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【実走燃費17km/L】ツアラーとしての総合力はピカイチ。カワサキ・Ninja1000 SX 試乗。


Z 1000ベースのスポーツツアラーとして侮れない人気を誇っていたNinja1000。その後継の進化系ニューモデルが同SXとしてデビュー。2020年4月4日から新発売された。  




REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)


取材協力⚫️カワサキモータースジャパン

カワサキ・Ninja1000SX.......1,485,000円

メタリックグラファイトグレー×メタリックディアブロブラック

カラーバリエーションは全3タイプ

パールブリザードホワイト×メタリックカーボングレー
エメラルドブレイズドグリーン×メタリックカーボングレー


 昨年のEICMA2019(ミラノショー)で初公開されたNinja1000SXが新登場。3月末に発表されたプレスリリースを読むと、想像以上の変貌ぶり。多方面にわたる変更が成され、商品力としてかなり大きな熟成進化が見て取れる内容だった。


 既報のNinja1000と、同エンジンを搭載するVERSYS1000SEもスポーツツアラーとしての基本的なキャラクターは同類。昨年の試乗時に、Ninja1000は散歩気分で出発もサクッと200kmも走ってしまったり、日帰り500㎞の予定でツーリングに出掛けたVERSYS1000SEでは結果的に800kmも走ってしまった。いずれもツアラーとして素性の良い仕上がりが印象的だったのである。


  


 冒頭に記した通り今回試乗したNinja1000SXはNinja1000の後継モデル。カワサキプラザネットワークで販売され、「カワサキケアモデル」とされている点も見逃せない。


 販売後1年目迄、距離無制限のロードサービスと3年間の新車保証。さらに5回の定期点検やオイル交換3回の無償メンテナンスが付帯する販売方法である。


 定期点検に無頓着なオーナーが多い現状を踏まえると、正しいメンテナンスの励行が促進されると言う意味でありがたい面がある。しかもこのサービスの付帯を考えると、税込みで約21万円高価になった事も、それほど大きな価格差とは思えなくなるから不思議。


 メーカーにしてみれば、自社製品の品質に対する自信の現れのひとつでもあるし、お客様へのリスク負担を軽減し、安心してカワサキブランドを楽しんでもらうための施策にもなるわけだ。




 さて、外観からも直ぐにわかる大きな変更点は、フェアリングデザインのリファン。そして従来比2kgの軽量化に貢献した右出し1本マフラーの採用だ。左右2本出しのショートマフラーから変更され、ややボリュームの大きなマフラーデザインになっている。


 照明系はウインカーも含めて全てLED化された他、4.3インチ・フルカラーTFT液晶スクリーンを搭載したインパネの採用も新しい。スマホとの接続機能も新設され、クルーズコントロールやクィックシフター、ハンドルグリップヒーターも標準装備された。


 エンジンもカムシャフトのプロフィールが見直された。不等吸気ファンネルの採用等、給排気系の熟成と共に電子スロットルバルブを採用。KTRC等もさらに熟成されて、それに協調する多彩な電子制御技術が新投入されているのである。




 足回りではドライ/ウェット両方で高いグリップ性能を発揮すると言われているブリヂストン製BATTLAX HYPERSPORT S22を採用。フルアジャスタブルなフロントフォークも内部構造が一新されてよりスムーズな作動特性を実現していると言う。


 この他フロントシートもウレタンクッションの密度が熟成されて快適性を向上。さらにオプションながら、シート高が8mm低くなり形状も足つき性向上に配慮したローシートの他、熱吸収の少ない素材を使用した厚みのあるコンフォートシートも揃えら、スポーツツアラーとしての魅力度が格段に高められているのである。

素直で快適な乗り味は、大人びたアスリートの様。

 結論を先に書いてしまうと、SXへの熟成進化は実に大きな物だった。発進して直ぐに体感でき、より魅力的になった乗り味の違いに驚かされてしまったのである。




 主要諸元表に現れたデータ的な違いはごく僅かで、むしろほとんど共通であると言っても過言ではないだろう。にも関わらず、シートに跨がった瞬間から、前モデルよりも親しみやすさを覚えた。


