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排気ガス規制により、1999年モデルをもって、ストリートはもちろん、ミニバイクレース『SP12クラス』の人気モデル「ホンダ NSR50」が生産終了。その代替モデルとして登場したのが、レース専用の「ホンダ NSR Mini」。大型ラジエターやリザーブタンク付きリアショックなど、レーサーならではの機構が導入されている。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
1999年(平成11年)、ホンダのレース部門『HRC』から登場した「NSR Mini」
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1999年(平成11年)、厳しい排ガス規制とバイクの4ストローク化推進により、“Nチビ”の愛称で人気の「NSR50」が生産終了。とはいえ、ミニバイクレースの12インチクラス『SP12』では、NSR50の人気が衰えることはなく、Nチビがなければ、SP12クラスの存続が危ぶまれる。これまで数々の日本人GPライダーを生み出してきたSP12クラスなのに……。
「NSR50は1999年モデルをもって生産終了」のアナウンスに続いて登場したのが、NSR50をベースにしたレース専用モデル「NSR Mini」。当初は「NSR50R」の名称で発売される予定だったが、最終的には「NSR Mini」となった。
発売元はホンダのレース部門『HRC』で、車体はすべて受注生産。オーダーはホンダ車両取り扱い店で受け付けていた。
初期型の1999年モデルの価格は、26万5000円。なお、NSR50の最終モデル(レプソルカラーの1999年モデル)は、2万円高の28万5000円に設定。レースを目的にNチビを購入するレーサーたちには、NSR50よりも2万円安く入手できたNSR Miniは大好評だった。
HRCからは、17インチクラスで人気だった「NS50F」の代替モデルである「NS50R」が1996年(平成8年)に。空冷4ストDOHC 4バルブ50ccエンジンを搭載した「ドリーム50」のレース専用モデルである「ドリーム50」が1997年(平成9年)に発売されている。詳しくは下記参照。
1999年(平成11年)に登場したNSR Miniは、2009年(平成21)に販売終了となった。
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●NSR Miniの主要スペック
型式:RS50 全長:1580mm/全幅:590mm/全高:935mm/乾燥重量:73kg/燃料タンク容量:7.5L/エンジン形式:水冷2サイクル単気筒49cc/ボア×ストローク:39.0mm×41.4mm/圧縮比:7.2/最大出力:7.2ps/10,000rpm/最大トルク:0.65kgm/7,500rpm/変速機:6速リターン/点火方式:CDI/タイヤサイズ:前100/90-12 後120/80-12
「NSR Mini」と「NSR50」の違いをチェック!
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NSR50は時代の流れとともに進化を繰り返し、10年以上に及ぶ熟成期間を経て、究極とも言えるモデルに成長。その代替モデルが、このNSR Miniだ。
NSR Miniは、NSR50とエンジンやフレームは同一ながら、保安部品等が一切省かれた、生粋のレース仕様。レースに不必要なキックスターターペダル、分離給油ポンプが廃止され、ゼッケンプレートやキャッチタンクが標準装備済み。
CDIは従来の3倍という大容量サイズのデジタル式。8つのモードのスイッチを備え、進角タイミングをスイッチひとつで切り替え可能。これにより、様々な社外チャンバーに対応。夏と冬でセッティングを変えることも容易なしくみとなっている。
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フロントフォークはプリロード調整に加え、減衰特性も変更可能。その効果は絶大で、コースレイアウトに応じて幅広くセッティングOKとなった。HRCからは、バネレートの異なる数種類のスプリングもオプション発売された。
ラジエターはNSR50よりも大型化(NS50R用と同じ)され、放熱量が約2倍に向上。エンジンの負担軽減により、耐久レースなどでの熱ダレ等のトラブルも減少した。
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モノショック型のリアショックは、フロントと同様、減衰圧とイニシャルの変更が可能な高機能タイプ。前後ともに調整機能が備わることで、セッティングの出しやすさを大幅に向上させた。HRCからは、バネレートの異なる数種類のスプリングもオプション発売。
