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F1直結!ターボラグ解消 次世代AMGに採用する「エレクトリック・エキゾースト・ガス・ターボチャージャー(EEGT)」とはなにか?「次世代AMGに採用」する


モータースポーツは技術の最先端実験室だ。それをF1で連続チャンピオンを誇るメルセデスAMGが実証してくれた。ターボチャージャーに電動化技術を組み合わせた「エレクトリック・エキゾースト・ガス・ターボチャージャー(EEGT)」である。F1ジャーナリスト、世良耕太が解説する。




TEXT◎世良耕太(SERA Kota) PHOTO◎MERCEDES AMG

メルセデスAMGのF1マシン 2014年からF1世界選手権のコンストラクターズ王座を守り続けている。

 メルセデスAMGは2020年6月17日、F1の技術をストレートに投入した新しいターボチャージャーを発表した。「エレクトリック・エキゾースト・ガス・ターボチャージャー(EEGT)」の名称が示すように、電動化技術を組み合わせたのが特徴である。EEGTはスロットルオフ時など、排気のエネルギーが少ない領域ではモーターでコンプレッサーを駆動し、ターボチャージャーの最大の弱点である応答遅れ=ターボラグを解消する。




 メルセデスAMGはEEGTを「次の世代のメルセデスAMGに適用」すると説明し、「開発の最終段階にある」と付け加えている。公開された写真(直4に見える)からも、デビューが間もないことをうかがわせる。

公開された写真は直4エンジンに見える

 ターボチャージャーは過給機の一種で、排気のエネルギーを利用してタービンホイールを回し、同軸上にあるコンプレッサーホイールを高速回転させて、エンジンのシリンダーが吸入する空気の密度を高める装置だ。排気量を増やしたのと同じ効果があり、増えた空気量に見合った燃料を噴射することでエンジンのトルクとパワーが増す。




 空気密度を高めるには排気が欠かせないが、ドライバーが「もっと力が欲しい」と思ってアクセルペダルを踏み込んでも、すぐには反応してくれない。スロットルの開きが大きくなって吸入する空気が増え、圧縮〜燃焼というプロセスを経て、初めて排気が増え、タービン/コンプレッサーの回転上昇につながる。エンジンの力が増すのはそれからだ。こうしたステップを踏む必要があるため、アクセルを踏んでから期待した力が出るまでに、相応の遅れが生じる。これがターボラグという現象だ。




 コーナーの進入から脱出にかけてのシーンでアクセルオフからオンに転じたときの応答は、ターボがとくに苦手とするところだ。スロットルを閉じているため、タービンホイールを回転させるエネルギーはほとんどタービンに届いていない。にもかかわらず、「すぐに力を出せ」と要求されている状況だからだ。これまでは、タービンやコンプレッサーの効率を高めたり、軸受の抵抗を減らしたりして応答性を高める開発を行なってきた。容量の小さなターボを採用することでも応答性を高めることは可能だが、引き換えに、高出力は出しづらくなる。反対に、高出力を狙うほど、応答性は犠牲になるのが一般的だ。

 ギャレット・モーション(Garrett Motion)とメルセデスAMGが共同で開発したEEGTは、排気エネルギーの有無とは関係なく、モーターの力でコンプレッサーを最高170,000rpmまで回転させることができる。そのため、排気エネルギーが途絶えるアクセルオフ時にもコンプレッサーの回転を高く保っておくことが可能。ドライバーの加速要求があった際には瞬時に過給圧を高め、望みどおりの力を発生することができるというわけだ。




 メルセデスAMGが公開した図を見ると、コンプレッサーを駆動するモーターはセンターハウジングに組み込まれており、コンプレッサーホイールの背後にあるのがわかる。モーターの出力は公表されていないが、駆動電圧は(12Vではなく)48Vと発表されているので、相応の出力は確保されているのだろう。充分なモーターの駆動時間を確保するため、ある程度のバッテリー容量を確保しているはずだ。ちなにみ、電動ウェイストゲートのアクチュエーターは負圧式ではなく、制御性に優れた電動式である。

 メルセデスAMGが「F1の技術をストレートに投入した」と説明するのは、F1のパワーユニットが搭載しているMGU-HとEEGTは同じ構造をしているからだ。MGU-HはF1で2014年から搭載が義務づけられている熱エネルギー回生システムのことで、ターボチャージャーの同軸上に、モーター/ジェネレーターユニット(MGU)を配置する決まり。歴代のメルセデスAMG F1は1.6ℓV6エンジンのVバンク間に、フロント側からコンプレッサー〜MGU〜タービンの順に配置している。




 F1の場合、MGUとタービンは離れているが、コンプレッサーとモーターが背中合わせになっている点も含めて、並び順はEEGTと一緒だ。量産車に適用した場合の振動や耐熱、冷却などの問題はF1で培った技術がEEGTに生かされているのだろう。F1ではモーターをターボラグ解消だけでなく発電機として使い、排気の持つ熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱エネルギー回生の機能を活用しているが、今回のEEGTに関する発表では、熱エネルギー回生に関する言及はない。




 しかし、原理的には可能で、夢が膨らむシステムだ。排気エネルギーの有無にかかわらずコンプレッサーの回転数を任意に制御できるエレクトリック・エキゾースト・ガス・ターボチャージャーは、AMGのようなハイパフォーマンスカーの走りを一変させる技術に違いない。実車のデビューが待ち遠しい。

F1のパワーユニット

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