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150ccスクーターの純正ナビ、キムコ〝noodoe〟の実力は? 1週間使ってわかったこと。|レーシングS150


スマートフォンとスクーターをつなぐキムコのIoV(インターネット・オブ・ビークル)テクノロジーの結晶がnoodoe(ヌードー)だ。2017年に発売されたフラッグシップのAK550を皮切りに、日本のラインナップではレーシングS150にもこのスマートメーターが採用されている。昨今、スマホとの相互通信を可能とした新型車を各社が積極的に投入しているが、それらとnoodoeはどのように違うのか。およそ1週間、じっくりと使い込んでみた。




REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)


PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

 昨今、ブルートゥースを介してスマホとの相互通信を可能とした機能を、各社のニューモデルが積極的に採用している。ただ、これに一切触らずとも何ら問題なくバイクを走らせることはできるし、それ以前に最近のバイクはライディングモードやらトラクションコントロールやら電子制御サスペンションといった、ライダーエイドな電子デバイスがこれでもかと盛り込まれているので、インタラクティブなガジェットにまで気を回したインプレ記事が少ないのが現状だ。かくいう私も、新型車の試乗はせいぜい1日というが原則なので、先の各種電子デバイスの操作方法とそのチェックだけで終わってしまうことも。




 とはいえ、そうした機種を試乗する際は、自分のスマホとペアリングして何ができるのかをおおまかには確認する。その上で言及すると、車両メーカーごとにずいぶんと内容に差があるということ。ホンダのゴールドウイングなどが採用するApple CarPlay、ハーレーが対応するようになったAndroid Autoなど、OSメーカー主導のものはやはり多機能なのに対して、車両メーカー主導で開発されたアプリは今のところシンプルなものが多い。例えばカワサキのRIDEOLOGY THE APPは、車両側のメーターの表示内容や切り替えられる項目を、スマホのアプリ上で確認したり変更できるというのがメインであり、あとは走行ログを残せる機能が加えられている程度。電話やメールなどの着信が分かるのは確かに便利だが、この手のガジェットにあまり詳しくない私でも、今後のさらなるアップデートに期待したいというのが正直なところだ。




 さて先日、キムコのレーシングS150に試乗したときのこと。これにはnoodoe(ヌードー)というスマートメーターが搭載されているんですよ、とキムコジャパンの担当氏から説明を受ける。相互通信機能を持つモデルが増えたとはいえ、どのメーカーもたいてい各ジャンルのフラッグシップ、もしくはミドルクラスまでなのに対し、キムコは150ccのスクーターにすら標準装備しているというのは注目に値する。となると、車両価格の上昇を抑えるため、先のカワサキのように内容はシンプルなものかと思いきや、同社の旗艦スクーターAK550と同じものを搭載しているというから驚きだ。

noodoeを標準装備するレーシングS150。車両価格は341,000円と、国内メーカーの150ccスクーターよりも安価だ。

 AK550もレーシングS150も、noodoeの表示画面はメーターパネルの中央にあり、操作はハンドル右側にあるオレンジ色のエンターキーと、その上下にあるグレーのアップ/ダウンキーのみで完結する。まずはスマホにnoodoeのアプリをインストールし、アカウントを作成してログインする。アプリは主に4つの画面(旅、ソーシャル、スクーター、パーソナル)で構成されており、ソーシャルにアップされている各種メーターデザインをダウンロードし、スクーター画面でインストールすると、次に車両のイグニッションキーをオンにしたタイミングで自動的に同期されるという仕組みだ。

これがnoodoe用のスイッチ。操作はシンプルなのですぐに覚えられるだろう。

ボタン3つのシンプル操作

 noodoeの表示画面は、アップまたはダウンキーを短押しすることで切り替わる。例えばスタート時の標準メーターからダウンキーを押すたびに、時計→天気予報→速度→POI(ポイント・オブ・インタレスト)→グループ(noodoe搭載車に乗る仲間の位置を表示)→ギャラリーと替わっていき、再び標準メーターに戻る。noodoeクラウドには世界中のクリエイターが作ったメーター画面がアップロードされており、それを自由にダウンロードしてインストールできるのだ。高級腕時計の文字盤を模したものや、彼女とのツーショットを加工したもの、近未来的なものまでさまざまで、さらに言えば自分が作ったデータを公開して他の人に使ってもらうことも可能なのだ。

これが標準メーターで、ブルートゥースの接続状況なども分かる。
ALEXXという方がnoodoeクラウドにアップしていたものをダウンロードして使用した例。ここからさらに背景の色や指針のデザインを変えたりとリミックスできる。


メーターのデザインを自分で作れる!

