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トヨタ・ヤリスZ 「今度のヤリスはハイブリッドもガソリン+CVTも相当に出来がいい」燃費はハイブリッドに負けるが走りはガソリンもいい!


トヨタ新型ヤリスの出来は相当いい。ハイブリッド/コンベのガソリン(1.5ℓ+ギヤ付きCVT)の両モデルを試したモータリングライターの世良耕太氏は、ヤリスの走りに感銘を受けた。もちろん、それは燃費がいい、というだけではないようだ。


TEXT◎世良耕太(SERA Kota)

ラバーバンドフィールなんて、もうどこにもない

外装色は思案メタリック(クレアトープ)×ブラックの2トーン。

 トヨタ・ヤリス・ハイブリッドに試乗してから2週間のインターバルを置いて、エンジン単独仕様のヤリスZに乗った。ハイブリッド仕様、エンジン単独仕様とも新開発の1.5ℓ直列3気筒自然吸気エンジンを搭載することに変わりないが、それぞれ専用に設計されており、ハイブリッド仕様はM15A-FXE、エンジン単独仕様はM15A-FKSの型式名称が与えられている。

 M15A-FXEとM15A-FKSの違いはポート噴射(FXE)と直噴(FKS)など多岐に渡るが、FKSはバランスシャフトを採用しているのも相違点。ハイブリッド仕様はアイドリングストップ装置が付いているが、エンジン単独仕様はアイドリングストップ装置が付いていない。ハイブリッド仕様の場合は、「POWER」ボタンを押すとシステムが起動するのみでエンジンは基本的に始動しない。いっぽう、エンジン単独仕様は「ENGINE START STOP」ボタンを押すと即座にエンジンが始動する。交差点などで停止した際も、エンジンは停止しない。




 身体のセンサーを研ぎ澄ませていると、ステアリングホイールから伝わるブルブルとした振動を停車時に感じ取ることはできる。ヤリスZはデジタルメーターを備えており、エンジン回転数は200rpm刻みのバーで表示される。エンジン回転計が示すアイドル時の回転数は1000rpmだが、OBD(故障診断用コネクター)から車両情報を取り出してスマホのアプリで表示させてみたところ、実際には850rpm付近であることがわかった。

OBDⅡ端子から信号をスマホに取り出して観察してみた。

 ちなみに、100km/h走行時のエンジン回転数はメーター表示だと2000rpmだが、実際には1900rpm付近である。パーキングブレーキレバーの右横にある「DRIVE MODE」ボタンを操作してPOWERモードに切り換えると(ECOモードもある)、エンジン回転は高めの制御になり、100 km/h走行時で2600rpmになる。急勾配のワインディングロードでキビキビ走るのにおすすめだ。エンジン回転が高めなのでノイズも大きめだが、音質は軽快で筆者の好みである。「6速MT仕様で乗ったらもっと楽しいかも」と感じた。

エンジン形式:直列3気筒SOHC エンジン型式:M15-FKS 排気量:1490cc ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm 圧縮比:- 最高出力:120ps(88kW)/6600rpm 最大トルク:145Nm/4800-5200rpm 過給機:× 燃料供給:DI 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:40ℓ

トランスミッションは発進ギヤ付きCVT。前進ギヤ:3.362 CVT:2.236〜0.447 後退:3.122 最終減速比:3.781

 今回試乗したのは「ダイレクトシフトCVT」と呼ぶ発進ギヤ付きCVTを組み合わせたモデルだった。ダイレクトシフトCVTは1速に相当するギヤに動力を伝えて走り出し、車速が乗ったところでベルト式CVTに動力伝達をバトンタッチする仕組みだ。低速域の伝達効率向上とレシオカバレッジの拡大(どちらも燃費に効く)を狙っている。




 エンジンが低回転域で充分なトルクを発生している影響も大きいのだろう。アクセルペダルを踏み込んだ瞬間にエンジン回転が一気に上がり、車速が後から付いてくるラバーバンドフィールなど今は昔。車速の上昇とエンジン回転がリンクした、非常にタイトなフィーリングだ。低速域ではエンジンの回転数をほとんど上げずにトルクだけを増やして加速する状況があり、こういったシーンではとくに気持ち良く感じる。

 アイドル時と同様に身体のセンサーを研ぎ澄ませていると、高速走行時に上り坂に差し掛かってアクセルペダルを踏み増したような状況では、3気筒エンジンに特有のトルク変動による振動とこもり音を感じることがある。しかし、快適なドライブを邪魔するほどではない。交差点からの発進と一般道での巡航、高速道路での本線への合流や料金所からのダッシュ、高速道路での追い越しといった日常的な走行において、力不足によるストレスを感じることはなかった。

