南米やアジアをはじめとする諸外国にて先行発売され、すでに人気を博しているキックス。走行性能を決定づけるボディやシャシー、モーター駆動により独自の先進的な走りを提供するe-POWERなど、日産が持つ強みと言える各種メカニズムが、さらにブラッシュアップして投入された。こうして、日産らしさと機能・性能が高められた日本仕様のキックスが誕生した。
REPORT●安藤 眞(ANDO Makoto)/編集部
※本稿は2020年7月発売の「日産キックスのすべて」に掲載されたものを転載したものです。
優れた運転視界が安全に貢献
緻密な演出で高級感と視認性が高められた
スピードメーターの文字盤は金属の切削風だが、実際は樹脂パネルに切削痕を印刷したもの。艶のあるクリヤ塗料とつや消しクリヤを重ね塗りし、切削痕風のコンストラストを出している。こうした縞模様のデザインは、実際には存在しない模様を浮き上がらせる「モアレ現象」を生じることがあるため、モアレが発生しないピッチに設定している。
室内空間を最大活用
ノートより全長を190㎜拡大する一方、後席乗員の着座位置は約100㎜前に出し、ラゲッジ床面長900㎜を確保。ちなみにルノー・カングーの実測値でも920㎜だ。全幅の拡大に伴い、ヒジまわりのスペースも広くなっている。
ライバルに対する優位性は後席
たっぷり使えるラゲッジルーム
日産独自の疲れにくいシート
ボディ各部に施された3種類の強化策
バッテリーを保護しつつ剛性が高められた
空力と冷却性能を高めるバンパー形状
高張力鋼板の使用比率を高めて、軽く強く
室内周辺にくまなく施された吸遮音材
静粛対策はエンジン本体にも
補剛部材の追加で支持剛性と静粛性向上
井桁サスペンションメンバーで高剛性に
より力強くなったe-POWER
ノートe-POWERより電気供給能力(エンジン発電出力とバッテリー出力)を向上させ、モーターの最大トルクを4Nm、最高出力を15kW 増強。最高出力の向上幅が大きいため、高速域での追い越し加速に顕著な効果が見られる。
エンジンの始動頻度を大幅に削減
バッテリー残量に応じ発電タイミングを制御
バッテリー残量(SOC=State Of Charge)が少ない場合は早めのタイミングでエンジンを始動。SOCに関わらず、同じ加速応答が得られるよう制御される。EV 走行可能速度は、SOCが低い状態で最大約80㎞/h、高い状態なら約100㎞/hに達する。
モーター出力の向上で加速もアップ
一定速走行時の不要なトルクの微小発生を抑制
低燃費を支える進化した制御技術でチョイ乗り時の燃費も向上
アクセルペダルだけで車速を調整できる
ワンペダルドライブ時には、アクセルオフだけで最大0.15の減速が可能(MTなら2速ダウンのエンジンブレーキ程度)。普通の市街地走行なら、少し強めの減速でも0.2Gぐらいなので、ブレーキペダルの操作が約7割減らせる。
燃費が20%向上するスマートモード
SモードとECOモードではワンペダルドライブ機能が作動し、アクセルオフ時のエネルギー回生量が最大化される。加速応答はNormalモードとSモードは同等。Sモードは回生量が増えるため、エンジン稼働頻度もNormalモードより少ない。
サスまわりも着実に改良が施される
直進安定性と操作性の両立を実現
スッキリとしっかりを両立したステアリングフィール
電動パワーステアリングのアシストモーターには、ブラシレス方式を採用。切り込み時には戻し方向のトルクを発生させ、しっかりした操舵反力をつくっている。ブラシレスモーターは回転子が軽くなるため、操舵時の慣性感も減少する。
微操舵域の応答性を向上
安定した姿勢制御を実現
e-POWER化による加速応答の向上と、SUV化による重心高のアップにより、加速時のスクォート(後輪沈み)増大が予想された。対策仕様では、0.4G 加速時の後輪沈み込み量を4.1㎜抑制し、ガソリン車同等に抑えた。
夜間の視認性が高まったルームミラー
ダイナミックレンジ(明暗差の再現性)は、1.2倍に向上。従来は露出違いの画像2枚を合成していたが、新型は3段階の露出違い画像を合成することで、明部の白飛びや暗部の黒つぶれを抑制し、より目視状態に近付けた。
LED化でランプを小型化しシャープなスタイリングを実現
ヘッドランプはフルLED方式で、内側1灯がハイビーム、外側2灯がロービーム。プロパイロットのカメラで先行車や対向車を検出し、Lo/Hiを自動的に切り替えるハイビームアシスト付きだ。リヤコンビネーションランプもフルLEDで、テールランプは厚みのある導光レンズを採用。上面にドットパターンを配置し、上方にも淡い光が放たれる独特なデザインを採用している。
プロパイロットを含めクラストップの先進安全装備を設定
衝突安全対応も全車標準でフル装備