スバルの新型レヴォーグの先行予約受付がいよいよ8月20日から開始となり、同時にその全貌が明らかとなった。新開発の1.8Lターボエンジンや次世代の先進運転支援機能「アイサイトX」などが投入された、まさに渾身の1台といえる。
TEXT●安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO●SUBARU
全長と全幅をわずかに拡大。日本ジャストサイズはキープ
日本全国のスポーツワゴンユーザーの期待を一身に背負うスバル・レヴォーグが、フルモデルチェンジを発表。8月20日から先行予約を開始した(発表発売は10月15日)。それに先立つ某日、プロトタイプに試乗することができたので、第一報をお届けしよう。
まず現行モデルについておさらいしておこう。初代レヴォーグは14年4月にデビュー。レガシィツーリングワゴンが北米市場に軸足を移して大型化したため、日本専用モデルとして仕立てられた。名前の由来は「レガシィ レヴォリューション ツーリング」。全長4690mm×全幅1780mmと、日本の交通環境でも痛痒なく取り回しができるサイズを持ちながら、前後に身長180cm級が座っても、後席ひざ元空間は約60mm確保できる居住性と、5代目レガシィツーリングワゴン同等の522L(VDA容量)というラゲッジスペースを持つクルマだ。
では、新型でそれがどう変わったかを見ていこう。全長は65mm長くなり、4755mm。全幅は15mm広くなったものの、1795mmとアンダー1800mmを堅守。全高は変わらず1500mm。ホイールベースは20mm長い2670mmとなった。ちなみにこのホイールベースは、インプレッサ系と共通だ。
先進的かつ快適に大幅進化したインテリア
大きくなった寸法は、主に居住性の改善に充当。前後席間の水平距離は+25mm、前2席間の距離も20mm広げられ、前にも横にもゆとりが増えた。成人男性の平均身長が約172cmの日本人には、「これ以上広くなくていい」という寸法だと思う。
ラゲッジの床面長は変わっていないが、ホイールハウス間の寸法は20mm広い1100mmとなり、開口部の横幅も30mm拡大。床下の収納スペースも拡大するなど、ワゴンとしての使い勝手も向上している。
電動式のバックドアには、国内向けスバル車初のハンズフリー機能も装備する。その操作ロジックが独特で、他社のほとんどがバンパー下に足を出し入れすることで作動するのに対し、バックドアのスバルマークに手をかざすことで作動する。スキーから戻ってきたときに、凍結した駐車場でスキーブーツのまま片足立ちになるのはためらわれるが、これなら安心して操作できる(閉めるときはボタン操作が必要)。
SGPプラットフォームに新設計の1.8L直噴ターボエンジンを搭載
続いて、メカニズムはどう変わったのか。まずはボディから見ていこう。
車体の基礎となるプラットフォームは、スバルの新世代商品群を支えるSGP(SUBARU Global Platform)。初出となったインプレッサから4年の歳月が経過しており、XVやフォレスターにも後れを取ってしまったが、むしろ特性の把握が完了したタイミング。採用技術の中身については、後日詳しくお伝えするとして、ボディ骨格を先に溶接するフルインナーフレーム構造や、構造用接着剤の使用範囲拡大、発泡樹脂式リインフォースの採用などによって、ボディの静的捩り剛性を約44%向上させている。
シャシーまわりにも手が入っている。フロントサスはトレッド幅を広げるためにロワーアームを新作しているが、単に長さを伸ばしただけでなく、ナックルとの取り付け構造まで刷新している。狙いはマスオフセット(キングピンオフセット)の縮小で、これが小さいほうが、トルク反力や外乱によるステアリングの乱れが少なくなる。ステアリングのパワーアシストもデュアルピニオン式が採用されるなど、SGPベースと言いながら、多岐に渡る改良が加えられている。
いちばん驚いたのがエンジン。排気量が1.8Lになるということは、以前から公表されていたが、これまで搭載されていたFB16型エンジンの初出が2010年であることを考えると、当然、それをベースにボア×ストロークを調整した程度で出てくると思っていた。ところが、新エンジンはシリンダーブロックから新設計。ボアピッチも113.0mmから98.6mmへと短縮され、エンジン全長は44mm短くなっている。型式名称も刷新され、CB18型を名乗る。
燃料噴射システムが直噴式であるのは当然として、ノズルの向きもサイド噴射からバーチカル噴射方式に変更。軽負荷時にはリーンバーンを行なうことで、最大熱効率は40%を超えているそう。最高出力は130kW(177ps)と、5kW(7ps)の増大にすぎないが、最大トルクは250Nm(25.5kg-m)から300Nm(30.6kg-m)へと20%向上している。
この高トルクを生かすために、トランスミッションも見直しを実施。スバルのトランスミッションといえば、チェーン式CVTの“リニアトロニック”だが、約80%の部品の見直しを行ない、レシオカバレッジを6.3から8.1へと拡大している。高速走行で、より低いエンジン回転数が使えるようになるため、長距離ドライブでの燃費低減が期待できる。
ステレオカメラは新型に。3D高精度地図データを採用した「アイサイトX」も登場
各種安全装備も充実。運転支援システム“アイサイト”は、ステレオカメラの広角化や前側方ミリ波レーダーの追加を行ない、対向車や横断自転車との衝突回避(または軽減)も実現。交差点右折時の対向車や横断歩行者の検出も可能になった。
さらに上級仕様として、3D高精度地図データを利用した“アイサイトX”も新設定。渋滞時のハンズフリー走行や、レーンチェンジ時の操舵アシスト、コーナーの曲率に応じて最適な速度まで減速するレーンキープアシスト付きオートクルーズ機能など、多彩な運転支援機能を装備する。
高剛性ボディやロングストローク化されたサスが走りをよりスポーティに
あらゆる面で改良の手が入っている新型インプレッサ。実際に乗ってみたらどうなのか?
