現行マツダでもっともパワフルなエンジンが、SKYACTIV-G2.5Tである。2.5ℓ直4DOHCをダイナミック・プレッシャーターボで過給したマツダ流ライトサイジング過給エンジンだ。MAZDA6、CX-5、CX-8で選ぶことのできるSKYACTIV-G2.5Tの価値とはなんだろう?
SKYACTIV-G2.5Tのポジショニング
マツダのフラッグシップたるMAZDA6のワゴンに試乗した。エンジンは、2.5ℓ直4ガソリンターボのSKYACTIV-G2.5Tである。
MAZDA6は、過去にSKYACTIV-D2.2(2.2ℓ直4ディーゼルターボ)搭載モデルを試乗した。
SKYACTIV-D2.2の出来の良さについては、充分に体感済みだ。いつ乗っても豊かなトルク、優れたNV性能、高い燃費性能で、「ああ、やっぱりディーゼルっていいな」と思わせてくれる。
一方のSKYACTIV-G2.5Tについても、CX-8で試乗済みだ。
マツダ・ガソリンエンジンでもっともパワフルなG2.5Tの印象はCX-8ではあまりポジティブなものではなかった。「これならD2.2の方がいいな」と感じたのだ。
とはいえ、車重1890kgのCX-8だったから、ということもあり、いつか車重が軽いMAZDA6(今回試乗したワゴン 25T Sパッケージは車重1590kg)でもう一度試したいと思っていた。
まだ試乗の途中なので、結論は出していないが、まずは、SKYACTIV-G2.5Tのポジションニングから考えてみたい。
言うまでもないことだが、SKYACTIV-G2.5Tが向いている先は、アメリカ市場だ。北米はいまだディーゼル不毛の地。いかにSKYACTIV-Dが優れていようとも容易に受け入れられない。アメリカは、大排気量マルチシリンダーが大好きな国なのだ。
とはいえ、アメリカにもダウンサイジングの波は押し寄せ、V8をV6ターボに、V6を直4ターボにダウンサイズ&レスシリンダーする流れとなった。
マツダでいうと、3.7ℓV6自然吸気のMZI型が今回のSKYACTIV-G2.5Tにダウンサイズされたわけだ。
3.7ℓV6 MZI:最高出力277ps(204kW) 最大トルク366Nm
2.5ℓ直4ターボ SKYACTIV-G2.5T最高出力230ps(169kW) 最大トルク420Nm
要するに、マツダにとって重要な北米市場のV6自然吸気の代替がSKYACTIV-G2.5Tといことだ。
ヨーロッパは、だいぶ比率は下がったとはいえ、ディーゼルが好まれる。CO2規制(95g/km規制)が厳しいヨーロッパにはSKYACTIV-G2.5Tではなく、SKYACTIV-XでありSKYACTIV-Dで対応する。
日本だけ(厳密には日本だけではないだろうが)が、SKYACTIV-D2.2とSKYACTIV-G2.5Tから選択ができるのだ。
これがややこしい。
北米であれば、上級グレード選べば、それはSKYACTIV-G2.5Tだし
ヨーロッパであれば、SKYACTIV-D2.2(MAZDA3とCX-30にはSKYACTIV-Xがあるが)となる。
スペックを見てみよう(ともに、MAZDA6WAGONのスペック)
SKYACTIV-G 25T
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
エンジン型式:PY-VPTS型
排気量:2488cc
ボア×ストローク:89.0mm×100.0mm
圧縮比:10.5
最高出力:230ps(169kW)/4250rpm
最大トルク:420Nm/2000rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:62ℓ
SKYACTIV-D2.2
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
エンジン型式:SH-VPTR型
排気量:2188cc
ボア×ストローク:86.0mm×94.2mm
圧縮比:14.4
最高出力:190ps(140kW)/4500rpm
最大トルク:450Nm/2000rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:コモンレール式筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:軽油
燃料タンク容量:62ℓ
最高出力はG2.5TがD2.2を40ps上回り、最大トルクはD2.2が30Nm上だ。
しかも、最高出力、最大トルク発生回転数はどちらも似通っている。
燃費性能は、
G2.5T
