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トヨタ・ヤリスクロスがなぜ誕生したのか? その秘密は日産ジュークにあった!?


話題性の高いトヨタ・ヤリスクロスの登場は、日本市場を大きくシフトする可能性があるかもしれない。しかし、この衝撃的なデザインは、実はヨーロッパではMINIから始まったプレミアム路線の中で必然でもあったのだ。さらにいえば、その台風の目となった1台は、日産ジュークだった。そして、驚きのデザインで登場したジュークは、ヨーロッパでは2019年にすでに2代目となっているのは当webでも報じたとおり。日本への登場は未定とのことだが、それでいいのだろうか?

Bセグメントに巻き起こる旋風

 欧州では、BセグメントのコンパクトカーとBセグメントをベースとするSUVの市場で活性化している。中国市場への意識からすべてが大型化するなかにあっても、脈々と市場を確保していたBセグメントが再認識されているといってもいいかもしれない。


 そのなかでもBMWによって2001年に復活したBMW MINIの戦略は大きな影響を与えた。もはや20年も前のことになるのだが、全幅1.7m未満×全長3.6m程度のコンパクトカーに、今までなかったスペシャルティやプレミアムの価値を与えることに成功した。




 そこには伝統の英国ブランドとしてのクラフトマンシップ、そしてBMWとして初開発となるFFレイアウトによる高い走行性能を、うまく融合させ製品的魅力を詰め込んだ。その成功よって、現代では3代目まで進化、そのブランド力の高さで多くのバリエーションも生んでいる。


 MINIはこの新たなコンパクトクラスでのプレミアム市場を開拓したが、実はその他のBセグメントモデルではそう簡単に参入することはできない。


 20世紀末から21世紀初頭のコンパクトモデルといえば、VW、オペル、フォード、ルノー、プジョー、シトロエン、フィアットとさまざま。しかしそれらBセグメントモデルは、それぞれの個性がすぐにイメージできてしまう人も多いはず。すべてが強烈に個性的であるからだが、同時にそれらのモデルは合理的であるのも事実。つまりは、プレミアムやスペシャルティというキーワードは合致しないのだ。


 そこが、新生MINIにとって大きな強みとなった。ビッグネームのリボーンはこれまでの既成概念を捨てたりブランドを拡大解釈することが可能で、大きなチャンスを成立させた。このほかにもAセグメントではあるが、フィアット500の復活も成功例といえるだろう。


 その後、Bセグメント市場で大きな突破口となったのが、クロスオーバーの登場だ。特にSUV的な脚周りをもつことで、多くのメーカーが既存の価値観をシフトし、プレミアムやスペシャルティ市場への参入を果たしクラスレスの価値を訴求することができた。全長をそのままに、全幅を拡大する傾向によって、走行性能を高めただけでなく小さい車だと思わせない存在感を強調できたことも、Bセグメントの価値を変える要因となったはずだ。

初代ジューク登場でBセグメント市場が拡大

2010年、Bセグメントに大きな話題を振りまいた初代日産ジューク。MINIの開拓したコンパクト・プレミアムを新たに解釈し、クロスオーバーというよりもSUVの下肢、俊敏さの素性となるコンパクトさなど、すべてを必然の要素として登場。

 そうしたBセグメントの中にあって強烈な注目を受けたのが、2010年に登場した初代日産ジュークだ。2006年にはすでにMINIは第2世代に移行しており、クラブマンなどエステートも登場し、バリエーション拡大の傾向があった。


 そこに日産から登場してきたのが、初代ジュークだ。ルノー・クリオ(ルーテシア)などとのプラットッフォームの共用化を行ない、ワールドワイドな合理化も実践された世界戦略モデルとなった。


 初代ジュークのポイントは、プレミアムの価値を新たに捉え直した点で、MINIの競合とするのではなく、まったく異なる価値を与えた点にある。すでにこのカテゴリーにもいくつかのクロスオーバーが存在していたのだが、その常識を覆したモデルでもあった。


