オットーサイクルは火花点火が膨張行程のトリガー。あの手この手で高効率運転を狙う。
火花点火というガソリンエンジン特有のメカニズムを支える昇圧装置と点火プラグからなるシステムは、登場以来基本的な構成はほとんど変わりがない。安定性や耐久性の点で現在のものは完成の域に達しており、当面革新的な変化は予想されていない。
火花を発生する電極を燃焼室内に多数配置し、急速燃焼を促進して高負荷時の出力上昇を阻むノッキングを抑制するというアイデアの進展が一部で行なわれており、行方が注目される。ただし、完成されたものはコストを含めてなかなか変えづらいもので、画期的な効果が確実に検証される必要はあるだろう。
一見変化が見られない点火プラグだが、イリジウム電極等による長寿命化と同時に、「長く・細く」という動きが現れてきた。可変機構の搭載によるシリンダーヘッドの大型化と、直噴インジェクターとプラグの位置取り争いがその要因。高電圧をロスなく漏れなく電極に導く地道な努力が続く。
従来分離していた昇圧コイルとプラグキャップを一体化したダイレクトイグニッションは、地味ながら電装系の大きな福音として急速に普及。プラグコードを含めて一気に小型・集約化され、省コストと省スペースに貢献した。
点火プラグの複数配置で燃焼を安定・急速化させ性能を高める手法は、日産Zエンジン、ホンダ・i-DSI、フィアット・ツインスパーク等、採用例は過去にも多い。現在進められている試みはふたつ以上の多点点火で、ノッキングをほとんど排除できるという実験結果の報告もある。
1サイクルで複数回点火するマルチスパーク。混合気の休息燃焼を促し高効率運転の助けとする技術である。かつてのダイムラーM276型V6エンジンが採用、その際は1/1000秒以内に最大4回の火を飛ばし燃焼時間を約4%短縮するとしていた。日本勢ではダイハツの軽自動車用KF型が初採用。2回点火/サイクルで、シリンダー内での燃焼速度を高めることができた。EGR量を増やしノッキングを抑制している。