 少しだけワイドになった車(ハンドル)幅が奏功しているのか、車体を取りまわした時の感覚が、筆者のの記憶に残るNinja1000のそれよりも軽く扱えたのが印象深い。


 車体を起こした時に感じられるガソリンの揺れも、その傾向こそ残っていたが挙動はいくらか緩和された感じ。ちょっと誇張した表現が許されるなら、ひとクラス小さなバイクを扱うような親しみ易さを覚えたのである。




 さらにスタートすると操縦性が実に素直になっていた。その進化の大きさと自然な扱いやすさにまたまたビックリ。歩く様な極低速域から高速コーナーに至るまで、全く癖のないグッドハンドリングを披露してくれる。


 低速フルロックターンも難なく決められるし、高速コーナーや曲がり具合が読み辛いトリッキーな場面でも危なげない。見通しの悪い場所でも自由自在に扱えるので、失敗しそうな不安が一切感じられなかった。ライダーに優しいそんな操縦性が見事である。


 誰にも扱いやすく、手強さを感じさせない所。この素直さは本当に感激物だ。




 Ninja1000比較でフロントフォークのキャスターが若干立てられ、トレールが4mm 短縮された事が効いているのだろうか。否、それだけではない。新たに選択されたブリジストン製BATTLAX HYPERSPORT S22タイヤとのマッチングも絶妙である。さらに、右手のスロットル操作に対する加減速のレスポンスが実にシルキーに調教されていた事も見逃せない要素だろう。




 またもうひとつの驚きは、フロントフォークのフットワークがかなり進化していた事。荒れた路面でもゴツゴツ感の少ない作動特性を発揮してくれる。特に伸びきってからの衝撃吸収場面ではまるで猫足のごとくしなやかな身のこなしを披露してくれ、乗り心地が良くなっていた。


 ブレーキやクラッチもタッチが軽くてロングランでも疲労度は少ない。しかもフロントブレーキは、軽い扱いの中にも強力な制動力を発揮でき、ソフトなブレーキングから急制動まで自由自在になる安心感は抜群。


 


 俊敏かつ豪快に吹き上がるエンジン特性も申し分のないハイパフォーマンスを楽しませてくれるのだ。


 正直、遠くへ旅する用途に期待したいユーザーにとって、Ninja1000 SXの総合力は図抜けた機能と快適性が光り、オプションで揃えられたアクセサリーパーツの充実ぶりも含めてとても魅力的。お買い得感も高い。久々に欲しいと思えたのである。




 あえて気になった点を指摘すると、5月の試乗だったが、発進停止の多い市街地走行では下半身が若干暑かった事ぐらいだろうか。 また、あくまで筆者の嗜好だが、VERSYS 1000 SEのミッション(レシオ)がマッチされれば、ツアラーとしての快適性はよりレベルの高い物になると思えた。


 今回の試乗中、もしも自分がオーナーになれたなら、コンフォートシートやパニアを装備したいなど、暫し個人的に夢膨らむひと時を楽しませてくれたのである。


 


 ちなみに今回の試乗&撮影取材では、市街地から高速まで約180kmを走行。満タン法計測した実用燃費率は17km/Lだった。撮影を始め発進停止を繰り返す等、燃費面では少々負担の多い走り方だった点を考慮すると、ロングツーリング等に出れば19km/Lを超えるデータも期待できるだろう。またローギヤで5000rpm回した時の速度は49km/h、6速トップ100km/hクルージング時のエンジン回転数は4200rpmだった。

足つき性チェック(身長168cm)



シート高は820mmと少々高めだが、シート形状は足が出しやすく工夫されていて、足つき性は良い。重量級だがバイクを支えるのに不安は感じられなかった。


ディテール解説

目つきの鋭いフロントマスク。左右にセパレートされたLED式ヘッドランプ。写真はロービーム状態。ハイビームは下段の2灯が追加点灯する。

デュアルディスクブレーキローターはφ300mm。対向4ピストンのモノブロックキャリパーがラジアルマウントされている。フロントフォークはφ41mmの倒立式。

水冷DOHC16バルブ4気筒エンジンはショートストロークタイプの1,043cc。吸気系にはφ38mmのスロットルボディに電子制御式スロットルバルブが採用されている。

右側1本出しになった大容量マフラー。これにより2kgの軽量化に貢献している。リヤディスクローターはφ250mm。シングルピストンのピンスライド式油圧キャリパーを採用。

