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トヨタ・スープラSZ-Rは、2.0ℓ直4ターボを積んでモデルで、3.0ℓ直6ターボ(RZ)と過給圧違いの2.0ℓ直4ターボ(SZ)の間にあたるグレードだ。トヨタとBMWの合作とも言えるFRスポーツ、スープラをモータリングライターの世良耕太が試乗した。
TEXT&PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
せ、狭い……。室内が、ではなく、フロントウインドウが
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地下駐車場の箱にバックで止まっている状態がスープラとの初対面だったので、長いノーズが真っ先に目に入り、そこそこのボリューム感を感じた。が、寸法を調べて見ると全長は4380mmで、カローラ・スポーツ(全長4375mm)と同等だ。さすがに全長は低く(カローラ・スポーツの1460mmに対してスープラは1295mm)、もぐり込むようにして車内に体を入れる。
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ドライバーズシートに腰を下ろし、前方に目をやってたまげた。せ、狭い……。室内が、ではなく、フロントウインドウが。天地が狭く、まるで覗き穴から外を見ているようだ。あんまり狭さが印象的だったので測ってみたところ、天井からステアリングのトップまでが18cm、ルームミラーの下端からセンターディスプレイの上端までは10cmだった。ちなみに、VWゴルフ7は天井からステアリングのトップまで25cmである。
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ルームミラー〜センターディスプレイ間は「隙間」と呼びたくなるような間隔だが、それで視界が不十分かというとそんなことはなく、ただ独特の視界に感動を覚えるのみだ。ダッシュボードは高く、着座位置は低くて、穴蔵にもぐり込んだようである。ステアリングはチルト&テレスコピック機構を備えており、自分がちょうどいいと感じる位置にステアリングホイールを置くことができた。試乗車は2.0ℓ直4ターボを積んだSZ-Rだったが、シートのスライドとリクライニングは電動で、前後位置、角度ともに、思うように調整ができる。
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地下駐車場から表に出、歩道を横切って公道に出るためウインカーレバーを倒した。つもりだったが動いたのはワイパーだった。「普段輸入車に乗っているもんで」と、無意識に左側のレバーを倒したわけではない。倒したのは確かに右側のレバーだ。そうか、操作系はベースとなっているBMW Z4を受け継いでいるのだろうと想像した(予習するつもりで『新型スープラのすべて』を買ったが、充分な予習せず乗り込んだ。そして、満足に復習もしていない……)。
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ATのセレクトレバーやコマンダーダイヤルの操作系を触ってみるに、これらもトヨタではなく、BMW M4のメソッドを受け継いでいるように感じる。トヨタ車であることはほとんど伝わってこない。目から入る情報や手足を含めて体で感じる情報からは、質が高く、しっかりしたクルマであることを感じるのみだ。
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「いや、待てよ。これGRじゃなかったっけ?」と思ってステアリングホイールの中央を見たら、見覚えのあるトヨタのバッジが張り付けてある。こうなったら気になって仕方がない。クルマを駐車場に止めて前に回り込み、ノーズの先端にあるバッジを確かめてみることにした。
張り付けてあったのは、トヨタのバッジだった。「AMGはどうだったっけ?」と疑問に思ってパソコンを広げて調べてみると、フロントグリルにはスリーポインテッドスターが堂々と居座っていた。ステアリングホイールの中央にもスリーポインテッドスターが鎮座していたが、スポークの下辺にはAMGのロゴがあって、「スープラに足りないのはこれ?」と一瞬思ったが、そうじゃない。
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AMGは佇まいで、「ひょっとしたらこのクルマ、AMGかも」と思わせるオーラを漂わせている。スープラには、「これGRかも」と思わせる仕掛けもムードも欠けている。GRヤリスの登場以来、GRのイメージを牽引しているのは、WRC参戦の知見を生かした小さなスーパースポーツだ。このクルマはほっぺたを鉄の爪で引っかいた痕のようなバンパーコーナー部を持っており、C-HR GR SPORTも同様の意匠を備えている。スープラは、こうしたわかりやすい特徴も備えていない。
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血まなこになって(誇張です)GRの文字を探したら、リヤのナンバープレート脇にバッジが張り付けてあるのを発見した。よかった。これで安心して運転席に戻れる。いずれにしても、スープラを眺めてGRファミリーの一員と認識するのは難しい。
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スープラは2シーターだ。二人乗りのクルマで気になるのは上着やバッグなどの置き場所である。シートの後方に上着を押し込んでおくくらいのスペースはあるだろうと振り返ってみて、ハッと息が止まった。想像だにしないシチュエーションで秘密の穴蔵を発見した気分である。シートの後方には、とてつもなく広大なスペースが広がっていた。ラゲッジスペースとキャビンスペースが一体なのだ。仕切りがあるものだと勝手に思い込んでいた。乗り込むときに脱いだ上着は手を伸ばしてラゲッジに放り込み、降りるときはつかんで出るという横着を決め込むことができる。
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「いい加減走りだせよ」とそろそろ思うだろうがもう少し車両観察にお付き合いいただきたい。ラゲッジルームが気になったのでクルマから降り、後ろに回り込んだ。ナンバープレートの上あたりをまさぐったが、トランクリッドオープナーは見あたらない。その代わり、運転席ドアにオープナーのボタンを発見。リモコンキーでも解錠できる。
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リヤゲートを開けてみたが、思いのほか間口は狭い。空になったティッシュボックスの狭いスリットから奥を覗き込むような感覚だ。「はは〜ん、間口部を狭くしたのはきっと、ボディ剛性を稼ぐために違いない」とあたりをつけ、ゲートを閉めた。すると想像どおり、というか、想像をはるかに超えて、いかにも剛性の高そうな、硬く、重い音を響かせて閉まった。大きく張り出したリヤフェンダーは、ピチピチの白いTシャツの袖から太い腕を見せびらかすようで「う〜ん……」な感じだが、リヤゲートが閉まる際に発する硬い音は、それはそれで肉体自慢な気がするけれども、悪くない。
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トヨタ・スープラSZ-R
全長×全幅×全高:4380mm×1865mm×1295mm
ホイールベース:2470mm
車重:1450kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式
エンジン形式:直列4気筒DOHC
エンジン型式:B48型
排気量:1998cc
ボア×ストローク:82.0mm×94.6mm
圧縮比:11.0
最高出力:258ps(190kW)/5000rpm
最大トルク:400Nm/1550-4400rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:無鉛プレミアム
燃料タンク容量:52ℓ
最小回転半径:5.2m
WLTCモード燃費:12.7km/ℓ
市街地モード 13.7km/ℓ
郊外モード 13.1km/ℓ
高速道路モード 14.7km/ℓ
車両価格○600万9259円