Cerence Inc.(セレンス)は、音声対応型 AI を活用した車内でのセキュアなコンタクトレス決済エクスペリエンスを提供する新製品「Cerence Pay」を発表した。
Cerence Payは、ドライバーのニーズを予測し、声紋や顔の生体認証を通じて購入意向の確認から認証、そして支払い処理までのシームレスな決済トランザクションを提供するように設計されている。セレンスは現在アウディと提携し、Cerence Payを今後のアウディ・ブランド車のヘッドユニットに搭載する共同プロジェクトを実施している。
車載音声アシスタントの需要が急増するにつれて、駐車、給油、電気自動車の充電、レストランの予約、ファストフード店の検索など、移動中に発生する日常的なニーズを満たす音声によるコンタクトレス決済の必要性も高まっている。コンタクトレス決済は既に増加傾向にあったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、この決済方法への要求がさらに高まっている。実際に、Visa社の最近の発表によると、ヨーロッパでのすべてのVisaカードトランザクションの70%以上は、コンタクトレス決済が可能なクレジットカードまたはモバイルデバイスで行われている。
セレンスのアプリケーションズビジネス部門バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーであるニルス・レンケ氏(Nils Lenke)は、次のように述べている。「コンタクトレス決済は、食料品店、コーヒーショップ、その他の小売店の人々にとって日常的な出来事になっていますが、弊社は安全性と利便性が最も重要とされる車での移動中に、店舗と同じような素晴らしい決済エクスペリエンスを提供したいと考えています。ドライバーと乗客へのメリットのほかに、OEMはCerence Payを採用することで、声紋や顔の生体認証、そして車のヘッドユニットとコンパニオンアプリとのシームレスな統合を通じて安全でセキュアなトランザクションを実現し、優れた直感的な決済エクスペリエンスを提供することが可
能になります」
アウディのコネクテッドカー&インフォテインメント開発部門のエグゼクティブディレクターであるアンドレア・ライヒ氏(Andrea Reich)は、次のように述べている。「弊社は、運転中のドライバーのあらゆるニーズを満たすインテリジェントなコンパニオンを中心とした自然で直感的な車内エクスペリエンスの構築に着手しました。CerencePayは、これに関連したモジュールであり、セキュアな音声認識決済を通じて、よりシンプルで安全なドライブエクスペリエンスを実現する、今日の世界に不可欠な機能です」
世界的なCerencePayパートナーエコシステムの構築
車内決済のニーズに応えるために、セレンスはパートナーエコシステムを長期的に拡大していく。Cerence Payは、自動車メーカーが採用している決済サービスパートナーやコンパニオンアプリと容易に統合できる。これにより、自動車メーカーは、より柔軟なプラットフォーム上にドライバーの特定のニーズにあった独自のエクスペリエンスを構築することが可能となり、より便利でセキュアな決済オプションを、必要とされる場面でパーソナライズされたコンテンツとともに提供することができる。また、自動車メーカーとコンテンツプロバイダーに新しいトランザクションベースの収益源を提供し、今日のデジタル経済で競争力を維持する。
CerencePayの初期参加パートナーは、以下の通り
◆ Arrive社:AIを活用して目的地に最適な駐車場を予測し提案する、単一のシームレスなモビリティエクスペリエンスを提供している。
◆ Parkopedia社:何百万人ものドライバーや組織が駐車場の検索と決済に活用している世界有数の駐車サービスプロバイダーで、89カ国15,000の都市にある7,000万以上の駐車スペースで、ドライバーとコネクテッドカーに新しい高度な駐車エクスペリエンスを提供している。
◆ VISA:デジタルペイメントの世界的なリーダー。Visaの先進的なグローバル処理ネットワークであるVisaNetは、世界中で安全で信頼性の高い決済を提供し、1秒間に65,000件以上のトランザクションメッセージを処理することができる。Visaの中欧市場には、ドイツ、オーストリア、スイス、オランダが含まれる。
Visa中央ヨーロッパMS&A部門代表であるユルゲン・シューベル氏(Jürgen Schübel)は、次のように述べている。「Visaは、世界中の消費者によりシームレスなコマース体験を提供することを目指しており、IoT(モノのインターネット)の一つである車内決済を、非常に大きな機会としてとらえています。そのため、中欧市場を対象にセレンスと仕事ができることを楽しみにしています。消費者にとって、車内での支払いは、店頭でデビットカードやクレジットカードを使うのと同じようにシンプルなものになりますが、Visaのトークナイゼーション(暗号化)技術のおかげで同じくらいに安全な決済方法です。これにより、便利な移動手段のまったく新しい世界が開かれ、次世代の車内決済への道が開かれることになります」
Arrive社の上級副社長であるエド・ルイス氏(Ed Lewis)は、次のように述べている。「Arriveは、2017年に音声対応の駐車サービスを開発し、AIへの投資によって、ユーザーエクスペリエンスを一変させました。Arriveのリコメンデーションエンジン搭載の車載アシスタントは、駐車サービスを直感的かつ簡単にして、ユーザーが運転に集中できるようにします。セレンスは音声AIの市場リーダーであり、世界の主要自動車メーカーの信頼されるパートナーです。CerencePayは、何億人ものユーザーに利益をもたらし、駐車関連サービスは最も利用されるサービスの一つになると予測しています」
Parkopedia社の COO(最高執行責任者)であるハンス・プフォゲル氏(Hans Puvogel)は、今回の発表について次のようにコメントしている。「Parkopediaは、マルチベンダーの駐車料金決済ソリューションを、世界中の自動車メーカーや地図制作会社に提供しているリーディングプロバイダーです。弊社今回の発表はセレンスのクラウドサービスとの統合において長年にわたる取引関係があり、その延長として、セレンスに駐車料金決済のプラットフォームを提供しています。世界中のドライバーに音声アシスタントを利用したシームレスな決済エクスペリエンスを提供できることを光栄に思います」
魅力的なユーザーエクスペリエンス、より安全で楽しい旅を実現
Cerence Payは、車内決済だけではなくコンテキストを意識した商取引を提供し、関連性があり対話しやすいトランザクションを可能にする。最新のAIベースのテクノロジーにより、パーソナライズされた決済エクスペリエンスでは、クレジットカードを探したりヘッドユニットに難しい情報を入力したりする必要がなくなり、ユーザーは欲しいものを手に入れ運転に集中することができる。さらに、Cerence Payは音声と顔の生体認証を活用して、安全な認証と決済を行う。以下はその利用シーンの一例。
・給油:通勤途中で給油する必要があるドライバーは、音声アシスタントに最寄りのガソリンスタンドへの案内を尋ねる。ガソリンスタンドに到着すると、ドライバーはポンプを選択し、車から直接料金を支払うことができる。またドライバーは、コンビニエンスストアのコーヒーや簡単な洗車を追加することも可能。
・食事とドライブスルー:仕事の後、ドライバーは夕食をどうするか考えている。音声アシスタントは関連する選択肢を提案し、必要に応じてレストランの予約を取る。またドライバーは、料理を事前に注文して支払い、受け取って家に持ち帰ることもできる。
・駐車:ドライバーが夕食のために繁華街に出かけた際、音声アシスタントは事前に路上駐車場がないことを知らせ、目的地から徒歩圏内に利用可能な立体駐車場を探す。空きを見つけたら、音声アシスタントは駐車区画の番号をドライバーに示し、支払処理を開始する。
・通行料金:夕食から家に帰る途中で、ドライバーは有料道路を使うルートを通り、システムを利用して支払いを許可する。