ボトム側に長いアームのリンクを持つモノショック・サスペンション。ピリオンステップの直ぐ上にあるダイヤルを回すことで、プリロードが無段階調節できる。

左側にマフラーが無くなり、スッキリした車体まわり。偏心タイプのチェーンプラーが採用されている。ピリオンステップの直ぐ上にはヘルメットホルダーが装備されている。

フロントフォークのトップエンドをクリップオンするセパレートハンドル。スクリーンはコンパクトなデザインである。

走行モード変更やディスプレーのコントロール、そしてクルーズコントロールなど多彩な切り替えや選択操作を担うハンドル左側のスイッチ群。
シンプルな右側のスイッチも新設計されて、エンジンキルスイッチと始動用セルスターターは一つのスライドスイッチ操作で兼用する。


TFTフルカラー液晶ディスプレー式のメーター。表示方法や表示内容が多彩で、好みに応じたセットアップができる。
ハンドル左側スイッチのRESETボタンを押すと白黒反転表示できる。タコメーターの棒グラフ表示は緻密な伸び方でアナログ的だ。


座り心地の良いワイドシートだが、前方部の幅がスリムに絞られていて、エッジの形状も足つき性をスポイルしないデザインである。

テールカウル左脇のキーロックを解錠するとリヤのシートクッションが脱着できる。内部は若干のスペースがあり、ETC機器の標準装備の他、少しの工具も収納されていた。

テールランプデザインは踏襲されている。テールのエンドカウルに組み込まれたランプは後方の高い位置からの被視認性がイマイチ。ウインカーやナンバーランプはLED化されてスマートなデザインに一新された。

フロントスクリーンは4段可動式。写真は最も低く角度が寝た状態。全高は1,190mm。
写真は最も高くスクリーンを立てた状態。全高は1,225mm。スクリーン内側の右下にあるレバーを押すことで角度調節できる。


右出し1本マフラーの採用でリヤ周りの車体はかなりシュッとした印象だ。

◼️主要諸元◼️

型式:2BL-ZXT02K


全長×全幅×全高:2,100mm×830mm×1,190mm(1,225mm・ハイポジション)


軸間距離:1,440mm


最低地上高:135mm


シート高:820mm


キャスター/トレール:24.0°/98mm


エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列4気筒/DOHC 4バルブ


総排気量:1,043cm³


内径×行程:77.0mm×56.0mm


圧縮比:11.8:1


最高出力:104kW(141PS)/10,000rpm


最大トルク:111N・m(11.3kgf・m)/8,000rpm


始動方式:セルフスターター


点火方式:バッテリ&コイル(トランジスタ点火)


潤滑方式:ウェットサンプ


エンジンオイル容量:4.0L


燃料供給方式:フューエルインジェクション


トランスミッション形式:常噛6段リターン


クラッチ形式:湿式多板


ギヤ・レシオ:


 1速…2.600(39/15)


 2速…1.950(39/20)


 3速…1.600(24/15)


 4速…1.388(25/18)


 5速…1.238(26/21)


 6速…1.107(31/28)


一次減速比/二次減速比:1.627(83/51))/ 2.733(41/15)


フレーム形式:ダイヤモンド


懸架方式(前/後):テレスコピック(倒立・インナーチューブ径41mm)/スイングアーム(ホリゾンタルバックリンク)


ホイールトラベル(前/後):120mm/144mm


タイヤサイズ(前/後):120/70ZR17M/C (58W)/ 190/50ZR17M/C (73W)


ホイールサイズ(前/後):17M/C×MT3.50/ 17M/C×MT6.00


ブレーキ形式(前/後):デュアルディスク300mm(外径) /シングルディスク250mm(外径)


ステアリングアングル(左/右):31°/ 31°


車両重量:236kg


使用燃料無鉛:プレミアムガソリン


燃料タンク容量:19L


乗車定員:2名


燃料消費率(km/L):23.0km/L(60km/h・定地燃費値、2名乗車)


           17.5km/L(WMTCモード値、1名乗車)


最小回転半径:3.1m

ライダー・プロフィール

元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。約36年の時を経てモーターファン バイクスのライターへ。ツーリングも含め、常にオーナー気分でじっくりと乗り込んだ上での記事作成に努めている。

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