2020年6月3日、アイシングループはQC Wareと自動車アプリケーションにおける量子最適化と量子機械学習アルゴリズムの影響を調査する研究協力について公表した。今回の研究では、市販の量子コンピューターであるD-Wave SystemsとRigetti Computingを利用した。
自動車産業の開発に「量子コンピューター(Quantum Computer)」が活用される時代が近づいているようだ。ご存じのとおり、量子コンピューターは、これまでのコンピューターとは異なる新しい計算機だ。次世代の高速計算機として研究・開発が進められている。
今回の協業について、アイシングループの技術開発本部江口克彦部長は次のように述べている。
「自動車業界は、次世代のモビリティの新しい変遷に対応するために大幅に変化する必要があります。そのなかでアイシンは、デジタル変革を推進し、新たな付加価値製品をグローバル市場に提供することを目標とし、イノベーションと未来志向の研究開発に焦点を当て、技術力を継続的に構築しています。QC Wareとアイシンの研究は、オートマチックトランスミッションのソフトウェアの品質保証を含む、重要な自動車部品設計の課題の解決に重点を置いています。また、ロジスティックサービスのビッグデータ計算における計算のボトルネックを解消する方法についても調査しています。量子コンピュータが商用利用できるようになる時までに、最高の量子コンピューティングスキルを充分に備えたいと思います」
International Data Company (以下IDC)のシニアリサーチアナリストであるヘザー・ウェスト氏によると、IDC独自の調査の結果、ほとんどの製造業メーカーが量子コンピューティングに高い関心を示している一方で、ほとんどの会社は、その複雑なテクノロジーと知識・技能不足により量子コンピュータに手を付けられずにいる、という事がわかった。
IDCリサーチディレクターのピーター・ルッテン氏は次のように述べている。
「QC Wareは、顧客のための実用的な計算を行なうには興味深いトップダウンのアプローチを持っている。異なる産業ユースケースのアルゴリズムを構築し、最も適切なハードウェア上でそれらのアルゴリズムを実行することにより、ハードウェアの選択という問題を抽象化し、顧客がソリューションの検索に集中できるようにすることができる」
また、ピーター・ルッテン氏は
「アイシンは量子コンピューティングを取り入れることで、従来の手法以外で課題を克服することできるようになった。QC Wareのアルゴリズムの専門家との共同研究により、その後ふたつの実証実験も開始している」
QC Wareの最高経営責任者マット・ジョンソン氏は
「アイシンは、日本およびグローバルにおいて新興ハイテクや研究イニシアティブの最前線にいる。私たちの研究コラボレーションの主な目的は、競争力を高めるための知識の転換と量子コンピューティングスキルの構築だが、QC Wareでも、量子アルゴリズムが自動車業界の現在および将来のニーズにどのように対処できるかを理解するのにも役立つ」
と述べている。
QC Wareについて
QC Wareは、カリフォルニア州パロアルトに本社を置き、パリに子会社QC Wareフランスを持つ企業。量子コンピューティングハードウェアで実行するエンタープライズソリューションを構築するサービスとしての量子コンピューティング企業である。QC Wareの使命は、従来のコンピュータに比べて量子的な利点を提供する実用的なアプリケーションを提供する最初の企業になるだという。QC Wareは、量子アルゴリズム科学者の世界で最も強力なチームのひとつと共に、その目標に向かって取り組んでいる。同社はすでに、自動車、航空宇宙、金融、材料設計、石油およびガスセクターの業界リーダーとの研究協力を通じて、収益を生み出している。