ライドシェアや運転支援機能、位置情報ゲーム、企業向けアプリ開発など、業界を問わず高精度の測位技術を利用する企業やサービスが増えている。位置情報データおよび位置情報技術のプラットフォームを提供するHERE Technologiesは9日、量産デバイスにおいて1m未満のグローバルでの測位精度を可能にする、クラウドベースのソリューション「HD GNSS」(高精度全球測位衛星システム)を発表した。
近年の量産デバイスや量産車では二周波のGNSS受信装置の搭載が進んでおり、HD GNSSサービスと組み合わせることにより高精度の測位が可能になる。これは、約2年前までは高いコストと地理的制約によって実現が難しい機能だった。しかしHERE HD GNSSにより、チップセット、ハードウェア、ソフトウェアのメーカーは格段に優れた新製品、機能、ユーザー体験をエンドユーザーに提供することが可能になる。
HEREのTech, Media, Telco and Retail Applications担当副社長であるJussi Koski氏は、次のように述べている。「HEREは現在、世界で何億台ものデバイスに搭載されたA-GNSS(Assisted GNSS)、ネットワーク、HD Wi-Fi測位技術によって、屋外、都市部、屋内で優れた測位精度とユーザー体験を提供しています。HD GNSSが製品群へ追加されたことより、お客様やパートナーの皆様に優れた測位精度を生かして当社プラットフォームを基盤とした革新的なソリューションを構築していただけることをうれしく思います」
HERE HD GNSSのデータ配信は、モバイルデバイスに最適化されているため、追加のハードウェアは不要で、なりすましによる不正アクセスの検出機能と移動型センサーを内蔵している。HERE HD GNSSの通信範囲は、中国と日本を含む世界中を網羅しており、単一周波のモバイルデバイスも将来的にサポートする予定。
BroadcomのMarketing for the Wireless Communications and Connectivity Division副社長であるVijay Nagarajan氏は、次のように述べている。「HEREのようなグローバル企業が、革新的なソリューションを市場にもたらしてくれたことを大いに歓迎します。当社はHEREと協力し、この新機能を量産デバイスに搭載することで、過去にない新しい用途を数多く実現したいと考えています」
HEREは、基準局事業者、チップセットメーカー、モジュールメーカー、ハードウェアベンダー、モバイル通信事業者、システムインテグレータなど、パートナーのエコシステムとも協力することで、測位精度をセンチメートル単位へと高め、ビルの谷間などのより難しい環境にも対応できるよう、共同で取り組んでいる。
●自動車における使用事例
・自動運転:自動運転車の安全を確保するためには測位システムに高水準の冗長性が組み込まれる必要がある。自動運転車が光学系センサーの機能を妨げる悪天候に見舞われた場合でも、HD GNSSによる0.2m未満の測位精度が自動モードでの安全性や稼働時間を向上する。
・運転支援:路上に障害物がある場合でも、HD GNSSとHERE HDマップにより障害物を表示し、回避する。
●モバイルデバイスにおける使用事例
・モバイルデバイス上での車線案内および到着予想時刻の精度向上:知らない道を走る際でも目的地に早く安全に到着できるよう、HERE HD GNSSとHEREの地図データにより適切な車線と経路をドライバーに提示する。
・ゲームおよびAR(拡張現実)の体験向上:位置情報を利用したゲームの普及が広く進んでいるものの現状では精度の低い測位技術に頼っており、そのことが次世代のユースケースの妨げとなっている。HERE HD GNSSは、1m未満の位置精度によって新しいゲームデザインの可能性をもたらす。