全長×全幅×全高:3940mm×1695mm×1500mm ホイールベース:2550mm

トレッド:F1480mm/R1475mm 最低地上高:145mm 最小回転半径:5.1m
試乗車は車重1030kg 前軸軸重680kg 後軸軸重350kg
ヤリスはTNGAの横置きコンパクトカー用のプラットフォーム、GA-Bを採用した第一弾モデルだ。

 ヤリスはトヨタのコンパクト系モデルとして初めて、レーダークルーズコントロール(ACC)とレーントレーシングアシスト(LTA)を採用した(ACCは全車速追従ではなく、30km/h以上で作動)。1.5ℓエンジン搭載車は全車に標準装備だ。LTAはACCを作動させた際に機能し、車線中央を維持しやすいよう、ステアリング操作をアシストしてくれる。今回のドライブではACC、LTAともに、頼りがいのあるシステムであることが確認できた。俗っぽくいえば「使える」し、長距離での移動が楽になる。

トヨタのコンパクト系モデルとして初めて、レーダークルーズコントロール(ACC)とレーントレーシングアシスト(LTA)を採用。

 最後に、燃費を記しておきたい。小田原厚木道路の小田原西〜厚木IC間の約32kmを、走行車線を基本に走って燃費を確認するのがいつものパターンで、ヤリス・ハイブリッドで走った際は44.1km/ℓというとんでもない数値を記録した。バッテリーが満充電の状態で計測を始めるのでハイブリッド車に有利に働くが、それを差し引いても驚嘆に値する数値だ。




 同じルートを1.5ℓエンジン+発進ギヤ付きCVTのヤリスZで走ったところ、区間燃費は27.2km/ℓだった。ハイブリッド仕様と比べてしまうと見劣りするが、一般的にいって、相当にいい数値である。厚木ICで東名高速に入り、3車線ある中央を基本に、ときに最も右寄りの車線を走って東京料金所にたどり着いたときの燃費は24.3km/ℓ(ハイブリッドは38.4km/ℓ。以下同)、用賀で降りて一般道を走り、都内の職場に着いた際は22.0 km/ℓ(39.1 km/ℓ)を示していた。

室内長×幅×高:1845mm×1430mm×1190mm 乗車定員は5名。

リヤサスペンションはこのクラスのスタンダードであるトーションビーム式。
フロントサスペンションはマクファーソンストラット式。
タイヤサイズは185/55R16
試乗車は、ブリヂストン・エコピアEP150を履いていた。

 最上級グレードのZでハイブリッド仕様とエンジン単独仕様を比較してみると、価格差は36万9000円になる(ハイブリッドZ:229万5000円/Z CVT:192万6000円)。いくら燃費に差があるとはいえ、この価格差を燃料代で取り戻すのは相当な走行距離が必要だ。ハイブリッド仕様の肩を持つようにいえば、ヤリスのハイブリッド仕様はただ燃費がいいだけのクルマではない。モーターならではの応答性の良さや、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間に出る力強さが味わえ、それがエンジン単独仕様では味わえない気持ち良さにつながっている。




 しかしいっぽうで、1.5ℓエンジン+発進ギヤ付きCVTの組み合わせでも燃費、走りともに相当高いレベルにまとまっている。何ら不足はない。運転していて気持ちいいと、ウインカーレバーの形ひとつとってもカッコ良く見えてくるから不思議で、今回の試乗では、付き合う時間の経過とともにヤリスへの好感度が増していった。今度のヤリスは相当にデキがいい。

これがそのウィンカーレバー。

モード燃費はWLTCモード燃費:21.6km/ℓ  市街地モード16.1km/ℓ  郊外モード22.9km/ℓ  高速道路モード24.3km/ℓ

トヨタ・ヤリス Z


全長×全幅×全高:3940mm×1695mm×1500mm


ホイールベース:2550mm


車重:1020kg


サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式


エンジン形式:直列3気筒SOHC


エンジン型式:M15-FKS


排気量:1490cc


ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm


圧縮比:-


最高出力:120ps(88kW)/6600rpm


最大トルク:145Nm/4800-5200rpm


過給機:×


燃料供給:DI


使用燃料:レギュラー


燃料タンク容量:40ℓ


駆動方式:FF


WLTCモード燃費:21.6km/ℓ


 市街地モード16.1km/ℓ


 郊外モード22.9km/ℓ


 高速道路モード24.3km/ℓ


車両価格○192万6000円


試乗車はオプション込みで254万2000円

※ヤリスZのそのほかの写真は画像ギャラリーをご覧ください。画像をクリックすると画像ギャラリーにリンクします。

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