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高耐熱リチウムイオンキャパシタの可能性:ジェイテクトが量産ラインによるサンプル供給を開始


ジェイテクトの花園工場(愛知県岡崎市)といえば、世界シェア25%を誇る同社の電動パワーステアリング(EPS)の生産拠点である。その花園工場で、ジェイテクトは2019年11月、新規事業となる高耐熱リチウムイオンキャパシタの量産を開始した。今回、その工場を見学する機会を得た。


TEXT◎野﨑博史(NOZAKI Hirofumi /MFi)

車載向けは2021年に本格量産を開始

〈水平型ラインを可能にした両面同時塗工〉集電箔の裏表にスラリーを塗布して、乾燥させる工程。一般的には片面を塗布した後、反対面を塗布するが、上下面を同時に塗布しながら電極を作り上げることができる。

 ジェイテクトの高耐熱リチウムイオンキャパシタは、材料同士をある法則に則って数値化、その相性をコントロールする開発手法の発見がブレークスルーとなり、マイナス40℃~85℃(電圧制限により105℃まで使用可)と高い耐熱性を実現させたのが特徴。従前のキャパシタをはじめとする蓄電デバイスの課題であった動作温度範囲を、高温、低温ともに車載要求に適合(車室内搭載)させたことで蓄電デバイスの選択肢として考えられるようになった。




 自動車業界だけでなく、産業機械、建機、農機といった別ジャンルからも注目が集まり、2017年の人とくるまのテクノロジー展で初披露後、約2年というスピードで量産体制に至ったのは、高耐熱リチウムイオンキャパシタの将来性に高い期待を持っている証拠だろう。




 見学会では、製造工程に沿って説明を受けたが、工作機械事業部やグループ会社の協力を得て、いかにコンパクトで効率よく生産するかを考えて作ったことが短時間のなかでも強く感じられた。現在、量産ラインによるサンプル供給を開始。すでにOEMとの量産計画もある。2021年から本格量産を開始し、2023年までには年間生産量を100万セルまで引き上げる計画だ。

コンパクトな体制で生産拡大を狙う

生産工程はラミネート型リチウムイオン電池の製造工程とほぼ同じ。大まかに混錬、塗工、積層、活性化の工程からなり、品質や性能の決め手となるこれらの設備は内製化している。

連続混錬方式の採用

材料粉を水に混ぜて、電極板に塗工するスラリーを作成する混錬の工程。ジェイテクトは、必要な時に必要なぶんだけ生産する、連続混錬方式を採用する。

負極に吸蔵、吸蔵状態の均一化

リチウムイオンを負極に吸蔵させるリチウムドープ工程、吸蔵状態を均一化させるエージング工程。連続炉ではなく、インデックス方式を採用し、省人化、自動化に対応する。

電動化によって冗長性が求められるこれからの時代にマッチ

高耐熱化によって従来のキャパシタと比べて、約3倍の電流を流しても劣化が進まないことが判明。冷却装置フリーで連続使用できるのはほかの蓄電デバイスにはない強み。今後の研究で、容量を電池に近づけて、高出力化を実現できれば、さらに可能性は広がる。

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