2019年10月・東京モーターショーでのワルドプレミアを経て、2020年2月14日よりようやく販売が開始された、新型四代目ホンダ・フィット。新たに「ベーシック」「ホーム」「ネス」「クロスター」「リュクス」の5タイプが設定される一方、パワートレインは1.3Lガソリンエンジン+CVTと、1.5Lガソリンエンジン+新たに「e:HEV」を名乗る2モーターハイブリッドの2種類に絞られた新型の、人気のモデルは一体どれだ?
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO●遠藤正賢、本田技研工業
まず5タイプの違いを簡単に説明すると、「ベーシック」はその名の通り最もベーシックな仕様で、通常のファブリックシートを採用。インパネの助手席側やコンソールニーパッドにソフトパッドは装着されないものの、サイド&カーテンエアバッグやADAS(先進運転支援システム)の「ホンダセンシング」、スマートキー、そして歴代フィットの特徴でもあるチップアップ&ダイブダウン機構付6:4分割可倒式リヤシートは標準装備される。また内装色はブラックだけではなくソフトグレーも選択可能だ。
消費税10%込みの価格は1.3Lガソリンが155万7600円/175万5600円(FF車/4WD車)、1.5L e:HEVが199万7600円/219万5600円(同)。
「ホーム」はいわゆる中間グレードで、「ベーシック」に対しシート生地がプライムスムース×ナチュラルテキスタイルとなり、インパネの助手席側やコンソールニーパッドにソフトパッドが装着されるようになる。そのほかフルLEDヘッドライトとフルオートエアコン、助手席シートバックポケット、運転席/助手席照明・バニティミラー付きサンバイザーなどが全車標準装備される。
価格は1.3Lガソリンが171万8200円/191万6200円(FF車/4WD車)、1.5L e:HEVが206万8000円/226万6000円(同)。
「ネス」は車名の「フィット」と合わせて「フィットネス」(FITNESS)をもじった、モータースポーツではなく身体を動かす方のスポーツテイストを表現した仕様。ライムグリーンまたはグレーをアクセント色とした撥水ファブリックシート&ソフトパッドが装着され、エクステリアもライムグリーンをアクセントとした2トーンボディカラーが唯一選択可能となる。そのほか、LEDフォグライトやプラズマクラスター、16インチタイヤ&アルミホイール、ホンダコネクトforギャザズ+ナビ装着用スペシャルパッケージが全車標準装備される。
価格は1.3Lガソリンが187万7700円/207万5700円(FF車/4WD車)、1.5L e:HEVが222万7500円/242万5500円(同)。
「クロスター」はクロスオーバーモデルで、専用の前後バンパーやグリル、クラッディングを装着して全長を95mm、全幅を30mm拡大したほか、他のモデルより一回り外径が大きい185/60R16 86Hタイヤと専用デザインのアルミホイールを装着。最低地上高はFF車で25mm、4WD車で5mm高く、全高もFF車で30mm、4WD車で5mm高くするなど、大きな凹凸の多いラフロードでの使い勝手にも配慮している。インテリアは「ネス」に設定されているものと同じ、グレーをアクセント色とした撥水ファブリックシート&ソフトパッドだ。
価格は1.3Lガソリンが193万8200円/213万6200円(FF車/4WD車)、1.5L e:HEVが228万8000円/248万6000円(同)。
「リュクス」は高級感を強く打ち出した仕様。ブラウンまたはブラックの本革シート、運転席&助手席シートヒーター、本革巻きステアリングホイール&セレクトレバー、専用デザインの16インチアルミホイール、プラチナ調クロームメッキドアミラー&フロントグリルモールディング、ドアロアーガーニッシュを全車に標準装備する。
価格は1.3Lガソリンが197万7800円/218万6800円(FF車/4WD車)、1.5L e:HEVが232万7600円/253万6600円(同)。
2月末にホンダ広報が試乗会の席で明らかにしたデータによれば、以上5タイプの販売比率は下記の通り。
ベーシック…20%
ホーム …46%
ネス … 6%
クロスター…14%
リュクス …14%
なお、2019年12月19日より開始した先行受注の台数は約2万3000台ということなので、「ホーム」が1万台超を占めていることになる。筆者も試乗する前の段階では「ホーム」が最もコストパフォーマンスに優れており、上質感も充分以上と感じていたため、この結果には大いに納得だ。
では、1.3Lガソリン車と1.5L e:HEVの販売比率は? これは意外なことに、1.5Lハイブリッドの圧勝。72%もの販売比率を占めているのだという。
両パワートレインの価格差は「ベーシック」で税込44万円、その他の各タイプで34万8000円と、内容を考えれば極めて戦略的な設定ではあるが、それでも絶対的には高価である。しかも、発売=ナンバーが取得可能になる前にディーラーで試乗することは、当然ながらできないため、両者の走りに決定的な差があるのを誰もが体感できたから選ばれている、というわけでもなさそうだ。
しかし、装備表をよく見てみると、同じタイプ同士で両パワートレインの間に、少なくない装備差があることに気が付く。
一例として「ホーム」同士で比較すると、1.3Lガソリン車ではセキュリティアラームがメーカーオプション、本革巻きセレクトレバーがディーラーオプション扱い。さらに充電用USBジャック(急速充電対応タイプ2個付)、本革巻きステアリングホイール、リヤセンターアームレスト、シートバックスマートフォンポケット、ラゲッジルームランプ、フロントグリルクロームメッキモールディング、車速連動間欠/バリアブル間欠フロントワイパーがオプション設定もされていない。
これら装備の大半は、実用性と快適性を大きく左右するものばかり。こうした底意地の悪い設定に、できるだけ1.5L e:HEVを多く売りたいホンダの魂胆が透けて見えるが、これなら1.5L e:HEVが7割超を占めるのも納得だ。
一方でこうした装備は、今後の一部改良や特別仕様車で1.3Lガソリン車にも設定される可能性が高い。1.5L e:HEVが予算的に厳しく、かつ急いで購入する必要に迫られていないならば、その時を待つのが賢明だろう。