用意されたのは、JARI(日本自動車研究所)の総合試験路に作られた特設コース。停止から約100mを使って80〜90km/hまで加速。60km/hまで減速して左右にレーンチェンジを行ない、30km/hまで減速した後、加速しながら半円を旋回、オフセットされたパイロンでスラロームを行ない、最後にハーシュネス発生路を通るというパターンだ。
まず、比較車両の旧型STI Sportでスタート。最初の5mぐらいはターボラグやトルコンのスリップ感がわずかに感じられるものの、加速そのものは力強く、特に不満は覚えない。レーンチェンジも加速円旋回もスムーズだし、スラロームもそこそこ横Gをかけているのに、スキール音など出る素振りを見せない。ハーシュネスもそんなに悪くはなく、「あれ、これ新型だっけ?」と勘違いしてしまいそうなまとまりの良さだ。
ところが新型に乗り換えてみると、大幅な進化を実感。加速は最初の5mから力強く、車内騒音も静かだ。エンジン回転数が低いだけでなく、風騒音やロードノイズも小さい。
レーンチェンジでは、全てのネジを増し締めしたかのようなダイレクト感を実感。従来型でも違和感を覚えなかったのは、ボディの剛性レベルと操舵応答やロールレートが絶妙にバランスしていたためであり、新型はそれを平行移動したかのように性能アップしている。加速円旋回中にアクセルを開け閉めした際も、保舵力の変動は小さい。
スラロームでも切り返し時の追従性が明らかに違う。「どれくらい違うのか」まで試そうとすると、車内に置いたバッグが吹っ飛びそうなので自重したが、タイトなワインディングで車線幅をめいっぱい使って走るようなシーンでは、けっこう違いを感じるのではないか。一日も早く公道で、しかも自分の走り慣れた道で試せる日が来ることを、願わずにはいられなかった。
グレードは3種類。それぞれに「アイサイトX」搭載車を設定
最後にグレードを紹介しておこう。エンジンが1機種になったこともあり、「GT」、「GT-H」、「STI Sport」の3種類へとスッキリと整理された。さらに、それぞれにアイサイトX搭載車(グレードの後ろにEXが付く)が用意され、それを手に入れるには、35万円のエクストラコストが必要。“X”については後日、詳報をお届けする予定だ。
※編注:正式発表前のため価格は未公表だが、GTが約280万円、GT-Hが約300万円、STI Sportが約335万円(いずれも消費税抜)になりそうだ。
スバル・レヴォーグ STI Sport EX
■ボディサイズ
全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1580kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.5m
燃料タンク容量:63L
■エンジン
型式:CB18
形式:水平対向4気筒
排気量:1795cc
ボア×ストローク:80.6×88.0mm
圧縮比:10.4
最高出力:130kW(177ps)/5200-5600rpm
最大トルク:300Nm(30.6kg-m)/1600-3600rpm
燃料供給方式:筒内直接噴射
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
■駆動系
トランスミッション:CVT
駆動方式:フロントエンジン+オールホイールドライブ
■シャシー系
サスペンション形式:FマクファーソンストラットRダブルウィッシュボーン
ブレーキ:FベンチレーテッドディスクRベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:225/45R18
■燃費
WLTCモード:13.6km/L(社内測定値)
JC08モード:16.5km/L(社内測定値)
※数値はすべてプロトタイプのもの。