「なんでこんないいクルマが日本で普通に買えないんだ!?」
そのブランドのファンや関係者ならずとも、そう憤慨したくなるような日本未導入モデルは、グローバル化がこれだけ進んだ今なお、数え切れないほど存在する。
そんな、日本市場でも売れるorクルマ好きに喜ばれそうなのになぜか日本では正規販売されていないクルマの魅力を紹介し、メーカーに日本導入のラブコールを送る当企画、二台目はホンダの高級車ブランド・アキュラで展開するミッドサイズクロスオーバーSUV「RDX」を紹介したい。
TEXT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●本田技研工業
ホンダはNSXやレジェンド(RL、RLX)、過去にはMDXなど、北米ではアキュラブランドで販売するモデルを、日本ではHマークに代えて販売している。
だがRDXに関しては、2006年の初代デビューより14年が経過し、2018年5月には現行モデルの三代目へと進化しているが、日本で正規販売されたことは一度もない。特に初代のデビュー当時は、高性能なターボエンジンとトルクベクタリングAWDを搭載するホットなミッドサイズ高級SUVなど、他に存在していなかったにも関わらず、だ。
なお、初代は243psと353Nmを発するK23A型2.3L直列4気筒DOHC i-VTECターボエンジンに5速AT、前後輪のみならず後輪左右の駆動力配分も電子制御する「SH-AWD」を搭載。2012年デビューの二代目は277psと340Nm(2016年モデル以降は283psと342Nm)を発するJ35Y型3.5L V型6気筒SOHC i-VTECに6速AT、リアルタイムAWD(FF車も設定あり)の組み合わせとなり、高級車としての性格が強まった。
だが現行三代目は、シビックタイプRよりデチューンされた276ps&380Nm仕様のK20C型2.0L直列4気筒DOHC i-VTECターボエンジンに10速AT、SH-AWDを採用(FF車も設定あり)。さらに、専用の内外装と255/40R20 101Vオールシーズンタイヤ(その他は235/55R19 101H)を備えるスポーティモデル「A-Spec」を、アキュラのSUVとして初めて設定した。
また、初代と二代目はCR-Vとプラットフォームを共有していたが、現行モデルは超高張力鋼板と構造用接着剤、中空構造のピラーに注入してノイズを低減する「アコースティックスプレーフォーム」を多用した、新開発のアキュラ専用プラットフォームを採用。軽量・高剛性・低重心・低騒音を高次元で両立したことで、ホットな高級SUVとしての性格を初代以上に強めている。
だが後席と荷室の空間は充分に広く、後席を倒してもほぼフラットかつ奥行きの深いラゲッジスペースが得られるのは、パッケージングが巧みなホンダ車らしいと言えるだろう。
このアキュラRDX、北米では標準仕様のFF車で約400万円、最も高価な「アドバンス」のAWD車で約507万円のプライスタグを提げている。
もしもこの価格帯のまま日本に導入されれば、輸入車は全く寄せ付けず、車格・ボディサイズ・価格帯が近いレクサスNXとマツダCX-8に対しては運動性能で上回るため、両者にとって大きな脅威になる可能性は高い。
裏を返せば、現行CR-Vに対し強気な価格設定をしたせいで、直近では月間販売台数が1000台にも満たない状況を招いたホンダには、同じ轍を踏む愚を何としても避けてもらいたい。
後発のドイツ勢よりも遥かにリーズナブルな価格でホットな走りを実現した、この希有なキャラクターを持つホンダの高級ミッドサイズSUVを、ぜひその魅力を損なわない形で日本に導入してほしい。
■アキュラRDX SH-AWD A-Spec(F-AWD)
全長×全幅×全高:4745×1900×1669mm
ホイールベース:2751mm
車両重量:1821kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1996cc
最高出力:203kW(276ps)/6500rpm
最大トルク:380Nm/1600-4500rpm
トランスミッション:10速AT
サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/マルチリンク
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ 前後:255/40R20 101V
乗車定員:5名
車両価格:4万6000ドル(約487万円)