マツダ3のエンジンと言えば、革新的燃焼技術SPCCIを採用したSKYACTIV-Xの搭載が話題を呼んだ。しかし、大音安弘さんが選んだのは、SKYACTIV-G1.5搭載車。スペックの数字に突出したものはないが、「FFのロードスター」と称したくなるほどの楽しさがあるという。
TEXT●大音安弘(OTO Yasuhiro)
1台目:マツダ3 ファストバック15Sツーリング【エンジン:P5-VPS|SKYACTIV-G1.5】
充実のエンジンラインアップの誇るマツダ3で、私がドハマりしたのが、最もベーシックな「SKYACTIV-G1.5」だ。
正直、スペックは平凡極まる。しかし、エンジンを使い切る楽しさがあるのだ。エンジンのレスポンスは良く、吹け上がりも抜群。エキゾーストノートも結構心地よい。他のマツダ3と比べて、鼻先も軽いので、コーナリングも軽快だ。このスペック故、タイトなワインディングでは、6ATだとマニュアルモードが必須。なんで1.5Lモデルだけ、パドルシフトレスなの?と強く思うが、6MTも用意されているので、そこは目を瞑る(笑)。しかも、エンジンをガンガン回しても、意外と燃費も良いのも美徳だ。
ドライブの後、ふと、あのクルマに似ていると思った。それはロードスター。軽快な身のこなし、使いきれるエンジンの楽しさは共通。実際、エンジンもチューンは異なるが、同じもの。個人的にはFFのロードスターと思っている。
2台目:BMW M240iクーペ【エンジン:B58B30A】
クルマ好きにグッとくるエンジンといえば、やはりBMWのシルキー6は外せない。
BMWの新生代直列エンジンは、モジュラー化により3気筒、4気筒、そして6気筒の3つで基本設計を共有するが、6気筒は伝統の味をしっかりと受け継ぐ。始動と共に重厚なエキゾーストノートを響かせるストレート6は、日常域での回転フィールは極めてスムースで上品だ。しかし、鞭を入れた瞬間、シャープな吹けあがりと共に、強烈な加速がドライバーを襲う。まるでジキルとハイドのような2面性を持つエンジンなのだ。それもそのはずで、たった1520rpmから最大トルク500Nmを発揮するのだから...。
同じ6気筒なら、Mシリーズ。しかも同じボディで、さらにMTも選べるM2が良いのではという意見もあるかもしれない。でもストレート6ならではの滑らかな味わい、何よりも魔性を秘めているのは、M240iのB58B30Aだと思う。クルマ自体の味も、一世代古いFRの2シリーズは、かつてのBMWらしさが強い。今のうちに乗っておきたいBMWの1台だ。
3台目:ジープ・ラングラー ルビコン【エンジン:G】
正直、SUVはあまり興味ないのだが、ルビコンはめちゃめちゃ楽しかった。これは別にオフロードを走ったわけではなく、公道での話だ。
ラングラーのクロカンに相応しい堅牢なボディを支えるのは、2.0Lの直列4気筒DOHCターボと3.6のV6DOHCのふたつ。4気筒の評価も高いが、やはりアメ車感たっぷりのV6「G」エンジンが良い。600㏄もあるシリンダーは、やや大味感もあるが、ショートストロークなので、意外にもレスポンスは悪くない。ただルビコンは、舗装路には不利なマッド&テレインタイヤを履くため、飛ばしても楽しくないどころか、疲れる。だからこそ、ゆとりのあるV6が活きてくるのだ。クレバーな4気筒よりも冒険心を駆り立てくれるV6+オフロードタイヤの方が、アメ車らしい。
随分、中身は現代的になった新型だが、今なお、古き良きアメリカを感じさせる貴重な一台だと思う。
【近況報告】
在宅ワークの今、気分転換に退役を考えていた愛車の修理を自ら開始。メカに詳しい友達に思いっきり頼りながら(笑)、ネットで格安補修部品を探し、簡単な作業に挑戦。クルマいじりを楽しんでます♪
【プロフィール】
1980年生まれ、埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在は自動車ライターとして、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材する。自動車の「今」を分かりやすく伝えられように心がける。これまでの愛車は、国産・輸入車含めて全てMTのみというMT好き。
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