 メーターは読めればいい。そう思っていた私だが、実際に試してみるとこれがけっこう楽しいのだ。部屋でコーヒーを飲みながらアプリを触り、昨日はロレックス風だったから今日はブライトリング風にしようとか、天気画面の背景を好きな二次元キャラにしてみようなど、気が付けば数十分が過ぎていることもしばしば。ちなみにギャラリー画面は選択した画像を表示するのみで、最大6枚まで登録可能(複数登録時はスライドショーとなる)。ここに彼氏や彼女、配偶者、お子さんの画像などを登録すれば、安全運転につながるのでは、なんてことを思った。

noodoeクラウドにあったエクスプローラーⅠ風のデザイン。腕時計マニアならテンション上がるはず。
せっかくなのでギャラリーに好きな二次元キャラを登録し、プチ痛スクーターに。


 さて、注目のナビゲーション機能について。これは2018年6月のアップデートバージョンから実装されたもので、まずはマップデータをダウンロードする必要がある。日本地図はいくつかのエリアに分かれており、今回のテストでは「東京 神奈川」と「千葉 埼玉」をダウンロードした。その後の操作についてはGoogleマップに代表されるナビアプリとほぼ共通で、目的地を入力(経由地は最大5か所まで登録可)するとルートが自動的に作成され、そのデータが車両側に転送される。

実力テスト|クルマのカーナビと遜色ないかも?

エリアごとに地図データをダウンロードする。データ量が大きいのでWi-Fi環境で行うことを推奨。

 ナビゲーションの方法はシンプルなターンバイターン形式で、実際に使ってみるとこれが非常に分かりやすかった。走行中の画面には現在走行している道路名と曲がる方向、次に走る道路名、曲がる場所までの距離と交差路の数、以上5つが表示されるだけだが、本来の目的である道案内であればこれで十分だということが分かる。そして、曲がるべき交差点に近付くと自動的に拡大図が表示されるので、複雑な都心においても道を間違えにくいのだ。今回は渋谷駅から世田谷のとあるショップまで、パイオニア製カーナビを搭載したカメラマン氏のクルマとどちらが早く到着するかを競ったが、案内された道こそ微妙に違っていたものの、ほとんど同じタイミングで着くことができた。

これがターンバイターン形式による表示。音声による案内がないので、次に曲がる交差点までの距離と方向を感覚的に覚えておく必要があるが、それも慣れの範疇だろう。もちろんミスコースすればすぐにリルートしてくれるので安心だ。
これが停車中に切り替えられる周辺拡大図。太陽光の下でも見やすい。


 ナビ実行中、停止している間に限り、オレンジのエンターキーを押すことでルート概要(到着予想時刻、予定走行時間、目的地までの残り距離、天候、スマホのバッテリー残量)、ルート全体図、周辺拡大図が切り替えられる。スタートしてから自分がどの位置まで進んだかを視覚的にチェックできるのは非常にありがたい。さらにこのナビには、最後に駐輪した場所を自動的に記憶するファインド・マイ・ライド機能が搭載されており、スクーターの位置を地図上に表示してくれるほか、車両に近付くとnoodoe画面が点灯するウエルカムライト機能まで設けられているのだ。




 停車中、エンターキーを長押しするとスマホの通知センターと同じものが表示され、スマホ側の設定次第では内容の一部を読むことも可能だ。これを便利だと感じたのはポツポツと雨が降り出したときで、電話ならインカムですぐに応答できるが、メールの場合は濡れない場所を探してグローブを外し……、などといった具合に手順が非常に面倒だ。内容が緊急でなければその必要はないわけで、それが先に分かるだけでもありがたいと思った。

着信があれば内容を確認したくなるのが人の性。noodoeなら停止中に限りそれが可能だ。

 noodoeをごく簡単に説明するなら〝バイクに特化したスマートウォッチをメーターパネルに組み込んだもの〟だろうか。現在、SDL(スマート・デバイス・リンク)というメーカー間の垣根を越えたコンソーシアム主導の規格が動いており、これが近い将来のスタンダードになる可能性はあるが、現時点においてここまで使い勝手のいいスマートメーターを開発し、150ccのスクーターに搭載したキムコの先見性はもっと高く評価されていいだろう。

【動画】KYMCO・noodoe
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