではNSXを操っていると、自分もアップデートされていく。そんな気がするんですよ。今更? いや今こそ真剣に欲しいな、NSX。初期型でいいんで。
第1位:トヨタ・カローラレビン/スプリンタートレノ(1983年-/AE86型)
そして1位はハチロク。こっちは今のじゃなくて昔のAE86です。今のもホント、いいクルマなので迷いましたけどね。
何しろ1983年デビューのクルマですから、現代の基準で見れば遅いし限界も低いけれど、エンジンはとにかくビンビン回るし、パワーが無いぶん思い切り踏める。シャシーだって簡素な分、すべての動きがダイレクトだから意のまま感は強いし、速く走らせるのは実はそんなに簡単なわけじゃありません。
つまり操っていて、未だにとにかく楽しいのがハチロク。このクルマと出会ったからこそ、私は今の仕事をしているようなものです。
実は後年、買い直したハチロクを私は今も所有し続けていて、ちょくちょくミニサーキットに通ったりもしています。ドリキン土屋圭市さん曰く「下町のスーパーカー」。この分だと付き合いは一生続きそうです。
【近況報告】
最新モデルで言えば、やはりGRヤリスでしょう。これでラリーに出ることが出来たりしたら、将来のマイベスト3に必ず入ってくるでしょうね。チャンスよ来い!
【プロフィール】
モータージャーリスト。先進技術からブランド論まで幅広くカバーする。2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。