フォルクスワーゲン最小SUVとなるTクロスが日本に上陸した。MQBをベースとするBセグコンパクトSUVながらその中身はしっかりと練られているようだ。
REPORT◉吉岡 卓朗(YOSHIOKA Takuro)
PHOTO◉折原 弘之(ORIHARA Hiroyuki)
※本記事は『GENROQ』2020年2月号の記事を再編集・再構成したものです。
もはやクルマのスタンダードと認識されるに至ったSUVだが、その小型化はますます進んで、今やBセグベースのコンパクトSUVが人気であるという。そして徐々にSUVラインナップを拡充しているフォルクスワーゲンが、その激戦区に投入したのがTクロスだ。
フォルクスワーゲンはここのところ、横置きプラットフォームMQBを有効活用して様々なセグメントのモデルを開発しているが、このTクロスもその流れに沿っている。VWファミリーのSUV序列は新型こそは日本未導入だが長男のトゥアレグを筆頭に次男ティグアン、三男Tロックそして末っ子のTクロスとなる。ちなみにTロックは20年発売予定だ。
ホイールベースは先日発売された新型ポロと同じ2550㎜とコンパクトながら、最近のフォルクスワーゲンのデザイン言語である水平基調のフロントグリル、あるいは左右テールランプを横断するリフレクターパネルを内蔵したガーニッシュが一格上の雰囲気を醸している。
搭載されるエンジンはこれまたポロと同じ1.0ℓ直3DOHCターボとなるが、最高出力で21㎰増、最大トルクで25Nm増となる高出力版で116㎰と200Nmを発揮する。組み合わされるトランスミッションはフォルクスワーゲン自慢の7速DSGだ。
試乗は湖の周辺の山道を中心に行ったが、1.0ℓターボとは思えないほどトルクを感じ、ポロと比較して100㎏ほど重くなっていることを差し引いても太くなったトルクが有効であると感じた。ただし踏めばノイズはそれなりにあるが。乗り心地は総走行距離1400㎞とおろしたてだったこともあるかと思うが、荒れた路面での硬さが気にはなった。
だがTクロスの注目すべき点は、その使い勝手にある。Bセグ級のホイールベース2550㎜では後席乗員の居住スペースもラゲッジに詰める荷物の搭載量も期待できないが、あにはからんや、前後に140㎜スライドできる後席のおかげで荷物が少なければ後席は広々としており、2名乗車で荷物が多いときには後席をスライドして通常385ℓの荷室容量を455ℓにまで拡大できる。もちろん後席をたためば1281ℓもの莫大な荷室容量となるが、居住空間と荷室空間をセパレートしたまま拡大できるこの後席スライド機能はかなり便利だ。利便性で言えば最小回転半径もポロと同一の5.1mで、ステアリングのロック・トゥ・ロックは2.6回転ながらなかなかの小回り性能を持っている。
今回試乗した導入記念車には今や必需品とも言える追従クルーズコントロール(ACC)や緊急ブレーキが備わり、上位グレードのファーストプラスならレーンキープアシストも付いてくる。小さな高級車といった趣のTクロスであった。
〈SPECIFICATIONS〉フォルクスワーゲン TクロスTSIファーストプラス
■ボディサイズ:全長4115×全幅1760×全高1580㎜
ホイールベース:2550㎜
■車両重量:1270㎏
■エンジン:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:999㏄
最高出力:85kW(116㎰)/5000~5500rpm
最大トルク:200Nm(20.4㎏m)/2000~3500rpm
■トランスミッション:7速DCT
■タイヤサイズ:215/45R18
■車両本体価格:335万9000円