新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2020年のF1開催カレンダーは大幅なスケジュールと開催地の変更を強いられている。7月5日に第1戦の決勝レースをオーストリアのレッドブルリンクで行なうと、翌週にも同じサーキットでレースを行なった。短期間で効率良く(物や人が移動しないで済む)レースを消化するためである。
TEXT◎世良耕太(SERA Kota)PHOTO◎Honda/Ferrari/Renault
同じサーキットで開催したのに、グランプリの名称は異なる。第1戦のオーストリアGPはいつもどおりだが、第2戦はシュタイアーマルクGPの名称で行なわれた。第4戦と第5戦はどちらもイギリスのシルバーストン・サーキットで開催されるが、第4戦はイギリスGPなのに、第5戦は70周年記念GPと呼ぶ。F1開催70周年を記念した名称だ。なぜ、別名称にする?
F1は一国一開催を原則とするからだ。第1戦でオーストリアGPの名称を使ってしまったので、同じサーキットで開催する第2戦は苦し紛れで名前だけ変えたのだ。シュタイアーマルクはレッドブルリンクが位置する州の名称である。
・7月3日~5日:Round 1 オーストリアGP(オーストリア レッドブルリング)
・7月10日~12日:Round 2 シュタイヤーマルクGP(オーストリア レッドブルリング)
・7月17日~19日:Round 3 ハンガリーGP(ハンガリー ハンガロリンク)
・7月31日~8月2日:Round 4 イギリスGP(イギリス シルバーストン)
第9戦トスカーナGP(9月13日決勝)も同様。第8戦にイタリアGPが予定されているため、同じイタリア国内で開催する都合から別の名称としたのだ。イタリアGPは例年どおり、ミラノ近郊のモンツァで9月の第1週(9月6日決勝)に開催される。トスカーナGPの開催地はフィレンツェ近郊のムジェロ。そのムジェロが位置する州の名前を拝借した格好。モンツァをしのぐといわれる超高速コースのムジェロでのF1開催は初めてだ。
第13戦エミリア・ロマーニャGP(11月1日決勝)もイタリアだ。つまり、20年のF1はイタリアで3回開催される。エミリア・ロマーニャGPはイモラでの開催で、かつて(2006年まで開催)はサンマリノGPの名称で行なわれていた。歴史の長いモンツァがイタリアGPの名称を使っていたためで、近くにある(といっても100kmほど離れているが)サンマリノ共和国の名称を拝借していたのである。エミリア・ロマーニャもトスカーナと同様、サーキット所在地の州の名称だ。ムジェロと同様、フェラーリの本拠地モデナに近い。
・8月7日~9日:Round 5 70周年記念GP(イギリス シルバーストン)
・8月14日~16日:Round 6 スペインGP(スペイン カタルーニャサーキット)
・8月28日~30日:Round 7 ベルギーGP(ベルギー スパフランコルシャン)
・9月4日~6日:Round 8 イタリアGP(イタリア モンツァ)
・9月11日~13日:Round 9 トスカーナGP(イタリア ムジェロ)
・9月25日~27日:Round 10 ロシアGP(ロシア ソチ)
・10月9~11日:Round11 アイフェルGP(ドイツ ニュルブルクリンク)
・10月23~25日:Round12 ポルトガルGP(ポルトガル・ポルティマオ)
・10月31日~11月1日:Round13 エミリア・ロマーニャGP(イタリア・イモラ)
2020年にドイツで行なう唯一のグランプリだが、10月11日にニュルブルクリンクで決勝レースが行なわれる第11戦の名称は、アイフェルGPと呼ぶ。サーキットがある山地の名称だ。かつて、ドイツで年に2回F1を開催していた際は、ホッケンハイムで行なうグランプリをドイツGPとし、ニュルブルクリンクで行なうグランプリをヨーロッパGPと呼んで区別していた。すでにスペインGPがバルセロナ・カタルーニャで行なわれていたので、バレンシアがカレンダーに追加された際(2008年)際にもヨーロッパGPの名称が用いられた。
2020年は年に2回以上グランプリを開催するヨーロッパの国が多発している(オーストリア、イギリス、イタリア)ので、ヨーロッパGPは使い回しが利かない。そこで、州や地域の名称を持ち出すことにしたのだろう。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開催カレンダーも開催地も名称も、異例づくしになっている。