WLTCモード燃費:12.4km/ℓ
市街地モード 9.3km/ℓ
郊外モード 12.6km/ℓ
高速道路モード 14.3km/ℓ
D2.2
WLTCモード燃費:17.8km/ℓ
市街地モード 13.9km/ℓ
郊外モード 17.6km/ℓ
高速道路モード 20.8km/ℓ
で、D2.2の圧勝となる。
通常なら、「それでもディーゼルエンジンは価格が高いから、燃料代(レギュラーガソリンと軽油の価格差、リッターあたりの燃費の差)でその差を埋めるのは難しい」となるのだが、G2.5TとD2.2の関係はそうはいかない。
MAZDA6WAGON
2.5ℓNA (SKYACTIV-G2.5) 25S L Package:363万5500円
2.5ℓターボ(SKYACTIV-G2.5T)25T S Package:431万7500円
2.2ℓディーゼル(SKYACTIV-D2.2)XD L Packages:405万3500円
とG2.5Tがもっとも高価なのだ。つまり、最上級はG2.5Tということだ、
装備を勘案しても(OP価格とシートの差、25Tはシートがナッパレザー/スムースレザー、ほかはナッパレザー)
25S→25T 60万5000円、シートの価格差が10万円あったとしても、約50万円
XD→25T 18万7000円 シートの価格差が10万円あったしても約9万円
ということで、G2.5Tの価格設定は高めだ。
G2.5Tの設定があるCX-5、CX-8を見てみると
CX-5だと
25S L Package FF 6AT:310万7500円
25T L Package FF 6AT:342万1000円
XD L Package FF 6AT:342万6500円
CX-8だと
25S L Package FF 6AT:396万8800円
25T L Package FF 6AT:435万2700円
XD L Package FF 6AT:443万4100円
となっている。G2.5TとD2.2は「ほぼ同じ価格」という位置づけだ。
MAZDA6でD2.2よりも上級にG2.5Tを位置付けているのは、マツダのフラッグシップにふさわしい上質な走りを体現するのが、ディーゼルよりガソリンターボだから、ということなのかもしれない。
確かに、G2.5Tのフィーリングは素晴らしい。エンジンを始動したところからディーゼルとは違う、なんというか「燃焼の肌理の細かさ」とてもいおうか、精緻な感触がして、「ああ、いま、いいエンジン=いいクルマに乗ってるな」という感触がある。
また、ターボが効かないNA領域(低回転域)では2.5ℓという排気量がものをいう。小排気量のダウンサイジングエンジンでは味わえない余裕もある。
でも、ちょっと価格が高くないだろうか、G2.5T。
とはいえ、
最高出力:230ps(169kW)/4250rpm
最大トルク:420Nm/2000rpm
というのは、このサイズのスポーツワゴン(セダンも同様)にとって、非常に魅力的なスペックだ。
たとえば、BMWの3シリーズツーリングの320iだと
2.0ℓ直4DOHCターボ(B48B20A型)は184ps/300Nmに過ぎない。
SKYACTIV-G2.5T並のパワースペックがほしいとなったら、
330iMスポーツの
2.0ℓ直4DOHCターボ(B48B20B型)の258ps/400Nmを選ばなくてはならない。3シリーズツーリングの330iMスポーツだと車両価格は669万円(!)になってしまうわけだから、SKYACTIV-G2.5Tが高いと言っても、非常に出来のよい2.2ℓディーゼル(SKYACTIV-D2.2)と比べて、ということになるのだが……。
燃費も含めた試乗報告は、近日中に掲載する予定だ。
MAZDA6 WAGON 25T S Package
全長×全幅×全高:4805mm×1840mm×1480mm
ホイールベース:2750mm
車重:1590kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
エンジン型式:PY-VPTS型
排気量:2488cc
ボア×ストローク:89.0mm×100.0mm
圧縮比:10.5
最高出力:230ps(169kW)/4250rpm
最大トルク:420Nm/2000rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:62ℓ
WLTCモード燃費:12.4km/ℓ
市街地モード 9.3km/ℓ
郊外モード 12.6km/ℓ
高速道路モード 14.3km/ℓ
車両価格○431万7500円