 ジュークにとってSUVたる機能、そしてコンパクトなサイズは必然だった、と見ることができる。クロスオーバーの場合には、異なる2つの価値が並行して存在することが多いが、ファン・トゥ・ドライブで活発なオールラウンダーとして、ジュークにとってはすべてが必然に見えた。すべてが一体となり、まったく独自の価値を生んだ。そのラジカルさこそが、市場で高く認知された主因ではなかったかと思う。ここから、Bセグメントの新たな価値観が生まれてきたといってもいいのではないだろうか。


 新生MINIのクロスオーバーやジュークの登場によって、このBセグメントは「○○の小型版」や「○○の廉価版」という価値観ではない、この小さなサイズであることが必要なコンセプトが確立したともいえる。

デザインの考えかたが大きく異なるヤリスクロスと新型ジューク

分厚いフロント周りながら、デイライト、ヘッドライトの積み上げ配置でその厚みを意識させない。むしろ安定性のある個性的な顔立ちとなった。

ヤリスクロスは、SUVのクーペ、あるいはスポーツカーをイメージ。同じBセグメントでありながら、両者の振り幅は大きい。それだけ多岐にわたりニーズに応えられる、大きな市場でもあるという証だ。

 そして2019年9月に欧州で登場したのが2代目ジュークだ。あまりに初代が破天荒であっただけに、2代目はかなり難しい開発になるのではないかと考えられたが、うまくキープコンセプトを実現しながら進化させた。


 代替わりをするときには、一般的には先代の不満点を解消するというのがリニューアルの定番の考え方だ。その点で言えば、先代のジュークには少なからず後席や荷室をもっと大きくし欲しい、という要求もなかった訳ではないと思われる。しかし、ほとんど譲歩していないのが新型だ。


 ジュークにとっては、キャビンを後方に絞り込む形が重要で後席は+2的扱いでもいいというほど。その形を再び特化させてきたのが2代目で、その点では利便性も重視してきたというヤリスクロスとは大きく異なる。


 ジュークの特徴となるのは、ヘッドライトではないデイライトなどでフロントマスクを形作っていることだ。リトラクタブルではないほとんどの車が、ヘッドライトを目のように位置付けてきたこれまでのデザインに対して、ジュークではそれをやめた。それによってヘッドライトをフォグライトのように扱うなど、デザインの自由度が飛躍的に高まった。


 2代目は再びこの手法を継承したのだが、フロント周りでこのヘッドライトとデイライトが共になくてはならない関係となっている。どちらがなくてもそのバランスは崩れてしまう。

端正なマスクで登場した新型ジューク。初代と似ているのは、大きなフォグランプに見えるヘッドライトだけとも言えるほど。

ヤリスクロスのフロントビュー。グリルの位置が低く、スポーツカー感を醸し出す。
実用性の高さを主張するリヤビュー。あまり絞り込まない造形によって、ゲートが大きく取れた。


 初代ジュークが左右いっぱいに広がるグリルによってボディの薄さを表現したのに対して、新型はフロント内のデイライト、ヘッドライト、グリルといった要素の構成によって、厚みある顔つきに重さや違和感を感じていない。


 ヘッドライトを大きなフォグランプ的な個性的アクセントとすることで、初代と2代目はそれ以外になんのテーマの共通性がないにもかかわらず、同じ血筋を感じることができる。

リヤドアを明確に主張するヤリスクロス。その中で、よりスタイリッシュな造形を構築。

新型ジューク。デザイン手法によって全体に対するキャビンバランスが異なって見えるのがわかる。

 ヤリスクロスとジュークを見比べると、その手法の違いが興味深い。同じステージに存在しながら、狙いの違いは明らか。それだけニーズの多い市場であることもわかる。


 秋には日本にも登場すると言われるヤリスクロスだが、新型ジュークが存在しないのは実に寂しい。日産としては新たな戦略を構築しているようだが、この成熟した2代目ジュークが、日本の市場を席巻する様も見てみたいものだった。

新型ジュークを最も印象付けるカット。キャビンの小ささを頑なに守った。

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