実用性(積載機能)を徹底重視した、野性的な感覚とフォルムをイメージした50ccレジャーバイク「ホンダ・モトラ」。多彩な道具を積める大型キャリアを装備するなど、アウトドアライフをトコトン楽しむための数々の装備を導入。サブミッションを使えば、パワフルな登坂性能 (登坂力は23度)を発揮。前後には4.0Jワイドホイール&5.40-10インチの極太タイヤを採用するなど、50ccとは思えない堂々たるフォルムに仕上がっている。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
前後の10インチホイールは4.0Jのワイド型。タイヤは「5.40-10」の極太仕様
3速ミッション+ハイ/ローの2段サブミッション(副変速機)付きで23度の登坂力を発揮
50ccスクーターが全盛期を迎える1982年(昭和57年)に登場した「ホンダ モトラ」は、実用性をトコトン重視して設計・開発されたレジャーモデルだ。
モトラのキャッチコピーは、「トラックの積載力」。車名の由来は、モーターサイクル+トラックから。
4.5馬力を発揮するエンジンは、カブ&モンキー系の空冷4ストローク単気筒SOHC 49cc。電装系は6ボルトで点火方式はCDI。
スーパーカブと同じく、左手での操作を省いた自動遠心式クラッチとし、ミッションは3速ロータリーを採用。
モトラのポイントは、上記のミッションに、「ハイ/ロー」の2段サブミッション(副変速機)を装備していること。
なお、サブミッションをロー側にセレクトした状態での登坂能力は、約23度。スキー場の『上級コース』の平均斜度が20度前後、1981年(昭和56年)に発売された「タクト フルマーク」が約16度であったことを考えれば、いかにスゴイ数値であることが理解できるはずだ。
希少性と個性の強さから、絶版後にブレイク!
前後のキャリアは、頑丈なスチールパイプを採用。前後ともにフラットで幅広い形状とし、ここに大型のボックスを装着することも可能。
特にフレームに直付けされたフロントキャリアは、荷物を積んでも安定した操縦性が得られるよう配慮。発売当時は、前後のキャリアに、販売店専用のオプションケースを取り付け、レジャーやビジネスに使用する人も多かった。
リヤサスペンションは、荷物の重さや路面の状態に合せてクッションの強さが微調整でき、しかも調整位置がひと目で分かる油圧調整機構「レベライザー」を装備(右リヤショックの手前に装備されたレバー)。
前後タイヤは安定感のある10インチとし、「5.40-10」サイズの超ワイドなブロックパターンを採用。重い荷物を載せても、安定した走行が楽しめるのがポイントだ。
ボディの前方寄りにセットされた新設計のメインスタンドは、ロック機構付き。左ハンドル手元の解除レバーを引きながらでないとスタンドの操作が出来ない、安心設計となっている。
荷物満載でも、山岳をグイグイと進んで行くことができる、頑強なアウトドアマシンであるモトラだが、50ccスクーターブームの陰に隠れ、その後のマイナーチェンジもなく、ひっそりと生産終了。
現在でもマニアからは絶大な指示を受けているが、発売から38年が経過しているとあって、市場で売買されている個体は極わずか。中古バイク販売サイトのGooBikeでは2台(35万〜45万円)、Yahoo!オークションでは4台(15万円〜)と希少性は高い。
※数値は2020年9月4日調べ
ワイドな10インチの4.0Jホイールは、太足カスタムにも人気!
全長 (m) 1.655
全幅 (m) 0.740
全高 (m) 0.975
軸距 (m) 1.125
乾燥重量 (kg) 76
シート高 (m) 720
フレーム形式 バックボーン
タイヤサイズ (前) 5.40-10-4 PR
(後) 5.40-10-4 PR
エンジン種類 AD05E
冷却方式 空冷
キャスター/トレール (mm) 27°00/44
総排気量 (cm3) 49
内径×行程 (mm) 39.0×41.4
最高出力 (PS/rpm) 4.5/7,500
最大トルク (kg-m/rpm) 0.46/5,500
圧縮比 9.8
始動方式 キック
点火方式 CDI
燃料タンク容量 (L) 4.5
変速機形式 3段新ロータリー×2(サブミッション付)
変速比
1速 3.272
2速 1.823
3速 1.190
(副変速機) 高 1.000
(副変速機) 低 1.459
燃料消費率 (km/l) 100.0(30km/h定地走行テスト値)
緩衝装置 (前) テレスコピック式
(後) スイングアーム式
キャブレター型式 PB59
バッテリー性能 6V-2AH
登坂能力 (tanθ) 0.42(約23°)
当時の発売価格 16万5000円