BMWがいよいよ本気でクルーザーセグメントに参入してきた。その名も「R18」。BMW史上最大のフラットツインを搭載した本格派メガクルーザーだ。その狙いについても考察してみたい。
REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
量産市販車最大の1800ccフラットツイン
「R18」は古典的なデザインと現代テクノロジーを組み合わされ大型クルーザーモデルだ。現在のBMWフラットツインの始祖的な存在である1936年製の名車「R5」をオマージュしつつ、エンジンと車体は完全新設計となっている。今回日本で初お披露目されたのは特別仕様の「R18ファーストエディション」で、ピンストライプのペイントやクロームパーツが施されているのが特徴だ。
エンジンはBMW伝統の空冷水平対向2気筒で、いわゆるボクサー・エンジンとしては量産車史上最大となる排気量1,802ccから最高出力67kW(91ps)/4,750rpm、最大トルク158Nm/3,000rpmを実現。さらに2,000~4,000rpmの低回転域において常に150Nm以上のトルクを発生するというから驚きだ。
フレームもBMW伝統のダブルループ鋼管タイプを採用し、「R5」同様の密閉型アクスルドライブを備えたリジッドフレーム風のスイングアームを装備。クラシックBMWを手本とした露出型ドライブシャフトを採用するなど、ノスタルジックな香り漂う本格的な作りになっている。
雰囲気はクラシカルだが電子制御もしっかり投入
サスペンションはフロントにスリーブ付きのテレスコピック型フォークを、リヤにダンパーとプリロード調整機構を備えた直押しタイプのモノショックを隠れた位置に配置するなどこだわり満点。ブレーキは前後トリプルディスクにそれぞれ4ポット固定式キャリパーを採用するなど現代的に強化され、メッキ加工のワイヤースポークホイールがクラシカルな雰囲気を盛り上げている。
また、ライポジもBMW伝統の人間工学に基づくミッドコントロール位置にステップがセットされ、リラックスしながらもアクティブな操作を可能とした。
「R18」には現代のマシンらしく電子制御も投入されている。「Rain(レイン)」、「Roll(ロール)」、「Rock(ロック)」の3種類のライディングモードの他、ASC(オートマチック・スタビリティ・コントロール)やMSR(エンジン・ドラッグ・トルク・コントロール)を標準装備するなど安全性を担保。また後進するためのリバースアシストや、坂道発進で安心なヒルスタートコントロール機能がオプション装備として設定される。
カスタム前提の作りに一流ブランドとのコラボも
また、カスタムして楽しむことを前提にリヤフレームや外装パーツなどは取り外しが容易な構造を採用。ブレーキホースやクラッチワイヤーの取り回しもハンドル交換に対応しやすく設計されている。
さらに「R18」の個性を引き出す純正オプションパーツも充実。Roland Sands Design(ローランド・サンズ・デザイン)とのコラボレーションによる2種類のアルミ削り出しパーツの他、「マスタング」シート や「B&H」エグゾーストシステムなど有名ブランドとのコラボによるアクセサリーも用意されている。
なお、日本での発売時期は2020年中を予定していて、今回紹介した特別仕様のファーストエディションで300万円を切る価格設定になる見込みだとか。同時によりリーズナブルな標準仕様の「R18」も設定されるようなので楽しみにしたい。
だれに向けたモデルなのか、そしてライバルは?
さて、「R18」は従来のBMWとはひと味もふた味も違うチャレンジングな意欲作であることは分かったが、気になるのはそのターゲット。どんなユーザー層に向けて作ったモデルなのだろうか。
まず1.8リッターという巨大排気量が与えられたビッグクルーザーということ。そして、長い歴史を持つ伝統的なエンジン形式にこだわり、かつての名車をオマージュしたクラシカルな雰囲気に現代的な装備を盛り込む手法とくれば、ライバルはおのずと限られる。そう、ずばりハーレーしかいない。その中でも排気量やキャラクター、価格的に見てちょうど新型ソフテイルシリーズとガチ対決になりそうな予感だ。
このセグメントで今までハーレーの牙城を崩せたブランドは皆無である。ただし、「R18」にはかつての名車「R5」というヘリテイジがあり、空冷フラットツインも100年近い歳月の中で数々のエピソードを残してきた歴史がある。そう考えると、“ハーレーの真似”ではない独自の路線でユーザーを魅了する可能性は十分あるだろう。つまり、ハーレーではない巨大クルーザーに乗りたい人たちだ。あとはBMWというブランドやビッグ・ボクサーが好きかどうかにかかってくるだろう。