2020年2月に10年ぶりの世代交代を果たし、車名も欧州市場向けと共通化された、トヨタのコンパクトカー「ヤリス」。その最上級グレード「ハイブリッドZ」に、一般道で約100km、高速道路で約180km試乗し、燃費を計測しつつその実力をチェックした。なお、テスト時の天気は曇りのち晴れ、外気温は25~30℃。常にドライブモードはエコ、エアコンは23℃で走行した。
またテスト車両には、
・185/55R16タイヤ&16×6Jアルミホイール(8万2500円)
・カラーヘッドアップディスプレイ(4万4000円)
・ブラインドスポットモニター+リヤクロストラフィックオートブレーキ+インテリジェントクリアランスソナー(10万100円)
・トヨタチームメイトアドバンストパーク(7万7000円)
・合成皮革+ツイード調ファブリック(1万1000円)
・アクセサリーコンセント(AC100V・1500W/1個。4万4000円)
・T-Connectナビキット(11万円)
など、合計66万5500円分のオプションが装着されており、車両本体価格229万5000円と合わせて296万500円の仕様となっていた。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、トヨタ自動車
しかしながらトヨタは、三代目ヴィッツの10年に及ぶモデルライフの中で、2014年と2017年の二度にわたり大幅マイナーチェンジを実施。その都度エクステリアデザインと走りは大きく進化したが、基本設計の古さと不味さ(特に居住性)は隠しきれず。2020年2月にヴィッツ改め新型四代目ヤリスへバトンタッチした。
この新型ヤリスでは新世代のGA-Bプラットフォームが採用されることが車両の世界初公開前に発表されていただけに、軽量・高剛性・低重心になるのはもちろん、三代目ヴィッツの弱点だった居住性や積載能力も少なからず改善されるものと、大いに期待していた。
しかしながら、いざ四代目ヤリスが公開されると…写真を見る限り、内外装のデザインは三代目前期型とは比較にならないほど前衛的かつ質感の高いものに進化していたが、後席も荷室も見るからに狭そうだ。なお、ボディサイズは全長が5mm短くなる一方、ホイールベースは40mm拡大されている。
では、これまで以上に最優先で設計された運転席まわりはどうか。近年のトヨタ車のインパネは、元来得意とする質感の高さに加え、機能的かつアバンギャルドな造形も備えているが、新型ヤリスではそれをBセグメントのコンパクトカーでも実現したことに大きな価値がある。
特に最上級の「Z」系グレードはインパネアッパーがソフトパッドになるうえ、テスト車両はオプションの合成皮革+ツイード調ファブリック内装も選択されていたたため、下手なCセグメントモデルよりも高い質感を備えていた…と高く評価しても、決して過言ではないだろう。
三代目ヴィッツはデザインも質感も平凡なうえ、マイナーチェンジでADASが追加される度にスイッチが四方八方に散逸していたが、それらの問題がようやく解決されたのは喜ばしい限りだ。
さて、実際に走ってみるとどうか。まず駐車場を出る瞬間に気付かされたのは重心の低さ、そしてボディ・シャシー剛性の高さだ。その後ゆっくりと市街地を走ってみると、サスペンションのフリクションが少なく、路面の細かな凹凸をしなやかにいなしてくれるため、突き上げも意図せぬ視線の移動も少ない。
さらに静粛性が極めて高く、良路から粗粒路に移行した際もロードノイズやフロアの振動が急激に増えることはないため、いたって快適だ。そして、三代目ヴィッツの16インチタイヤ装着車は最小回転半径が5.6mと、15インチ車の4.8mに対して急激に悪化していたが、新型ヤリスは16インチ車で5.1mと、15インチ車の4.8mに対し悪化の幅は抑えられているため、小回り性能は劇的に改善された。
では電動車、またコンパクトカーの多くが苦手としている高速道路はどうか。成田空港から横浜市内に向けて、東関東自動車道や首都高速道路湾岸線といった、流れの速い道を中心に走行したが、燃費の落ち込みは思いの外少なく、約100kmを走行した時点で27.5km/Lを記録した。
また、大きな凹凸でこそ突き上げを体感しやすいものの尖った感触はなく、決して不快ではない。そして速度域が上がってもロードノイズや風切り音は少なく、直進安定性も高いため、街乗りと同じく快適に過ごすことができた。
ヤリスハイブリッドの燃料タンク容量は36Lで、フィットハイブリッドは40L。WLTCモード燃費の通りに走れた場合の航続距離は、前者が1173.6km、後者が1088kmということになる。果たしてフィットハイブリッドの実際の燃費はどうか、それは機会を得て可能な限り同条件で試してみたいが、ともあれフィットほどの後席居住性と積載能力を求めないのであれば、このヤリスハイブリッドを選んでも後悔することはないだろう。
■トヨタ・ヤリスハイブリッドZ(FF)*16インチ仕様
全長×全幅×全高:3940×1695×1500mm
ホイールベース:2550mm
車両重量:1100kg
エンジン形式:直列3気筒DOHC
総排気量:1490cc
エンジン最高出力:67kW(91ps)/5500rpm
エンジン最大トルク:120Nm/3800-4800rpm
モーター最高出力:59kW(80ps)
モーター最大トルク:141Nm
トランスミッション:--
サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ:185/55R16
乗車定員:5名
WLTCモード燃費:32.6km/L
市街地モード燃費:32.7km/L
郊外モード燃費:35.3km/L
高速道路モード燃費:30.8km/L
車両価格:229万5000円+8万2500円