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ここまでわかったトヨタGRヤリス、新開発の直3DOHCターボG16E-GTS型はなぜ空冷インタークーラーなのか?


東京オートサロンでワールドプレミアされたトヨタの新4WDスポーツ、GRヤリス。新しい4WDシステムや新開発プラットフォーム&エンジンなど見どころの多いニューモデルだが、現時点では詳細が不明なところが多い。取材を通じてわかったことをまとめてみた。まずはエンジン編だ。

BMEP28.7barの国産最強エンジンの誕生

1.6ℓ直列3気筒DOHCターボ G16E-GTS

 GRヤリスについては、MotorFan.jpでもレポートしてきた。


 発売は2020年夏頃。6月30日までの約6ヵ月間、web限定で先行予約が行なわれている。


 まず発売されるのは、


特別仕様車 RZ“First Edition” 396万円


特別仕様車 RZ“High-performance・First Edition”456万円


 の2グレードだ。

 エンジンは、まったくの新開発1.6ℓ直列3気筒ターボG16E-GTS型を搭載する。

エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ


エンジン型式:G16E-GTS


排気量:1618cc


ボア×ストローク:87.5mm×89.7mm


圧縮比:10.5


最高出力:272ps(欧州仕様DIN表示で261hp)


最大トルク:370Nm(欧州仕様DIN表示では360Nm)


燃料噴射:D4S(直噴+ポート噴射)

 BMEPが28.7barという驚愕の出力性能を誇るG16E-GTS。BMEPとは、正味平均有効圧力(=Brake Mean Effective Pressure)のことで、どれだけ大きな圧力で平均的にピストンと上死点から下死点まで押したことになるかを示す数字だ。排気量に関係なくシリンダーの圧力の経過を平均化したもので、エンジン状態を代表する数値になる。


 ガソリンNAで10〜13bar、ガソリンターボで18~24barあたりがトレンドのBMEPでGRヤリスのG16E-GTSの「28.7」は驚愕の数字である。




 ちなみに30年前のトヨタGT-FOURの2.0ℓ直4ターボの3S-GTEのBMEPは19.1だった。現在国産エンジンでもっとも高いBMEPはスバルEJ20エンジンの26.6だから、これからはGRヤリスが国産最強エンジンと言っていい。




主な国産エンジンのBMEPは次の通りだ。




トヨタV35A-FTS(レクサスLS500に搭載):21.9bar


スバルEJ20(WRX STIに搭載):26.6bar


日産VR38DETT(GT-Rに搭載):21.6bar


ホンダK20C(シビックタイプRに搭載)25.2bar


マツダSKYACTIV-G2.5T(CX5などに搭載):21.2bar


と書けばG16E-GTSの28.7がいかにすごいかわかるだろう。




最高出力発生回転数は


V35A-FTS(3.5ℓV6ターボ):422ps/6000rpm


EJ20(2.0ℓ水平対向4気筒ターボ):308ps/6400rpm


VR38DETT(3.8ℓV6ターボ):570ps/6800rpm


K20C(2.0ℓ直4ターボ):320ps/6500rpm


SKYACTIV-G2.5T(2.5ℓ直4ターボ):230ps/4250rpm




 マツダSKYACTIV-G2.5T以外は6000rpm以上で最高出力を発揮する。では、G16E-GTSはどうか? 最高出力は272psと発表されているが、その回転数は未発表だ。サイトに載っているグラフから読み取ると

G16E-GTS(1.6ℓ直3ターボ):272ps/6500-6600rpmあたりだろうか。




 トルク特性はどうだろうか?


V35A-FTS(3.5ℓV6ターボ):600Nm/1600-4800rpm


EJ20(2.0ℓ水平対向4気筒ターボ):422Nm/4400rpm


VR38DETT(3.8ℓV6ターボ):652Nm/3600-5600rpm


K20C(2.0ℓ直4ターボ):400Nm/2500-4500rpm


SKYACTIV-G2.5T(2.5ℓ直4ターボ):420Nm/2000rpm




 同じくグラフから読み取ると


G16E-GTS(1.6ℓ直3ターボ):370Nm/3000-4500rpmあたりだろうか。




 使用燃料については未発表だが、これだけのハイチューンのエンジンだから、当然「ハイオク推奨」ではなく「ハイオク指定」だろう。

 GRヤリスのRZ“High-performance・First Edition”には、冷却スプレー機能付き大容量空冷インタークーラーが装備される。RZ“First Edition”は、冷却スプレー機能なしの大容量空冷インタークーラーがつく。ターボエンジンに不可欠なインタークーラー(Charge Air Cooler)には、水冷式と空冷式があるが、水冷式を採用することが多いトヨタがGRヤリスでは「空冷式」をあえて採用するのには理由がある。




 エンジニアに、なぜ空冷式にしたのか?と問うと


「GRヤリスが水冷インタークーラーにしなかったのはラリー競技中のクラッシュ時の作業性を優先したからです。


水冷式インタークーラーだとクラッシュ時の配管修復などに手間が掛かるから」


 という返事があった。GRヤリスを購入したユーザーがたとえ競技に出なくても、こういったプロフェッショナル仕様は、オーナー心をくすぐる。




 ラリーやサーキット走行など過酷な走行時の熱対策には、ウォータースプレイによる水冷式インタークーラー自体の冷却による効果はもちろんあるのだろうが、通常の走行ではあまり意味はないかもしれない。しかし、購入後に冷却スプレー機能を付加しようと考えたら配管等の取り回しで手間がかかる。とはいえ、「Born From WRC」を感じさせるこの特別感は魅力である。




 ちなみにオイルクーラーは水冷式だ。

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