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陸上自衛隊:資材運搬車 頼りになるクルマ! 災害派遣でも光る使えるオフロード作業車 自衛隊新戦力図鑑17


日本を守る陸・海・空自衛隊には、テクノロジーの粋を集めた最新兵器が配備されている。普段はなかなかじっくり見る機会がない最新兵器たち。本連載では、ここでは、そのなかからいくつかを紹介しよう。今回は、陸上自衛隊:資材運搬車である。


TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

東日本大震災の約一カ月後の2011年4月25日、宮城県宮城郡七ヶ浜町は住宅の多くが倒壊したままで、捜索等のための瓦礫撤去に資材運搬車が投入され、作業を加速させた。

 資材運搬車は軽運搬用車両で、不整地や山間部などで陣地構築など築城資材等の局地的な運搬作業に使われる。導入は1990年からで、普通科や特科、工兵部隊である施設科などを中心に配備されてきた。足周りには不整地での走破性を高めた「ゴムクローラ」を採用し、油圧機構の「HST(ハイドロ・スタティック・トランスミッション)」でオフロードをグイグイ走る。製造メーカーは株式会社諸岡。同社は民間用の「不整地運搬車」を製造しており、資材運搬車は防衛省側の性能要求に応えた専用車両という位置付けになる。




 最大速度は約20km/h。車体重量は約5トン。防御陣地の構築などのシーンで、名称通り必要な資材を荷台へ積み込み運搬、各種の作業を効率的に行なえる。建設や土木、荷役の現場で、ちょうどいいサイズ感と小回りの良さが光っている。


 そして現場で使える便利な性能は災害派遣でも活かされてきた。災害現場へは大型トラックの荷台にそのまま積載して輸送する。建設現場へ小型パワーショベルを運び込むシーンと同じで、投入しやすい。低重心で安定性があることも積載・輸送作業をやりやすくしているようだ。

全幅約2m、住宅地の狭い路地も問題なく往来可能。運転席は左側で、右側にもうひとつ座席がある。

 資材運搬車の操縦は左座席中央に置かれたレバーを操作するだけだ。レバーはT字形状で、このレバーはステアリングとアクセル・ブレーキの操作を一挙に行なえるものだ。レバーを前に倒すと前進し、後ろに引くとブレーキがかかる。左右の旋回はレバーを進みたい方向へひねるだけ。走行はギアをハイ/ローのみで切り替える。




 東日本大震災では津波の被害を受けた多くの被災現場で資材運搬車が活動するシーンが見られた。瓦礫が積み上がり、水没してぬかるみ足場の悪い環境で、すべてを人力で作業していてはラチがあかない。そこへこの資材運搬車を投入する。大型トラックや重機が入れない場所でも、本車なら約2mの幅があれば進入可能。約5m四方の広さがあればその場で転回も可能だ。車体に設置されたクレーンは約2トンまでの吊り揚げ能力があり、荷台の積載量は約3トンだ。また深さ1mほどの地隙などなら、乗り越え走破することができ、河川など水場を渡る渡河走行も可能だ。何かと便利で、隊員達が寄せる信頼性は大きい。

深さ1mほどの地隙などなら、乗り越え走破することができる。写真/陸上自衛隊

 過去いくつもの自然災害で、大型トラックや海上自衛隊の護衛艦、航空自衛隊の輸送機等で各地へ輸送され、機動的に使われている。そして海外での国際貢献活動でも広く活躍してきた。


 国内外での実績を積み上げてきたことで、地味だが実戦的な装備との評価も定着、自衛隊の災害対処能力の向上を目的に資材運搬車の追加導入拡充は防衛省での予算措置もなされ、2013年以降、継続されている。使えるオフロード作業車だから増やしていこうというわけだ。


 つまり資材運搬車は今後も自衛隊で使われ続け、災害発生時には現場最前線で人命救助や土砂瓦礫等の除去を行ない、各種の救援活動や生活支援などの任務で活躍し続けているということだ。

荷物を満載し川を渡る資材運搬車。河川などの水場を渡る渡河走行も可能だ。写真/陸上自衛隊

スペック  資材運搬車用)


■主要諸元


全長×全幅×全高:4.3×2.15×2.18m


重量:約5t


速度:20km/h


最大積載量:約3t


乗員:2名

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