アウディ・オールロードクワトロは、1999年登場(日本デビューは2001年)のA6アバントをベースにしたモデルが初代である。いわゆるC5系のA6がベースだった。今回試乗したオールロードクワトロは、A4(B9系)アバントをベースとしたモデルである。SUVほどごつくなくて、それでいて高い走破性能も都会的なルックスも持ち合わせるモデルだ。SUVが好みではない筆者のようなタイプにはなかなかアピールするクルマである。
TEXT◎鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi)
オールロードクワトロで個人的に思い出すのは、初代モデルだ。F1速報誌の編集長をしていた時代、たぶん2000年のたぶんF1サンマリノGPとかベルギーGPの取材に出かけたときに、街中に駐車してあったオールロードクワトロを見て、「うわぁ、カッコいいな、これ」と感じた記憶がある。
1980年代のVWゴルフⅡにあった「ゴルフカントリー」もカッコよかったが、アウディ・オールロードクワトロは、都会的で、それでいて「クワトロ」だからどこでも走れるそ実力を秘めた佇まいにちょっと憧れたものだ。
今回、最新のアウディA4オールロードクワトロをお借りしたのは、そういう背景もある。お借りする直前に乗っていたのはF30型BMW3シリーズ。A4オールロードクワトロに乗り換えてすぐに感じるのは、インテリアの上質感だ。世代的にはそんなに違わない(F30型3シリーズは2012年デビュー、B9型A4は2015年デビュー)はずなのに、明らかにアウディの方が上質(というか上品?)だ。アウディは、インパネ、メーターもハイテク感満載である。
翌朝、カメラマンとその機材を満載して東名高速を一路西へ向かう。目的地は愛知県長久手のトヨタ博物館である。往復ほぼ700kmを1日で走るドライブだ。
高速道路に乗った途端に、思い出した。「ん? 最近、こんな視点の高さのクルマに乗ったな」と。そうだ、これはスバル・レガシィアウトバックと同じ高さだ!
ワゴンボディの車高を少し上げてフェンダーアーチに濃色のクラッディングを装着するスタイルはオールロードクワトロとアウトバックで共通する。ボディサイズは
A4オールロードクワトロ
全長×全幅×全高:4750mm×1840mm×1490mm ホイールベース:2820mm
レガシィアウトバック
全長×全幅×全高:4820mm×1840mm×1605mm ホイールベース:2745mm
最低地上高は170mm(オールロードクワトロ)と200mm(アウトバック)である。A4の場合はA4アバントと比べて最低地上高が50mm高くなっている。
こうして比べると、アウトバックの方がだいぶ背が高く、アウトドアのムードが強い。オールロードクワトロの方が都会的(!)に見える。
このパッケージは、SUVやクロスオーバーほどじゃないけれど、普通のクルマと違うのがほしい、というニーズにマッチする。高速道路を100km/h~120km/hくらいで巡航するならSUVよりもこっちの方がいい。悪路や雪道はAWDと高い地上高で安心だ、というのも見た目で伝わってくる。
空いた東名から新東名へ入ると制限速度が100km/hから120km/hへと上がる区間がある。オールロードクワトロが搭載するEA888型2.0ℓ直4直噴ターボは、252ps/370Nmというハイスペックなエンジンだ。それぞれメーター読みで
100km/h巡航:1500rpm
110km/h巡航:1680rpm
120km/h巡航:1750rpm
だった。余裕綽々である。
アウトバックの場合は、100km/h巡航1700rpmだった。ただし、自然吸気2.5ℓ水平対向エンジンのアウトバックの方が大らかゆったり(大味とも言えるけれど)で、オールロードクワトロの2.0ℓ直噴ターボの方が粒が揃って精密にエンジンが回っている印象だ。どちらも、それぞれ個性があっていい。
ビシッと走った、と書いたが、アウディA4オールロードクワトロは、その名の通りアウディ自慢のAWDシステム、クワトロを搭載している。ヨンクと言えばアウディかスバルだという人も多いだろう。オールロードクワトロが搭載するクワトロは「quattro ultra」というシステムだ。これは湿式多板式のクラッチを用いるカップリングユニットで、通常走行時はFWDとして、後輪への駆動を完全に切り離すことができるシステムだ。つまり、普通に走っていればFFなのである。もちろん、燃費対策だ。復路は、豪雨に見舞われたこともあったが、そういうときは心理的にも「このクルマはクワトロだから大丈夫」という心強さがある。
冒頭にも書いたが、SUV/クロスオーバーばやりだが、「アウトドアを楽しみたい」「ちょっと最低地上高が高くて悪路や雪道で頼りになるクルマがほしい」という人で「SUVはちょっとごつすぎて苦手」という人にピッタリだ。アウディでいえばSUVのQ5の全高が1635mm、オールロードクワトロが1490mm、最低地上高はQ5が185mmに対してオールロードクワトロが170mmだ。SUVとオールロードクワトロやアウトバック(意外なことにこの2台のほかにはVWパサートとゴルフのオールトラックくらいしかない)、どちらが使いやすいか、といえば、(SUVがあまり好きではない筆者とすれば)、それは後者だと思う。オールロードクワトロ、ちょっとプライタグが重い(670万円)けれど、その価値はあり、だと感じた。
アウディA4 オールロードクワトロ
全長×全幅×全高:4750mm×1840mm×1490mm
ホイールベース:2820mm
車重:1680kg
サスペンション:F&Rウィッシュボーン式
エンジン形式:直列4気筒DOHC
エンジン型式:CYR(EA888型)
排気量:1984cc
ボア×ストローク:82.5mm×92.8mm
圧縮比:9.6
最高出力:252ps(185kW)/5000-6000rpm
最大トルク:370Nm/1600-4500rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:DI
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:58ℓ
トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
駆動方式:AWD
JC08モード燃費:14.6km/ℓ
車両価格○670万円