ノーマルの状態で、改造されたSP12クラス並みのポテンシャルを備えたNSR Mini。上記のパーツは、“キットパーツ”としてもリリース。すでにNSR50を持っているユーザーでも、キットパーツを組み込めば、NSR Miniと同等のポテンシャルを獲得できるのが特徴だ。
【キット内容】
・ラジエターキット:2万2300円
・CDIキット:1万8800円
・Fフォークセット:3万円
・Rサスペンション:3万8000円
※すべて発売当時の価格(すべて廃版)
ミニバイクライダーたちも絶賛!? NSR Miniの“実力”を徹底チェック
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HRCのオリジナルパーツが投入されたNSR Miniは、フルノーマルの段階で、すでに高いポテンシャルを備えている。
特に足周りのセッティング能力の高さは、想像以上のもの。ビギナーの場合、NSR50でNSR Mini並みに仕上げるには、早いライダーでも1年や2年はかかってしまうと予測。つまりNSR Miniは、購入時の段階で、レース仕様級に仕上げられているというわけだ。
最初に乗った時、フロントが柔らかすぎたのでイニシャルを少し絞め込んだら、スパっと切れるフィーリングを即座に得ることができた。
NSR50の場合、フロントフォーク内に10円玉を入れたりしてイニシャル調整してたのに、これほど簡単に作業できるとは……。また、今まで理想的なスプリングがなくて苦労していたが、レースでの使用を前提に作られたNSR Miniの足周りは、非常にいい動き。
NSRの腰高な独特のフィーリングも、リア部分をアジャストすれば、グッと踏ん張ってくれるので、安心してスロットルを開けることができる。ノーマルのままで、SP12仕様のNSR50改と同等のレベルに仕上がっているというイメージだ。
スロットルに対するツキが、極めて良いのにも驚き。ノーマルのNSR50は、モワーっとした感じなので、コーナーの立ち上がりでは、ワンテンポ早くスロットルを開けないといけない。一方、NSR Miniは、クリッピングポイントで開ければ、イメージ通りにキチンとついてくる。
これはエアクリーナーを省いているからだろうが、それ以上にキャブレターのセッティングの変更や、新開発の8チャンネル式デジタルCDIの効果が大きいと思われる。
NSR50の場合、CDIに合わせてチャンバーの特性を合わせていたが、多くの点火タイミングが選べるデジタルCDIの採用により、低中速重視や高速重視など、セッティングの幅が大きく広がっていくことが予想される。
NSR Miniは、ライダーのセッティング労力を大幅に低減した画期的なモデル。マシンのセッティング方法が分からなくても、使いやすいアジャスター機能で勉強しながら覚えられるのがポイントだ。
※月刊モト・チャンプより(NSR Mini発売時の記事を編集・加筆)
HRCが手掛けたミニバイクのレーサーモデルたち
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ミニバイクレースの17インチクラス「SP50」で人気だった「NS50F」をベースにしたレース専用モデル。1996年(平成8年)から2008年(平成20年)まで発売された。NS50Fとの主な違いは下記の通り。
・フロントカウルや保安部品をレス化してゼッケンプレートを装着
・NSR Miniと同じ大型ラジエターを採用
・潤滑方式から混合給油に変更
・タイヤサイズを前後とも90/80-17に変更
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空冷4ストDOHC 4バルブ50ccエンジンを搭載した“CR110カブレーシング”の復刻版「ドリーム50」のレース専用モデル。HRCからは下記のキットパーツ及び、キットパーツを組み込んだコンプリートマシンをリリース。全国のサーキットでワンメイクレースも積極的に開催された。1997年(平成9年)から2009年(平成21年)まで発売。
・保安部品をレス化し、前後アルミフェンダー装着
・エンジンはHRC製「Dream50用レース専用キット(※)」に変更して、最高出力を7.0PS/13,500rpmにアップ
・ミッションを5速から6速クロスに変更
・エキゾーストパイプを構造二重管から単管に変更して排気効率を向上
※専用のシリンダーヘッド・カムシャフト・バルブスプリング・ピストン・低フリクションカムチェーン・クランクシャフト・軽量ACジェネレーター・ケーヒンCRキャブレター・エアファンネルを組み込み。